シムシティー

MAXIS SLG PC-98/FM-Towns他


CimCity

☆市長の1日

 長かった・・・。
 最初は広大な荒野だった「ここ」も、今では総人口50万人を超すちょっとした都市だ。
 貿易の面でも、決して他の都市に劣らないほどのレベルになったし、防犯の面でも評判が高い。観光での目玉である遊戯施設群も、毎日かなりの売り上げを見せるほどになった。
 荒野だった「ここ」を、ここまでに成長させたのは−この私なのだ。
 そしてこの街こそが私の誇りであり、生き甲斐でもあるのだ。
 ただ一つの悩みは、どんなに良い市政を行おうとも必ず届く苦情−

 「税率が高い」

 が頭痛の種だ。何しろ「1%」という超低税率でさえ「高い」と言われるのだ!
 ・・・さて、今日も「税率が高い」と言われるのだろうか?それを考えると、朝から気が重くなる。
 まぁ、いい。とにかくこの街がもっともっと成長するのなら、やる気も出てくるというものだ。
 とりあえずは提出された資料に目を通してみるとしよう・・・

☆「見て楽しい」SLGの傑作

 「シムシティー」は、出た当時本当に見た目からして画期的なゲームでした。
 それまでのSLGといえば、国内なら「信長の野望」「大戦略」、海外でも「バランス・オブ・パワー」などほとんどが数値で物事を表現する、いわば「静的」な物がほとんどでした。
 もちろんリアルタイムで動いているSLGもなくはなかったのだけれど、それでもまだまだゲームのジャンルとしては既成の物に少々変更を加えた程度の物だったのです。その例が「大戦略III」でしょう(これは「大戦略」シリーズ初のリアルタイムな展開を目指した物)。
 では、何故リアルタイムSLGが当時はあまりなかったか。答えは明白で、当時はまだ8ビットマシンの勢力(appleなど)も大きく、それ故にマシンパワーを使うゲームの開発が難しかったのです。

 ところが、海外でPC/AT(いわゆるDOS/Vマシン)などCPUが286、386のマシンが主流になってくると、リアルタイムSLGも決して不可能ではなくなりました。
 そのマシンパワーによって動かせるようになったSLG−それが「ポピュラス」であり「シムシティー」です。

 「シムシティー」「ポピュラス」は、それまでのSLGの概念を一気に吹き飛ばすほどの「新しさ」を持っていました。それは「画面のほとんどの部分がアニメしている事」。
 これによって「見ただけでもある程度わかる」という特徴を持ち、なお想像力を膨らます手助けにもなりました。
 こう書いてもわかりにくいでしょうが、例えば・・・

 「この建物の中には約100人の人が住んでいる。こっちは約500人の人が住んでいる。」

 これを表現する為に、「シムシティー」では「数値」を隠すかわりに「建物の大きさ、美しさ」で一目でわかるようにしています。もちろん正確な数値を知る事も出来ますが、基本的には見た目での判断でも充分。そのぐらい結構細かい変化が多いのです。
 その他のパラメータも、一部を除いては多くが常にアニメーションで表現されていて、一目でわかるようになっています。
 例えば、道路の引き方が悪ければ渋滞がずーっと起こっているし、消防署の数が少なすぎると火事の被害が広くなるだけでなく火事そのものが起こりやすい、といったように。
 それ故に、対処の方法も見ただけで大抵わかるようになっているので、リアルタイムでも遊びやすくなっています。もちろん見た目ではわからない障害、例えば「犯罪」などもありますが、これらは主に「市民の苦情」を見ればすぐにわかるようになっています。
 ただし、対処をしたからすぐに効果が出る訳ではありません。これは当然なんですけどね。基本的に「じわじわ」と効果が広がるようになっている為です。ですからある程度計画的に町作りをしないといけません。でも結構行き当たりばったりでやってもそれなりに町が成長するのが楽しいですね。

☆まさに「箱庭」

 「シムシティー」をプレイする感覚は、まさに「箱庭」そのものです。
 最初は1つや2つの建物、発電所、道路、電線を引いて、小さな「村」を作りますね。
 そして少しずつ建物を増やして行って・・・と。その過程で感じる、自分の作っている「場所」が「成長する」感覚。それは確かに子供の時に誰もが想像する「自分だけの町」が出来ていく感覚と同じ物です。
 しかも画面は常に必ず変化を起こしているので、より「成長」している実感を味わえます。

 しかも、操作のほとんどがマウス1本で操作出来るのですが、これが実に「町作り」の実感を深めるのに一役買っています。
 このように、「シムシティー」は当時かなり革新的な物でした。
 しかも「村」「町」「都市」という、普通に考えて作ったら膨大になってしまうデータ量を、見事に「大ざっぱに」扱ってしまった点でも見事と言えるでしょう。これは1個1個の建物を完全にユニット化したから出来る事ですが、当時は「こういうやり方もアリなんだな」と感心したものです。

 今では「シムシティー」も「シムシティー2000」からクォータービューになってより立体感を持ったゲームになり、それだけにかなり凄い内容なのですが、私は想像力を最も膨らませてくれた初代の「シムシティー」が好きなんです。
 他にも「シムシリーズ」として、地球をテーマにした「シムアーズ」(あまりおもしろくない)、生物をテーマにした「シムライフ」、アリの生態(笑!)をテーマにした「シムアント」など、「シムシティー」で生まれたリアルタイム性とデータのビジュアル化を基本に、それぞれのテーマで作ったソフト(こちらは「ゲーム」というより「ソフト」に近い構成なのです。特に「シムアーズ」)をどんどん生み出しています。

 ちなみに作者はウィル・ライト氏。かの「バンゲリングベイ」の生みの親でもあります。実は「シムシティー」のアイデアは「バンゲリングベイ」作成中に思いついたそうです(「マイコンBASICマガジン」誌上での山下 章のインタビューで書かれていました)。
 それから今では入手は難しいですが、「シムシティー」を内部的にかなり深く知る事の出来る資料として、「ウィル・ライトの明かすシムシティーのすべて」(角川書店)があります。

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 本当、時間が経つのも忘れるほど楽しかったです。