西風の狂詩曲

日本ファルコム RPG Win


The Rhapsody of Zephyr

☆運命の日

 シラノ・バーンスタインとメルセデス・ボルジアは婚約披露パーティの中で、幸せの中にあった。
 その幸せな時間は、しかし突如に終わりを迎えた。
 突如として現れた軍人たち。そして、一人が告げた。

 「シラノ・バーンスタイン、お前を悪魔崇拝の容疑で逮捕する」

 チェザレ枢機卿のもと、シラノの裁判は進んでいった。
 禁書とされている「創世記戦秘録」の研究をしていたこと、さらに実の兄弟のように仲のよかった幼なじみ、同じ学校で共に学んだ学友の偽証により、シラノは悪魔崇拝のかどで有罪になり、投獄された。
 そしてインフェルノ監獄で14年が過ぎた・・・

 革命軍「ゼフィールファルコン」によるインフェルノ監獄襲撃の際に乗じて逃亡し、かつて自分を陥れた人物と父を決闘の名のもとに殺した人物、そして影で全てを操っていた男への復讐の為に生き延びるが・・・

☆韓国産のRPGを日本向けにリニューアル

 この「西風の狂詩曲」は、元は韓国の同名のRPGをファルコムの手でシナリオ、キャラクターの名前、マップなどを国内向けにアレンジし、ファルコム製品として発売されました。
 このように「海外のソフトを国内向けにアレンジして発売」というのは、古くは「ウィザードリィ」(オリジナルであるapple版と国内版はかなり違う)、少し前でもアートディングの「すべての道はローマへ通ず」(PC-98で出たSLG)など、結構行われてきました。
 そして「ウィザードリィ」のように成功したのもあれば、さほど成功していないのも多いのですが、「西風」はどうだったのでしょうか。
 なお、「西風」のオリジナル版はプレイした事も見たこともないので、どれだけアレンジされているのかは知らないので、ここでは単純に「西風」の感想に留めておきます。

 シナリオはデュマ著「モンテ・クリスト伯」をベースにした復讐物をテーマに、「ゼフィールファルコン」を中心にした戦争などいろいろな話を詰め込んだ物になっています。
 おかげで、キャラが多く出てくるし地名や街の名もいろいろ出てくるので頭の中がこんがらがります(苦笑)陰謀とか出てくるから余計こんがらかるし。

☆あのー、ここどこでしょうか?

 「西風」は、今のゲームを基準にして見た場合「文句無しにお薦め」と言い難い要素が多いように感じます。例えば、マップ。
 というのも、マップ機能はあるものの、実際にキャラを移動させる時には結構迷いやすいのです。特に森の中などでは隣のマップに行けるルートが決まっているものの、見かけ上では隣に行けそうなグラフィックのところもあったりするので、いちいちマップで確認する事もあったりしますし。
 また基本的にマップが広い、というよりは無駄に広げすぎの感もあります。これだけ広いんだったら、せめて今まで行った町などへの移動は、瞬間で出来る手段が欲しいところです(一応あることはあるのだが、条件が限られすぎていて意味が・・・)。

 また、最初の「インフェルノ監獄」からシラノを脱獄させるシーンでは、無限ループが入っていますがあれは止めて欲しかったです。非常にわかりにくい(マップが大きすぎるので元から迷いやすい)ので。

☆これでどう戦えと・・・(汗)

 戦闘シーンも不満が結構ありますね。
 キツイ言い方をすれば、「戦略性もクソもない」というか・・・制限が多すぎます。
 例えば、キャラを飛び越しての攻撃は出来ません。移動もキャラを飛び越せません。ということで、キャラの位置関係が重要になります。が、元々狭いところで敵に襲われた場合はダメージ覚悟で倒してしまうか、逃げるかのどっちかしかありません。これって結構ストレスなんですが。

 また、武器にも耐久力などがあるのはいいとして、使える武器と使えない武器の差が大きすぎ。序盤は特に「なんですぐ壊れるんじゃー!」「なんであまり当たらないんじゃー!」の連続でしたから。中盤で最強ランクの武器を手に入れる辺りになるとかなり改善されますが、それまでが長すぎ。
 ついでに、本当は「耐久力」なんてのは入れて欲しくなかったなぁ。単にストレスの種が増えただけにしか感じられないし(ラスボス戦であっというまに最強ランクの武器が「壊れた」時はもう嫌になる)。

 でも、一番の不満はボスキャラ戦。
 弱点へは直接攻撃が出来ない、ついでに「回り込み」もラスボス辺りを除いては基本的に出来ないんで、攻撃出来るキャラはかなり限られます。
 これがどれだけ「めんどくさい」ことか・・・単に体力比べをしてるだけって感じ。消耗戦にしかならないので、ボスを倒しても達成感が全然ありません。
 特にクリスルートでは、後半のボスキャラ戦でのキャラ選択に疑問が多すぎます。剣士がいても、実際には魔法しか使う意味がないというのはちょっと(直前で最強クラスの剣を貰えるにも関わらず使わない(使えない)んですから)。もう少し考えて欲しいなぁ。

