リベリオン

監督:カート・ウィマー 主演:クリスチャン・ベール


Equilibrium

☆「アクション」に要求されるものとは

 さて、「アクション」もの――それは映画だったり、小説だったり、アニメだったりしますが、それらに共通して、要求されるものとは何でしょうか?
 「熱さ」や「アクションシーンの派手さ」。なるほど、確かにそれらは重要でしょう。
 「主役のアクションの格好良さ」。確かに無様なアクションはあまり見たくないですね(苦笑)
 その他、「単純明快」とかいろいろありますね。
 ――でも、一番重要で、かつ忘れがちなのは……
 スバリ、「ハッタリ」と、それに対する「説得力」の2点です。

 つまり、こういう事なのです。
 「説得力のないハッタリ」や、それを元にしたアクションというのはあまりおもしろくない。
 逆に言えば、現実的ではないアクションでも、それに「説得力」という名の、映像によるハッタリがうまく付いていれば、それは見事なアクションなのです!一見強引ですが、実はこの味付けが一番「わかりやすい」部分でもあったりするんですね。これは過去のアクション映画などの名作が証明しています。
 そのいい見本が、この「リベリオン」に出てくる「ガン=カタ(GUN=KATA)」です。

☆“銃”と“型”――GUN=KATA

 「リベリオン」に登場する、武術「ガン=カタ」。
 これがどういうものであるかは、途中で簡潔に、それでいてとても適切な説明が出てきますが、一応書いておきますと……
 1〜数名以上の相手との戦闘(特に銃撃戦)の為に開発された武術で、その基本は「相手の攻撃が届かない場所」に自分の身体を置き、それでいて自分は「最大の効果がある部位」に対し銃撃を行う。そして、これらは計算(確率)を元に作られた“型”からなる――と、基本はこういう感じです(実際、劇中での説明でも十分わかりやすいですけど)。

 そして、このハッタリは、劇中において強力な説得力となっています。つまり、これまでのアクション映画では主人公は、ボロボロになりながらも敵の軍団をついに撃破しました――という「お約束」を出す必要がなくなったのです。つまりこれまでのアクション映画のパターンに縛られる事が減っています(ゼロではないが、それは「アクション」である以上仕方ない部分ではあります)。
 その為、この映画においては主人公がほぼ最強になってしまっていますが、それでシラけるというかというと、そうではないんですね。
 たまに「主人公が強すぎてつまらない」と言われる映画もありますけど、そういう映画は大抵、見せ方がまずかったり、展開がまずかったり、演出が(以下略)……という部分がマイナスになってるように思います。つまり主人公のパワーに頼りすぎなんですね(それ以外がついていってない)。
 でも「リベリオン」の場合、カメラ視点をいろいろ変えたり(クライマックス付近は特に注目)するなど、見せ方をいろいろ工夫していて、アクションシーンが単調にならないようにしています。
 さらに、「ガン=カタ」の設定の中には、「相手の攻撃を逸らす」ものもあり、これによって、新しい銃撃戦の表現が出てきました。すなわち、「超近距離での銃撃戦」。もちろん本当だったらかなり現実的ではないですが、そこはそれ、アクション自体の映像による説得力で問答無用に黙らされてしまいます。これは「映像」の持つ強みですね(撮る方は大変だろうけど……)。
 その為、見る方も「うわ、これでやられないのか!」などと楽しめるという訳です。ただ、やっぱり一発ネタ的な要素ではあるんで、「ガン=カタ」次回作(予定があるそうです)ではどう料理するのかな?と楽しみではあります。今回の場合、「感情」がスパイスになってたけど、毎回「感情」だけでやっていく訳にもいかないだろうしね。

 ただ、アクション映画としてはアクションシーン自体が短め(合計して20分ぐらいか?)ですが、これは仕方ないでしょう。でも物語自体もちゃんとまとまった物になっているので退屈しにくいと思います(伏線もうまく張ってるし)。

 ちなみに劇場公開時はマイナーでしたが、それでも口コミで少しずつ「これお薦め!」と言う人が増えていって、結局マイナーとはいえ、それなりに結構息が長かったタイトルでもあります(劇場を転々として各地で上映してる、という感じでした。これには2chのリベリオンスレの影響もあるかも)。
 現在ではDVDが出ているので、より見やすくなったのは嬉しいですね。特にガン=カタ「だけ」のチャプターがある辺りが嬉しい。タイトルが「リベリオン ―反逆者―」になったのはまぁ、ご愛敬という事で……

 ――さて、今日もベレッタ2丁でガン=カタの練習をするか!(←バカ)
 という「オトコノコ」な気分にさせてくれる罪な映画ではあります、はい。
 この頃は、こういう気分になるような映画ってあまりないから結構新鮮。

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 余談。ニトロプラスの虚淵玄と中央東口とがこの映画に影響を受けて、「いかん、このままでは次に出す市販ゲームがガン=カタそのまんまになってしまう!」と同人ソフト「浄火の紋章」を作ってそっちで思いっきりガン=カタやりまくったのは有名な話。おかげで市販ゲームの方は無事に(?)ガン=カタは出ませんでした。
 この同人ソフトは、オマージュとしてはかなり高いレベルで作られています(ガン=カタを自分なりに消化して使っている点もうまい)。
 またマンガでも結構ガン=カタが出るようになったり、ついには特撮でも「特捜戦隊デカレンジャー」で、「ジュウクンドー」の内容がジョン・ウー+ガン=カタという……つぐつぐ影響力あるなぁ、ガン=カタって。


うしとら
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