メタルギアソリッド4
ガンズ・オブ・ザ・パトリオット

コナミ PS3 アクション


METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS

☆最後のソリッド・スネーク

 ついに4作目となる「メタルギアソリッド」シリーズ。ソリッド・スネークの活躍としてはMSX2版「メタルギア」から数えて5作目(MGS3は別人(ネイキッド・スネーク)なので念の為。また外伝的な「ACID」「OPS」はここでは除外)となります。
 そして今回のソリッド・スネークは、最近になって急速に身体が衰えてきた事が判明。そこで今作では「オールド・スネーク」として活動していくのですが……(記事中では便宜上ソリッド表記にします)

 「メタルギアソリッド2」で語られたプラントでのテロ事件。
 リボルバー・オセロットの暗躍、片鱗が見えてきた「愛国者達」。
 そして新たなるメタルギア、「メタルギアRAY」。
 ソリダス・スネークが引き起こした事件から何年も経過した後。
 今や戦争は変わった。
 「メタルギア」の情報はさらに変化し、現在では量産型メタルギア「月光」がいくつかのPMC(民間軍事会社)に配備されるようになった。
 現在ではナノマシンによるコントロールもさらに進化し、PMCではナノマシンによる敵味方の識別や銃器のコントロール(勝手な殺戮などを禁ずる)も普通に行われるようになっている。
 そしてPMC各社は各々の戦地に武器や兵器を送り込み、時にはPMC管理下の傭兵を送り込み、時にはそれぞれの勢力側に傭兵を送り込み……「戦争」を商売及び経済発展の基本として成長させていった。
 そう、「管理された戦争」の時代になってきたのだ。

 ソリッド・スネークとその仲間であるオタコンたちは、宿敵であるリキッド・スネーク、現在はリキッド・オセロットとして活動している男を今も追跡してきた。
 そのリキッドは今では、数々のPMC(民間軍事会社)に深く関わっており、今回もPMCの活動に関わる事が判明。その情報と共にかつての上司、ロイ・キャンベルはソリッドにリキッドの暗殺を依頼する。
 そしてソリッドは民兵に紛れ込んで戦地に潜入するのだが……

☆コントロールされた戦場

 さて、今回のMGS4での特徴は、前半の舞台が「戦場」だという事でしょう。
 戦場という事は、各勢力が存在し敵対している訳です。しかもこの戦場は、民兵とPMCによる戦闘行為による戦場。
 という事で、ソリッドは「どちらにも属しない(味方しない)」か、「民兵に協力する」という選択があります。ちなみにPMCはナノマシンによる識別をしている為、PMC以外の者は全て敵として扱うようになっているので、PMCに協力するメリットはあまりありません(一部の特殊な武器を入手したい場合は別だが)。
 まあ最初の戦場では、PMCと民兵の格好の区別がちょっと難しいので慣れるまでは大変ですが(苦笑)

 さて民兵に協力するとどうなるかと言うと、一番目立つのは戦場での優位性の変化でしょう。
 民兵に協力するという事はPMCをその戦場から排除するという訳で、ソリッドが攻撃される理由が減る事になります。序盤ではこのメリットがわかりにくい(というかあまり変化しない……)ものの、次の戦場ではそのメリットが格段にはっきりと出てきます。はっきり書くと、「PMCが完全にそのマップから消える」。つまりそれだけ格段に進行が早くなる訳です。
 しかも民兵に協力する事で、PMCからは攻撃されなくなる(流れ弾はあるけど)ので、それだけでもゲームの難易度が結構下がります。
 そう、今回はソリッドの行動次第で戦場をコントロールする事が出来るのです。これは、別の展開を見たくなる理由にもなっていますね。実際今作では戦場の状況の変化がそれなりに細かいですから。
 ただ、こういう変化自体が「話そのもの」にはあまり関係しないのがちょっと惜しいとは思う……が、それは仕様がないかな。

 さて、先ほど「次の戦場」と書きました。そう、今回は戦場が複数の場所に存在する話なのです。
 ここが今までのシリーズと違う所で、それぞれの章(ちなみに今回は章仕立てになっています)で舞台になる場所が異なっているので、当然ながら環境や存在する人間も違ってきます。PMCはほとんど同じ格好ですが、これはまあゲームだからという事で。
 それぞれの章で環境が違うという事は、ルールも少しずつ違ってくる訳です。例えば最初の戦場は本当にごちゃごちゃした感じの戦場なので、素早く移動した方がいい場所は素早く移動した方がいいのに対し、次の戦場では敵があちこちで見張っているようなステージなので、どう隠れるか、どう敵を排除するかをちゃんと考えなければなりません。

