光神話 パルテナの鏡

任天堂 アクション FCディスク/GBA


☆クソゲー?それとも……

 このゲームは、元はファミコンのディスクシステムで出て以来、なかなかリメイクすらされないまま「ファミコンミニ」が出るまでほとんど遊ぶ機会のなかったゲームでした。
 それまでに私が見聞きした評判は、大半が「クソゲー」、もしくはそれに近い内容でした。「ファミコンミニ」で復活する少し前に、実機で少しだけ遊ぶ機会があったのですが、その時の感想は「わからん」以外の何物でもありませんでした。説明書もなかったし……
 そして「ファミコンミニ」版を入手し、クリアしたので、その感想も含めて、ちょっと分析してみましょう。

☆ちょっと特殊なアクションゲーム

 まず、このゲームを知らない人の為に簡単に説明すると……
 基本的にはアクションゲームです。「マリオ」タイプではなく「魔界村」タイプの、要するに弾撃ちの要素もあるアクションゲームですが。
 そして、スクロールする方向は縦と横の2つ。ここがちょっと特殊なんですが……というのは、「パルテナの鏡」では、それぞれのステージは、3つの面と「砦」面で構成されていて、これが1つのワールドになっています。それぞれが独立した世界で、全部で3つのワールドがあり、これらを全部攻略すると最終面という構成になっています。そして、3つのワールドのうち1つだけが横スクロールで、後は全部縦スクロール。なお、砦は共通の画面切り替えアクションです。
 このうち、横スクロール面は普通のアクションゲームと変わらないのですが、縦スクロールは難易度が高くなっています。というのは、画面のスクロールは自分のキャラ(ピット君)が画面上のある程度の高さに上がる事でスクロールしますね。この時、当然ながら画面上の一番下の足場は画面から消えます。もちろん上には新しい足場が出てくる訳ですが。
 そして当然ながら、ピット君が足場のない部分に落ちるとゲームオーバーです(ちなみにこのゲームは人数制ではなくライフ制)。
 これだけなら普通のアクションゲームと変わらないのですが、そこはそれ、このゲームには微妙な意地悪が入っていて……実はピット君は、横にジャンプした場合、着地したらその場に止まるのではなく若干慣性でやや横に滑って着地します。
 しかも、このゲームでは、割と始めの方の面から「足場の幅は1ブロックのみ」なんていう場面が続出し……
 という訳で、結構イライラします(一応攻略法としては「十字キーの上を押しながら着地する」事によってその場に着地する事は出来るが、結構操作ミスしやすい)。しかも人数制ではなくライフ制な為、常に1人分のプレイなので、最初のうちはすぐ「ヤラレチャッタ」メッセージ(他のゲームで言うゲームオーバー画面)を見る訳で、これがまた……
 ――当然ながら、実機の場合はこの場面の前後にもディスクアクセスがある訳で、それはもうかなりのストレスになるであろう事は推測出来ると思います(苦笑)実際、実機でやってみたら二度とやろうとは思わなかったし。

☆極端な難易度曲線

 さて、多くの人が「クソゲー」だと感じる理由として、先に挙げたような「意地悪」が入ってるのは確かにわかりやすい部分ではあるのですが、実際それだけでここまで言われる理由になるのでしょうか?
 もちろん答えはNO。
 これ以外の要素も絡み合った為……というよりは、むしろ「こちら」の方が重要な部分でしょう。

 実は、このゲームの場合、難易度曲線の流れがかなり極端なのです。
 難易度曲線とは、その通り難易度が描くカーブです。そして多くのゲームの場合、最初は低い難易度から始まり、段々難しくなっていく……という感じになるでしょう。この曲線は、一時のカプコンやコナミのゲームみたいに、「最初から結構上の位置から始まるけど、カーブ自体は結構緩やか」とか「1面から3面(カプコンの場合2面)とそれ以降との間だけやけに値の差が大きい」といった感じのグラフになると思ってください。
 そして、この「パルテナの鏡」の場合どういうグラフになるかというと。
 1面(特に1-3)からいきなり高い位置(値)でかつ、かなり急な坂道になっており、そして2-1からはほぼ平坦(横ばい)になっている……という感じになります。

 こうなる理由はいくつかあるのですが、その大部分はこうです。
 実はこのゲーム、「アクションゲーム」に「RPG的な要素」をプラスした作りになっているんですが、その「RPG的な要素」はスコアに振り分けられています。具体的には、スコアがある点数を超えるとライフの上限が増えるのですね。
 そして、実際にRPG的な成長をするのは、「ステージクリアした時」です。逆に言うとステージクリアしなければ成長できない(ライフの上限が増えない)訳ですね。
 しかも、必要なスコアが結構高めに設定されてる割には、敵を倒して得られるスコアは初期はそんなに高くないのですね。そして、初期のピット君は当然ながらライフの上限は低いし、攻撃力もそんなに高くないし……という事で、ただでさえスコアを稼ぎにくくなっています。
 という事は…………?そう、「稼ぎ方」を知らないと先に進む事自体が難しくなってしまいます。しかし「稼ぐ」だけでもかなり時間がかかる……と、これはアクションゲームとしては致命的な欠点になってしまっています。先述のように、ライフの上限を上げる為のスコアはかなり高く設定されてるのに、敵を倒して得られるスコアはあまり高くないのですから。

