殺意の接吻
-KISS OF MURDER-

リバーヒルソフト AVG PC-98他/Win95など多数


KISS OF MURDER

☆もうひとつのレクイエム

 クリスマスシーズンを迎えつつあるマンハッタンで、1つの事件が起きた。
 宝石店の店員が殺害され、その際に「青い嘆き」と呼ばれる巨大なサファイアが盗まれたというその事件は、「青い嘆き」に巨額な保険金が掛けられていた事から、この事件の真相を解明して欲しいという依頼が保険会社ハートセイフからジャド・グレゴリーの事務所に持ち込まれた。
 ジャドはその資料に気になる名があったので、リバティタウンのJ.B.ハロルドに電話を掛けることにした。
 資料に書かれていた被害者の名前はサラ・シールズ。
 それはかつてJ.B.ハロルドがリバティタウンで起きたある事件の調査をした時に、証言をしてくれた女であった……

 ジャドからの電話を受けたJ.Bは、リバティタウン警察にある資料を思い出し、資料室からファイルを探し出した。
 そのファイルの名は「<ダウンズヒルズ暴行事件>調書」、自分が以前に解決した際に浮上した過去の事件であったが、その際は未解決のままに終わった事件であり、その被害者もまたサラ・シールズであった。
 その数日後、J.Bはジャドの事務所に向かうべくマンハッタンへと発って行った。

☆アナザーストリー

 まず、この「殺意の接吻(くちづけ)」は少し特殊な位置付けになっています。
 タイトルには「Another story of MANHATTAN REQUIEM」の文章も付けられており、シリーズナンバーも単純に「3」ではありません(便宜上は3だけど、実質的には2'という感じになる)。これはシナリオ的に、2作目「マンハッタン・レクイエム」のパラレルストーリー的な扱いになっていること(だから直接的に「マンハッタン・レクイエム」と関係する訳ではない)、しかし舞台と人物のグラフィックは「マンハッタン・レクイエム」と共通する……というのが主な理由でしょう。
 例えるなら、舞台劇で二つの別のタイトルを行っているようなもの(役者と舞台自体は同じだけど、演じる内容は異なる)だと言えばわかってもらえるでしょうか。
 これは当時でも珍しい、「システムの主な部分とグラフィックを使い回し、データ部と一部のシステムを新規に作り起こしにする事で開発コストを抑える」という試みによるもので、この為「マンハッタン・レクイエム」のディスクが必要(この中に含まれるCGデータを読み出す為)になるものの、その代わり若干ですが定価が安くなっているのです(当時の値段で5800円。「マンハッタン・レクイエム」も含め当時の一般的なPCゲームの値段は7800円辺りが相場なので、2000円安い訳です)。
 もっとも、AVGの場合、CGの使い回しというのは必然的に登場人物のCGも使い回しになる訳で、「マンハッタン・レクイエム」を遊んだ直後だと「あれ、あなたは死んでたはずの……」などと結構混乱する事になりますが(苦笑)

 それはともかく、「マンハッタン・レクイエム」のパラレルストーリーなので、基本的な舞台は「マンハッタン・レクイエム」と同様ですし、行ける地区名(イーストサイドなど)も「マンハッタン・レクイエム」と同じです。ただし、名前が同じ店でも場所が変更されてるものもありますので、改めてメモをとった方がいいですが……。

☆「推理」

 そして「殺意の接吻」からは、新たにシステム上での「仕掛け」を追加しています。それは「犯人の推理」。
 今までのシステムだとただ単にコマンドを選択しまくり続ければ、いつかはクリア出来てしまうという弱点がありました。まあ、J.Bシリーズの場合、そもそもの対象が多いので「時間があれば」という話にはなるのですが……
 そこで、「殺意の接吻」ではストッパーを設けていて、それがこの「推理」な訳です。つまり、ゲーム中でJ.Bは複数の事件に出会う事になりますが、プレイヤーはそれぞれの犯人をきっちり答えなければいけないようになっていて、答えられないと例え対象の事件がほぼ解決している状態だったとしても、ゲーム自体がそこから先に進まないようになっているのです。
 これは「プレイヤーがどれだけ今の調査状況(得られている情報)を理解しているか?」という問いかけでもあります。

