黒の断章

OZ CLUB AVG PC-98/SS


☆「また、始まる・・・」

 夜毎に訪れる、悪夢。
 いくら畏れ、避けようと抵抗したとしても、たどり着く結末。
 そして、悪夢の中で知る、人類誕生以前から生き続ける存在。
 「それ」がもたらす恐怖から逃れる術は、狂乱か、死のみ。
 恐怖は、私が生き続ける限り、終わる事はない・・・・・・

 H・P・ラブクラフトによって記された小説群には、そうした存在について書かれた物が多数登場する。それらは、後年オーガスト・ダーレスによって「クトゥルー神話」と名付けられ、数多くの作家によって膨らんでいった。これが現在一般に言われる「クトゥルー神話」である。

 そして、クトゥルー神話をテーマにした映画、コミック、ゲームも多数存在する。ここで紹介する「黒の断章」もクトゥルー神話をベースに作られている。しかし、「黒の断章」はあくまでベースに使用しているだけであって、実際にクトゥルーに関する知識がなくても楽しめる良質のAVGになっている。

☆「七本の腕を持つ異形の蛸に囲まれた赤ん坊の像。」

 オープニングからして、渋い作りになっている。今流行のムービーを使ったデモなどではなく、一枚絵とポイントを突いたアニメーションによって雰囲気を盛り上げるようになっている。そして、オープニングで既に状況説明は充分に受けられる。こういう作りはパソコンゲームでは結構多かったが、最近では減ってしまった。しかし実際、下手なムービーを見せられるよりはちゃんと説明して欲しい−そういう思いがあったので、こういう作りは歓迎である。
 このゲームは、基本的にはカーソルを移動させてクリックして、反応を見るタイプのAVGである。「ポリスノーツ」と同じようなシステムと言えばわかるだろうか?パソコンのAVGでは珍しくないシステムではあるが。全体的にはクリックした部分の反応はかなり細かくて、それだけでも楽しめるだろう。しかし、中盤から後半にかけてはそうした反応を見るのを忘れてしまう程の急展開が楽しめる。なにしろ、現在徹夜でクリアした直後にコレを書いているんだから。ちなみに−午前2:45である(早く寝てしまいたい)。
 プレイ時間は他のAVGに比べれば短い方だと思う(早いと1日で終わる)が、ハマってしまうと時間が経つのを忘れてしまう。それだけは保証できる。しかし、それだけに不満もない訳ではない。先述の通りカーソルをクリックするタイプのゲームにしては、フラグ立てが結構シビアなのだ。そのおかげであちこちをクリックする羽目になる事が少なくない(流石に中盤以降では減るが)。そのおかげでストレスも溜まる事がある。特にこれ以上する事がなくて、他の場所に移動したくてもある場所を数回クリックするまでは、移動できないのにはまいった。

☆「雨の日は、みんな地面を見るのね・・・」

 さて、「黒の断章」はハードボイルド&オカルトシナリオである。先述のようにクトゥルー神話をベースにしているのでオカルト色が目立つが、実はかなりハードボイルドしたシナリオでもある。特にもう一人の主人公とも言える涼崎の風貌も手伝っているが、実にカッコいい場面がかなり多い。ここの見出しだって、そうした場面から引用したセリフなのだが(どういう場面かは見てのお楽しみ)、このようにカッコいいセリフが多く出てくるAVGはあまりないのでは?個人的にだが、セリフに関しては「EVE」「YU-NO」以上じゃないか、と思っている。しかし、ここで一言忠告しておきたい。それは、

 「これに出て来るセリフはそれ相応の人(場面)でなければカッコよくない」

という事である(って、普通ハードボイルドはそうだわな)。しかし是非一度は見て欲しい。とても描き込まれたCGとマッチしていて、感動する事間違いなし!  いわゆる「大作AVG」に比べれば随分短いシナリオだが、実際にプレイするとその奥深さがわかると思う。この辺はネタバレの恐れがあるのであまり詳しくは書けないが、このシナリオの長さは、何回か繰り返して遊ぼうという気になるのでいいのではないかと思っている(実は結構飛ばした箇所があるので・・・)。何も長いシナリオが良いシナリオではないという見本であろう。ただ、PC-98版は18禁だったのだが、SS版ではそれ絡みのシーンがバッサリとカットされているので、ストーリーの上で若干違和感があるのはいただけないが・・・(要するに、「シナリオをうまく処理して欲しかった」という事です)

☆「あの組織というか・・・存在には悪を感じますな」

 さて。ここからは「黒の断章」をより楽しみたい人向けの情報を。

 PC-9801版 オリジナル。現在、新品で買えるかは微妙。一応、SS版を契機にまた店頭に出て来たけど。
 CGはSS版でほとんどリニューアルされているので、ほとんど別物。

 「クトゥルー」青心社、「ラブクラフト全集」創元推理文庫
 基本でしょう。特に「ラブクラフト全集 5」は特におすすめ。「黒の断章」と関係のある物語「死体蘇生者ハーバード・ウェスト」が収録されているので。

 「クトゥルー神話辞典」学研
 これもおすすめ。クトゥルー神話について詳しく知りたい人向け。読み物としても楽しめるし、関連書籍も紹介されているし、物語の解説もある。1600円以上の価値はあるので、一読を。
 追加:現在では学研M文庫にて、「新訂クトゥルー神話辞典」として復活しています。

 「黒の断章 Complete Works」高橋書店
 SS版の本ではピカイチ。原画集、クトゥルー神話の解説まである。

 そうそう、「黒の断章」という書籍があるかのような記述がゲーム中で語られるが、実際のクトゥルー神話のアイテムではなく、あくまでAVG「黒の断章」のオリジナルだという事をあらかじめ断っておく。(初心者はわからないと思うので・・・)ついでに、有名な「ネクロノミコン」は現存する書籍ではなく、架空の書籍という事も・・・
 (注:有名な話だが、冗談で古本屋のリストに出た事がある。途端に注文が殺到したそうである・・・)

 また、クリアした後もわからないようなメッセージがあるかもしれないが、これは少しマニアックなネタなのでわからなくても当然である。とりあえずゲームの前・後には「死体蘇生者ハーバード・ウェスト」「ナイアラーソテップ」だけでも読めばわかるハズ。

  あ、午前3:40・・・いい加減寝てしまおう。

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