 ただ、惜しいのは、こういう変化が起きる戦場は2章までだという事ですね。3章からは「戦場」の意味が違ってくるので……変化を起こせない訳ではないけど、特に3章はどっちかというと「PMCを排除するかしないかでルートが変化する」というわかりにくい変化になりますし。

☆変化したルール

 ちなみに、MGS4では今までのMGS3までのルールがかなり変更されています。
 一番大きいのは操作体系の違いで、今までのシリーズに慣れているとかなりやりにくく感じるはずです。私もそうでしたし……とは言っても、結局のところ「慣れ」の問題なのですが。
 というのは、操作の考え方がかなり変更になっているので、これまでの「操作の常識」を一度リセットして、MGS4の操作に頭を切り換えないといけないから。ただ、MGS4の操作体系は、これはこれで慣れれば操作しやすいものになっていますので念の為。まあAUTO EIMは別ですが(こればっかりは今回、特にクセが強い気がする……)。

 また、武器や弾薬に関するルールもかなり違っていて、今までは「置かれている(落ちている)物をかき集める」、つまり逆に言えば数が限定(制限)されていた。それが今回は「ナノマシンによる武器類の管理」という設定の関係で、戦場で武器を入手してもそれがすぐに使えるとは限りません(ロックされている物もある)。
 ではどうするかと言うと、今作ではドレビンが「武器のロック解除」「弾薬や消耗品の販売」をする事になっていて、これがシステム的に組み込まれています。これにより、弾薬に関してはゲームを進めれば進める程あまり苦労しないで済むようになっています。
 まあ確かにこのシステムは今までのMGSらしくはないのですが、一方で「武器のカスタム化」という新たな楽しみが追加されているのも事実(というか、今までは武器は支給・入手した形のままだったからなぁ……サイレンサーが追加出来る程度で)。

 MGS4でのこの仕組みは賛否両論あるとは思いますが、「遊びやすさ」から言えば遊びやすいとは思います(「数が制限されていないから易しすぎる」というのはわかるんだけど、初心者が遊ばない訳でもないし……)。
 個人的には周を重ねれば重ねるほどランボープレイがしやすくなるという意味では面白かったと思う。いや本当、周を重ねれば重ねるほどほとんど無敵みたいな感じになっていくし……(苦笑)逆に言うと、「腕を競う」をテーマとするなら、最初の周でやらないと意味がないって事でもありますが。

☆隠れる場所は……

 さらに、今作では「隠れ方」のルールも変わっています。
 今までのMGSでは、1〜2が「敵から見えない所に隠れる(敵の死角を考える)」、3が「カモフラージュも考える(なるだけ姿を周囲に紛らせる)」という感じでしたが、今作では3の「カモフラージュ」に近い考え方になっています。
 ただ、3では迷彩を変更するなどの方法でカモフラージュを変更していましたが、今作では「オクトカム」の装備により自動的に周囲に近いカモフラージュになるシステムになりました。この為3みたいにあれこれ変更の手間がかからなくなっています。
 もちろんAの場所にカモフラージュした後、別の景色(パターン)になっている場所で行動するとすぐバレるという部分は残っています。ですから、やはりカモフラージュにはある程度気を配る必要があります……とは言っても、注意深く隠れているうちにカモフラージュも適切な物に変更されているのが普通なので、3よりはあまり気にしなくて大丈夫ですが。

 しかし4ではこれだけではなく、「気配」と言った方がいいのかな……つまりソリッドが行動するかしないかでも敵に存在を察知される可能性が変化します。
 これがまた難しい部分で、例えば他の人のプレイを見ると「えーそこでじっとしてるだけで敵に気づかれないのかよ!」と思ってしまうような場面が結構多かったりします。これは、現実でも確かにそうなる可能性がある場面なんですが、ゲームではスネーク、敵の視点とは違う「別の視点」から見る(いわゆる「神の視点」とかそういう類の視点)な為、「えーそれで見つからないのかよ!」と思ってしまうのであって、敵の立場からすれば別におかしい場面ではないのですけどね(例えば、仮に敵の視点を見られるようにした上でこの場面にすると、確かにスネークは視界に入ってないのがわかる……はず。つまり、実際にスネークが視界に入っていない以上気づかなくても仕様がない)。
 しかし、敵が近くにいる時にスネークが行動(アクション)を起こした時には、そのアクションで何かが変化する(例えば河にいる時に移動すれば水しぶきや波が立つ、など)場合は、流石に敵も「変化が起きている」→「何かが起きている」と不審に思う訳ですね。まあ、これに近い事は旧作でもやっていますが。

