朝の来ない夜に抱かれて

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ETERNAL NIGHT

☆和風伝奇+クトゥルー

 このゲームに関心を持ったのは、「和風伝奇+クトゥルー」がベース、と聞いたときでした。
 元々日本製のクトゥルーものは小説やゲームなどいくつかありますが、ゲームの場合どっちかというと海外を舞台にした物が多く、例えば「黒の断章」にしても前半は確かに国内が舞台ですが、盛り上がるのは海外に移動してからだったりします。つまり、最初から最後まで国内を舞台にした、クトゥルーのティストを持ったゲームは「Esの方程式」ぐらい(もっとも、「Es〜」の場合、クトゥルーメインではないのだが)。
 そういう訳で、最初から最後まできっちり国内を舞台にした内容になりそう、という事で期待していたのです。
 その期待はいろいろといい意味で裏切られましたが。

☆妙に濃い和風伝奇

 さて「朝の来ない夜に抱かれて」(以下、「朝〜」と記す)ですが、本当に和風伝奇中心となっています。しかも有名どころの話をベース・・・と思いきや、実は「同類の話」だけどマイナーな方をベースにした話あり、というように妙に濃い内容になっていて、本当によく勉強してシナリオを書いてる事がわかります。
 この「マイナーな方」というのがミソで、ゲームの中でウンチクが出てくる・・・あ、京極堂みたいにやたら長くはないですので安心してください(笑)まあ、ウンチクで「ああ、あの話にはこういうパターンもあったのか」などとおもしろい味付けになっています。当然ながら、これも伏線になっていますのであまり詳しくは書きませんが。
 また、題材にされている物も、結構馴染みのある話からマイナーな物までそれなりに揃っていますね。

 こう書くと、「クトゥルーは?」と言われそうですが・・・
 実はこのシナリオ、クトゥルー系がメインではありません。かといって全然話に関わらないのかというと、そうではないのです。
 少しだけ書くと、いわゆるクトゥルー神話における神々は「この世の理に縛られないもの」として扱われています。それに対して、他の「モノ」はいずれも何らかの理に縛られます。とは言っても、基本的に「この世」のモノではないので、「この世」に出てくる為にはこの世に合わせた理に沿わなければならない・・・という感じ(わかりにくいけど、実際に見れば一発でわかります)。
 だからどっちかと言えばジョーカー的なものなのですね、「クトゥルー」のネタは。しかも、主人公に「憑いて」いるのは「無貌の神」−−−と言えばもちろんクトゥルー神話におけるナイアルラトホテップに他ならない訳ですが、このゲームでは「無貌の神」の名のみが出てきます。
 何故「無貌の神」とだけしか出さないのか、については、これは推測なのですが・・・多分、変にクトゥルーのティストを主張して、和風伝奇の「味」を壊してしまうのを避けたかったのかもしれません。私もこれについては正解だと思います。
 しかもこの「無貌の神」の扱い方がうまくて、結構ニヤリとしてしまったり・・・こういう扱い方もあったのだなぁ、と思ってしまいましたし。
 余談ですが、ここで書いてる「クトゥルー」は、ラヴクラフトのそれではなくダーレスのそれが近いです。

☆全員クセ者です(笑)

 さて、主人公たちはというと・・・これがまぁ、本当に全員何らかの「一癖」を持っている奴らです。
 主人公の辰人は(幼馴染みの美空には)妙に口と態度悪いし、でも料理はするし(笑)パトリシア先生は海外の人なのに和風伝奇などにやたら詳しいし(笑)都子はやたら毒舌だし(笑)
 ・・・ま、パトリシア先生の場合は「父親が完全に帰化している」為外見は外国人でも中身は歴とした日本人、なんですが。
 その他にも何人かいるけど割愛して、と。

 これに加えて、辰人には「無貌の神」が憑いているのですが、その秘密を知っているのは都子だけです(後で変化するけど)。その都子も秘密があったり・・・と、この辺は実際に遊んでのお楽しみ。
 こういうメンツが事件に巻き込まれたり引き起こしたり・・・。

 その騒動をおもしろくしているのが「演出」。
 そう、久しぶりに演出をうまく使ってるゲームなんです。
 あ、ここで言う「演出」は、シナリオに対するそれ(例:「廊下ダッシュで女の子と衝突」)ではなく、映像や音に対するそれです。そう、ムービーや画面での特殊効果がいろいろ使われているんですね。
 実のところ、最近のゲーム、特に18禁ゲームでは純愛系や感動系(泣きゲー)が多いのはいいけど、反面、演出(特殊効果など)などが多くて、しかも使い方に感心するものと言ったら、「君が望む永遠」ぐらいでした。まぁ、純愛系とかは題材的にも演出を多用するような物ではないのですけど。だって、ラブコメで演出を山ほど、って想像出来ます?(苦笑)
 そういう訳で、演出が多く、しかも結構効果的に使われてるゲームを見たのは久しぶりな気がしたのです。これは選んだ題材が演出を使いやすいものだった、というのもあるでしょうね。演出があるおかげで見栄えも良くなってるシーンが多いですし。
 ともあれ、こういう良作が出てくるのはいいですね。18禁ゲームで、純愛系や感動系、あるいは陵辱系とか鬼畜系、そればっかしか出ない状況というのは結構困る(飽きる)ものですし。たまにはSFやホラーなど一風変わったジャンルを扱ったものを出して欲しいものです。そういう意味では、貴重な作品と言えるかもしれません。

 また、システムは一般的なものですが、特徴としては「シナリオジャンプ」というのがあって、一度クリアしたら好きな場面にそのまま飛べるようになっています。これはCG回収や、「あの場面であっちを選んだらどうなるかな?」などを見てみたい時には便利ですね。
 ただ、全ての場面に飛べる訳ではないので、これに頼り切りだと一部のシナリオのちょっとした場面は見られません(登録されていない)。とは言っても、この機能があるのとないのとではかなり差がありますけどね。出来ればこれから出るゲームも、この手の機能が欲しいと思います(まぁ、ゲームの題材やジャンルにもよるけど)。
 それ以外では、おまけシナリオ(おまけモードで見られるもの)がおもしろいです。キャラの性格が全部変わりますし(笑)

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 ちなみに追加シナリオとして、「E-Login」付録CDに番外編が収録されています。
 これは本編をインストールしていないと遊べないので注意。
 でもどうせならF&CからもDL出来るようにして欲しい・・・雑誌って期間限定と一緒だし(汗)


うしとら
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