 また、攻撃力を上げたりするには、ステージの途中にある「神の部屋」「修業の部屋」に入って、神様からアイテムを貰ったり修業する必要があるのですが、問題は「神の部屋」の方。
 実はこの部屋は、必ず神様が出てくる訳ではありません。ランダムという訳ではなく、それぞれのステージである条件(どうやら「そのステージ間でのスコア」のようです)を満たしてないと「神様」が出てこないのですね。
 つまり「神様」を出す為にも「稼ぐ」必要があるのですが、これが結構意地悪で……神様を出す為のスコアは「ループする」ようなのです(攻略サイトの記事を見た時は頭を抱えたわ……)。つまり稼ぎすぎても神様は出ない、という……(私が遊んでいた時は、1回神様が出なかったので攻撃力を最大に出来ませんでした。クリアは出来たけど……)
 また「修業の部屋」の「修業」は、簡単に言えば「敵が次々に出てくる部屋でなんとか耐えろ」という物で……当然ですがライフは減りますし、ライフがなくなればゲームオーバーにもなります。

 もちろんライフを回復する手段はあるのですが、場所が限定されているので、序盤はどうしてもきついのです(序盤では金があまりないので買い物もあまり出来ないですし)。
 このように、序盤だけかなり難しく(死にやすく)出来てしまっているので、序盤で投げ出す人が多いのも仕方ないでしょう。

 さらに重要な問題があります。
 このゲーム、これまでにも書いたようにアクションゲームとしては問題が多い(元々アクションゲームでここまで時間をかけなければクリア自体難しい、というのはあまりない……というか普通はやらない)んですが、次に挙げる事情がさらに問題を悪化させます。
 このゲームは先にも書いたようにRPG的な要素も入ってる訳で、RPGみたいにピット君の状態をセーブする事が出来ます。
 ……実はセーブされるのはゲームオーバーになった時「だけ」です。
 しかも、恐ろしいことに「死んだステージの最初の状態(ライフは1ブロックのみ)」だけがセーブされます。
 察しのいい人にはもうおわかりでしょう。
 そう、1-1でいくら稼ごうが、1-1で死んだら全部水の泡です。せめて1-2までは行かないと意味がない。
 しかも1-1と1-2で稼いで、ある程度強くしてないと1-3はクリアが難しくなっている(ただでさえ長いくせに回復出来る場所が少ない構成になっている)……という事で、この辺りがかなり躓く場面になっています。特に1-1でかなり長い時間稼いで、さあ1-2に向かおう……という時に死んだ時にはそれまでの時間を返せと本気で叫びたくなります(ただでさえライフが少なくて死にやすいのに)。

 逆に言えば、1-2までにいきなりライフの上限まで上げて、その後わざと死んでセーブしてしまえば、後はかなり簡単になってしまうのです。特に1-3を超えたら後はあまり難易度が変わらない……というより、それ以降はもう「ライフが極端に減らないように、ライフやアイテムを時々補充して……」という進み方になってしまいますから。特に2-1〜2-3は、横スクロール面という事もあって、難易度がかなり低くなっています(これは「足場がそんなに変化しない」という理由もある。縦スクロールだと足場がどこで消えるか考えないといけないけど、横スクロールだと足場はあまり考えなくていい(見えてる通りだから)、というのを考えればわかると思います)

 もちろん、こういった要素の事を知らないで普通に遊ぶ場合は、そもそも「稼ぐ」などといった事を考えないと思いますので、難易度自体はもっと上がっている事になるでしょう(ライフの上限はロクに上がらない、神様が出にくいので攻撃力も増えない、などなど……)。
 一応、当時はこんな感じの、つまり「クリアしたかったら時間をかけて攻略しろ」という感じのゲームは多かったのですが、それにしてもこの仕様はあんまりと言えばあんまりだと思います。そもそもアクションゲームで無理矢理長時間遊ばなければセーブ自体出来ない(しても意味がない)というのは何か間違ってるとしか……
 さらに実機で遊ぶ場合、当然ながら「ディスクを裏返す作業」や「ロード中」といった時間がある訳で、この部分がかなりストレスですし……(死にやすいゲームではけっこう嫌なストレスです)。

 しかし、実際にはアクションゲーム自体は比較的マトモな内容なんですね、実は。
 ライフさえあれば普通に遊べるし……というより、最初のライフが低すぎるのが問題なんですが。
 という訳で、ライフさえあれば後は普通のアクションゲームとして楽しむ事が出来ます(そこまでのハードルが極端に高いけど)。
 そしてエンディングに突入、そして…………
 …………なんで勝手にセーブデータを「最初から」にしやがりますかこの野郎は。ハイスコア「だけ」残されても嬉しくも何ともないんですが…………

 はい、プレイヤーがこのゲームを壁に叩き付けるのを止めませんよ俺は。
 クソゲーとは言わないけどね。俺は。

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 いやー、「ファミコンミニ」版が出て良かったよ(苦笑)
 実機だったら100%投げたままだったろうし。
 ……ファミコンミニ版でも何回か投げそうになりましたが。

 ちなみに攻略サイトの1つ。
 「パルテナの鏡資料室」http://hb8.seikyou.ne.jp/home/eotomo/paru1.html


うしとら
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