 この「気配」の考え方は、もちろん敵に対してのそれも入っていて、ソリッドがしゃがみ・匍匐体勢でじっとしていると、周囲の気配の様子がリング状に浮かび上がり、その形状の変化という表現で表れるようになっています。これにより、例えば壁向こうに敵がいるようだ、とか敵はあっちに行ってしまったみたいだな、という判断が出来るようになっています。特に今回はカメラ視点やその見え方が旧作とは違うので、こういう要素での判断は割と重要になっています。

 もちろんこれまで通りの隠れ方も出来ない訳ではないのですが……どちらかと言えば、今回は「隠れ方に工夫をした方がいい」という感じでしょうか。
 ただ、基本的にオクトカムが有効すぎる(大抵の場面でかなり高いカモフラージュ率になる)とは思うけど、それでも一度敵に見つかった場合はカモフラージュが効かなくなる(ちなみにこの状態ではステルス迷彩も効かない)ので、それなりに慎重さは必要という事でバランスを取ってるのでしょう。

☆難点もありますが

 ……とまあ、それなりには面白かったと思うのですが、難点もありますね。
 まず、誰でも同じように思うんだろうけど、ゲーム開始時の最初に出てくるムービーがスキップ出来ないのは特に嫌。特に気色悪い内容の物が多いので……(意図はわかるんですけどね……意図って何、って人はMGS4に登場する会社の名称に注目すること)せめて2周以降はスキップさせて欲しい。
 また、途中の章での「尾行」の部分は冗長だと思うし(2周目からはさっさとステルス迷彩で済ませてしまった)、実際わかりにくい部分が多いのがマイナス。
 ムービーの関係で、スネークにせっかく装備させてた銃をムービーに合わせて変更されてしまうのもかなり気になる所だし。特にノーキル前提で非殺傷系の武器を使っている場合、ムービーの度にいちいち切り替える必要があるのが結構イライラします(ムービーでは殺傷能力のある銃を構えているので、ムービー終了後のスネークはその武器を「持っている」状態です)。
それ以外はあまり気にならなかったけど(というかこの2つが特にキツかったというのが正解な気もするが)。

 ちなみに話題になった「インストール」ですが、これは確かに気になると言えば気になるんですが、これはPS3のHDDの容量に対する配慮という意味では仕方ない部分もあるのかな、というところ。
 ……というのは、今回ムービー回想がないのですが、これは恐らく共通データに加えて「今の章で使うデータ」をHDDに入れる事を前提にした作りになっているせいじゃないかな、と(つまりムービーを再生する為には少なくともそのムービーが出てくる章のデータがHDDに入っていないと出来ない)。
 これは推測ですが、今回フルインストールが出来ないのは、多分PS3のソフト製作上での規約かなぁと思います(要するにフルインストール出来るといろいろ問題(PS3のライセンス絡みとか、PS3に搭載されているHDDの残り容量とか)になりそう、って事かな、と……あくまでも推測ですが)。もしそうだとすると仕様がないとは思います。
 ただ、そのせいでクライマックスの「ゲームとムービーが同時進行する場面」はかなり不満ですが……というか、こういう場面は2つあるのですが、片方はまだしも(それでも結構辛いけど)、もう片方は「ゲームもしながら動画を見る」という芸当やらせるな(というか「無理!!」って叫びたいわ)と思う。実際のところ、動画を見てる余裕ないし(というか見てたら死ぬんですけど……)。この場面だけはせめてムービー回想させて欲しいと思う。それ以外はじっくり見られるからいいんですが。

 あとムービーは確かに多いんですが、今回はある程度バランスは取れている方だと思うし、特に後半は盛り上がる場面が結構多いから許容範囲。
 また、今回はムービーを途中で一時停止出来るので、トイレなどに行きやすいのも嬉しい(苦笑)

 今回メインとなるボスグループ「B.B」に関しては……確かに何の為に出てきたのって気もしますが、基本的に「MGS」の1作目を意識しているので仕様がないのかな(え?って人はボスの名称とそれが指し示す物を考えるとわかるはず)。でも話への絡ませ方はもう少しどうにかならないのかなとは思いますが……

☆PS3の意味はあるのか

 さて、今回PS3で出た訳ですが、それだけの価値があるのか?というと……
 これが判断の難しいところで、確かにPS3でないと出来ない表現も多いし(PS2でも「無理矢理」なら出来なくはないだろうがかなり厳しい)、特にメタルギア「月光」が数多く出るのはPS2ではちょっと荷が重いと思う(これは「サイズが大きい」というのもあるが、「生物的な動き」という部分もあるので、PS2ではちょっと難しいのです)。あとは後半の舞台となる「シャドー・モセス島」(そう、MGS1のあの場所ですよ)でのボス戦での表現がそうですね。これは確かに凄いし、PS2では無理なのがすぐわかります(それほど自然な表現なんです)。