 もっとも、「殺意の接吻」ではある「引っかけ」があって、一度はわざと犯人を間違えなければ話が進まないのですが――これもプレイヤーが「今の状況を理解」しているかどうかの判断の為に入れてあるようです。
 つまり「現時点で怪しいと思われる人物」かどうかをちゃんと見て(考えて)いるかどうか、をチェックしているようです(もっとも、本当のところは製作者に聞かないとわからないけど、多分これで合ってると思う。だって、「引っかけ」があるのは、その時点で「ある情報が示している怪しい人物」が対象なんだから。逆に言うとこの情報を無視していると進まない訳です)。

 それ以外には基本的に詰まる場所はありませんね。
 それに、「推理」とは言っても、実は「推理」しなければいけない場面は、もう全ての事件に関するほとんどの情報が集まっている時点での話、つまりほぼ終盤になってからで(先述の「引っかけ」は除く。これは後半に差し掛かる辺りでの話)、逆に言うと「もうほとんど答えは出てる」状態になるまでは「推理」する必要がなかったりします。というか、「これで犯人がわからないって言われても……」という状況なんですけどね。

 とは言え、やや意地悪な場面もあることはあるので、やはりそれなりには難しい印象はありますけどね。

☆MSX2版のちょっとした話

 余談ですが、PC版「殺意の接吻」はMSX2版とWindows版だけ事情がやや異なります。この2つだけは、「マンハッタン・レクイエム」のディスクを必要としない、つまり「殺意の接吻」単体だけで遊べるようになってるのです。
 その為か、旧機種版の中でもMSX2版のみ、「マンハッタン・レクイエム」にも付いていたのと同じような手帳が付属しています(ロゴはもちろん「KISS OF MURDER」になっている)。このMSX2版は私は持っていませんが、オークションで出ていた時に内容物の画像が出ていたので、それで知ったのですが。


 2005/12現在、EGGでX68版が遊べます。それ以外は携帯電話用のみ。

 2008/11にDS版で「刑事J.B.ハロルドの事件簿 マンハッタン・レクイエム&キス・オブ・マーダー」として移植されました。
 ただし、こちらは「推理」コマンドは省略され、章仕立ての一本道になってます。

 ヒント:
 「推理」で詰まりやすいポイントは、「引っかけ」に一度は引っ掛からなければいけない事かな?もっとも、これは文中でも書いたように「その時に情報が示している怪しい人物」を指定すればいいだけの話なのですが。人の話はちゃんと聞こうね?
 もう1つは、人の名前に注意する事、かな。意外と紛らわしい名前の人が二人いるのですが……意外とこれで間違えて進まないケースもあるようです(というか、私がそうだったのだが)。
 ちなみに後半の途中でいきなり「ダウンズヒルズ暴行事件」も推理対象になりますが、これはゲーム中で犯人の名がきっちり出てくるので、別に「殺人倶楽部」をやってなくてもちゃんと解けるようになっていますので念の為。これは「殺人倶楽部」ではちゃんと解決してなかったんで、そのフォローの為に入れてるみたいですね(「殺人倶楽部」だと犯人はあいつじゃないのか、とほのめかしてるだけなのです)。

 最後に。「殺意の接吻」の読みが「さついのくちづけ」なのは間違いではなく、実際にルビをふってこう読ませてるのです。実物を知らないと「これ間違いだろ?」って言う人もいそうなので念の為……


 ここからは攻略ヒント情報。
 多くの人がこの辺で詰まるようなので、その部分をまとめておきました。
 詰まるポイント:「カレンが自供しない」

 重要:PC-88など旧機種とX68版では少し異なりますが、基本的には同じやり方です。
 確認事項:

 少なくともこの辺りが済んでいないといけません。テッド云々は、この段階になると完全に自供する順番が決まっている為です(つまり直前がテッド)。まあ、最初に書いたように問い詰める相手が4人なら確実にテッドは終了してるはずですが。
 恐らく詰まりやすいのは、カレンの家の捜索が関係している部分でしょう。実はこの場所では、捜索した「だけ」では必要な証拠が出て来ません。一度全部捜索した後、カレンにもう一度話を聞いて、カレンがいない状態になってから改めて捜索すると出てくる証拠が存在します(これはこの後もう1カ所で同じような事があるので注意)。
 なお捜索が出来ない状態の場合は、カレンとその旦那に話を聞いてください。そうしないと捜索が出来ません。(これは、カレンの家でもあるが旦那の家でもあるので、二人から許可を取らないといけない為。なお「推理」を動かす必要があるかもしれません)
 少なくともカレンの家が捜索出来ない事には話は進みませんので……
 また新しい情報や証拠が出て来た後は、情報を整理する為にジャドとキャサリン両方から全部話を聞いておいてください。この中にもフラグが混じっているようです。
 さらにエンディング目前の段階になると、ある場所に新しい証拠が出てくるので忘れないように。
 この段階になってくると、「推理」をちゃんと設定しないと進まないようになっているのですが、ここで重要なのは「今わかっている情報の分だけ設定する」という事。つまり、例えば「ダウンヒルズ暴行事件」は犯人がバレバレでも今は動かす必要はありません。最初から答えを知っていても、話の上では「そいつ(問い詰める相手)」が犯人だと仮定した上で話していないとダメということ。なおこの事件に関しては、ちゃんと「答えが出てくる場面」があるので、それまでは放置してて構いません(もちろん設定しても構わないのだが、どの「推理」のせいで進まないのかをわかりやすくするには、「今の事件」だけにしておいた方が無難)
 容疑者が4人の段階では、二人についてはそれぞれが関連性を持つ事件について「推理」を操作する必要があります。
 これは、えーと……例えば容疑者AとBがいて、Cの事件について
A:「Cの事件はBが犯人では?」
 という状況なので、J.Bはそれを前提にしてAを問い詰める必要があるという感じ。なので、この場合は「推理」を「C事件:B」にして、Aを問い詰める事で話が進みます。
 特に重要な場面ではこれが必要になるのですが、実質答えそのものなのでコメントアウトで書いておきます。(「ソースの表示」かSleipnirでの「コメントの表示」で見てください)\

 重大ヒントとして、「マイケル・ウォーカー殺害事件」は、「Bマクドナルド殺害事件」とつながっています(ちょっと連鎖的な事件になっている)。
 まずはマイケル・ウォーカー殺害事件を洗ってみましょう。マイケルに関わりのある人、カレンの働いていた場所と、それに関わりのある人物がいたはずですが、その辺から話が出てきます。(ただし、一応「全員」に当たってみた方がいいです。意外な所から情報・証拠が出る場面もありますので)
 またBマクドナルド殺害事件に関しては、ビッキー辺りから情報が得られたような……。
 事件が解決する順番としては、この2つが先になりますので。逆に言うと詰まりやすいのはこの段階なのです(その後の流れは話をちゃんと読んでいればわかるようになっています)。

 参考までに、エンディング目前(最後の人が自供する直前)の段階では次のようになります。
PC-88版:
情報収集 118点
人間関係 100
手がかり 107
聞き込み 100
進行状況 104
証拠 18個

X68版:
情報収集 93
人間関係 92
手がかり 100
聞き込み 98
進行状況 98
証拠 19個

 X68版は1個証拠が増えているので注意。ただしこれは話の流れをよりわかりやすくする為に追加された物のようです。また、X68版では微妙に点数が100点に届きませんが、これは恐らく最後の自供で100点になるように点数が振られているのだと思います。逆にPC-88版では100点を超える物がありますね。余談ですが、Win版はX68版がベースになってるようです(証拠の数がX68版準拠)。


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うしとら
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