 ただ、それ以外の場面では「えーと、これはPS2でも無理をすれば出来るんじゃ……?」と思わなくもない(まあ、実際にはメモリなどの関係で厳しいとは思う。例えば無理矢理PS2にした場合、マップを縮小する事になるとか)場面も少なくない訳です。
 そして、MGS4への評価はこの辺りでも判断がかなり分かれるでしょうね。

 というのも、PS3の本体価格が比較的高いのと、現時点(MGS4発売は2008年6月)で他にPS3で話題になるソフトがあまりない為、どうしても「PS3」とのセットでの購入が前提になる印象が強い訳です。ここがPS2とMGS2の時との違いで、PS2の時はまだ「他にもソフトが出るから」と思えたのですが、PS3ではそういう印象が出にくいのです。つまりMGS4を買うにあたり予算的に敷居が若干高い部分なんですね。
 こればっかりは時間(「PS3が値下がりする」とか、「PS3で他にも話題になるソフトが出る」とか)以外に解決方法がないので仕様がないのですが……(まあ、こういう予算的な「敷居が高い」は、MGS4の責任ではないのだが……タイミング的にどうも難しいですね)

☆そして、最後のスネーク

 ……とゲームとしては少々厳しいとは言え、MGS4を「最後のソリッド・スネークの物語」として捉えた場合は、また評価は別でしょうね。
 つまり「メタルギア」に始まる「メタルギア」及び「メタルギアソリッド」を通してのソリッド・スネークの物語の完結編として見た場合、MGS4は確かにソリッド・スネークの物語でした。
 特に「メタルギア」及び「MGS3」のビッグ・ボス(とザ・ボス)、「MGS2」の雷電、ヴァンプ、そして「愛国者達」、そしてMGSシリーズを通してのリボルバー・オセロット(そしてリキッド・オセロット)、彼らとの因縁(つながり)がMGS4で収束していく様はまさしく「ソリッド・スネークの物語」にふさわしい内容でした。
 そしてスネークに向けられる言葉、そしてスネークの行く道は……

「ゲームの部屋」に戻る

 まあ物語としてはツッコミ所多いのも事実(特にナオミ……)だけど(苦笑)、ソリッド・スネークの話としては(結末は)見事なのは確かなので、そこは目をつぶれと言うか「そこは流せ」と言うか……(苦笑)というか気にしてたらきりがないし。
 あと今回のギャグはちと人選ぶんじゃないのかというか、下品だな……(苦笑)いや確かに今までのシリーズでも「そういうネタ」でしたけどさ。

 ちなみに今回、過去のシリーズの内容も整理する関係で、過去のシリーズで出てる話(ネタ)が否定されてたり変更されてたりするのですが、これは仕様がないね(例えばMGS2で出たネタが、その次に出たMGS3での話とつながらない話になっちゃってるので、MGS4で正式に否定されている)。
 でも過去のシリーズからいろいろ抜き出してもいるので、過去のシリーズをやっていると思わず泣きそうになる場面がいろいろあります。特にシャドー・モセス島が舞台となるACT4はMGS1をやっているといろいろ再現出来る(つまりMGS1をやってると再現しやすい)のが感涙もの。
 まあ、その反面過去のシリーズをやってないと話の大半が意味不明になりますが、これは仕様がないです(そもそも「完結編」として作られているので、どうしたって過去のシリーズを遊んでる事が前提になる)。悪い事は言わないから、素直にMGS1〜3辺りだけでもやっておきましょう(ちなみにMSX2版の「メタルギア」の1、2は現在ではPS2用にアレンジ復刻された物が出てますのでそちらが手軽)。

 MGS4では周を重ねれば重ねる程どんどん遊びやすくなるだけでなく、それが「別の難易度にも持ち越せる」というのは結構嬉しいと思う。今までだと、別の難易度へ持ち越せなかったからなぁ……まあ、これを嫌う人もいるだろうけど、選択肢という事で。それが嫌な人は「最初から遊ぶ」って選択肢も提示されていますしね。個人的には、ドレビンショップ(での弾薬の扱い)も含めて、これらの仕様は「プレイヤーが自分で難易度を調整する」という意味と捉えています。(つまり下手な人はどんどん弾薬を増やしていけば遊びやすくなるし、って事ですね)

 まーしかしでも、やっぱ現実的には「PS3とのセット購入」って時点で結構厳しいよねぇ……(汗)


うしとら
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