 ついでに、長い魔法エフェクトも何回も見ると単にうざったいだけです。せめてON/OFFぐらいさせてくれ。「グランディア」などの場合はまだ短いから何回でも見られたんですがね。

☆良くも悪くも・・・

 ということで、良くも悪くも「ひと昔のRPG」という感じです。
 決して悪くはないんだけど、ストレスの要素が多すぎるのでそれだけでも改善すればかなり良くなるんでしょうけど。

 ストレスの要素といえば、ほとんどの人が言う「操作性」も問題ですね。基本的にマウスでの操作、キーボートは非公式ですがカーソルキー、CTRLキーとカーソルキー(カーソルの移動)、NumLockを外したテンキー(キャラの移動)で対応しています(マニュアルには書かれていないし、ファルコムも公式に公開していないのであくまで非公式ですが・・・)。
 ですが、非公式とはいえこのキーボートへの対応がなければ中盤で放り出していたと思います。それほど操作しにくい・・・というか、例えば街の人と会話したいとします。
 会話したいときには、街の人をクリックしますね。ところが、実際の会話までにキャラたちは「歩き」ます(これだけでも結構ストレス)。そしてようやく会話したら・・・また街の人は歩き出します。会話は普通2、3種類の内容があるのでまたクリック、歩き出して・・・と説明してもわかりにくいと思いますが、かなり会話しにくいんです。
 それでなくてもクリックした時に街の人が移動していたらまたクリックし直して・・・とストレス溜まるのに(キーボートを併用すれば少しはマシになりますが)。

 この辺りは、本当に少し前の国産ゲームを見ているような感じですね。Windowsだからマウスで対応、キーボート?何それ?そんなのあったっけ?という感じで、操作性を置いてけぼりにしたゲームがWindows初期には多かったように思いますが、それと似ているような・・・。
 もっとも、そっちはAVGだからまだわかる(本当は困りますが)のですが、こっちはRPG。それもあちこちが動いているゲームです。それなのに全部マウスで操作しろ、というのは困るのですが。

 また、戦闘のエンカウントの方法も疑問がありますね。
 んーと・・・説明しにくいんですが、実は敵と遭遇したかどうかは「常にリアルタイムで」行っているようなんです。というのも・・・
 例えば野外でじっとキャラを放っておいてみましょう。しばらくすると画面が真っ白になると思います(戦闘に入ったということ)。
 他にもマップを表示して、消した瞬間に敵が出てくることも多いですね。
 ・・・あのぉ・・・普通は「移動している時に判断」すると思うんですが・・・これはいくらなんでも変だと思うんですが。確かに「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」でも「常にリアルタイム」でしたが、あっちは「敵の姿が始めから見える」ようにも出来たからまだわかるし、エンカウント率もそんなに高くなかったんですが。

 この辺りだけでも改良すればかなり良くなると思うのですが。実際戦闘とかよりも体感する回数の多い部分ですし、それだけに不満がかなり集中しているはずです。

 それから、これも結構致命的だと思うのですが・・・強制イベントの後にパーティの構成が変わっている(キャラが入れ替わっている)事があるのですが、この時に泣きを見る事が多いです。
 実はキャラの装備は、装備させたらずーっとそのままなんですね。当然最強クラスの武器で、たった一つしかない武器でも装備したままです。そして、キャラによっては二度とパーティに加わる事がありません(話の展開にもよる)。ここまで書けばもうわかりますね。
 ・・・という事で、イベントが起こりそうになったらセーブしてイベントとその後のパーティ変更を確認して、ロードして・・・といった自衛策をやっておかないと泣きを見ます。せめて最強クラスの武器だけは返してくれ。

☆不満を挙げたものの

 と、いくつかの不満を挙げたものの、シナリオは実に好み(後半などで時々強引に話を伸ばしている感はあったが)でした。でもエンディングによっては「・・・説明不足すぎ・・・」って思う展開もありますが(私の見たクリスルートでのエンディングがそうだし)。
 マシンの環境によってもかなり評価が分かれる(非力なマシンだとストレスがさらに増えるようです)こともあり、ちょっと難しいところはありますが、全体としては充分合格点でしょう(ただし多大な改善を求めたいところではあります。特に操作性)。

 後半の展開は結構盛り上がったし、それなりに楽しめましたけどね。でも続けて他のエンディングを見る気はないです(気力が続かない・・・)。
 何はともあれ、「とてもお薦め」とは言いにくいですが、興味があって、さらに心の広い(苦笑)人なら買ってもいいんではないかと思います。
 ただし、「ファイナルファンタジー」嫌い(特にFF7以降の「魔法エフェクトうざったいからON/OFFさせろ!」って人)は避けた方が無難。まぁ、個人的にはあっちよりはマシなんだけど(あっちはもう「どーでもいいから早く魔法終わってくれない?」の世界だからなぁ)。

メニューへ戻る


 ちなみにエンディングは確認されているだけで4種類だそうです。
 噂では他にもあるらしいが真偽は不明。
 あと音声関連の不具合報告が多いようなので、不具合がある時はファルコムサポートのページを見た方がいいでしょう。100%の解決がないケースもありますが・・・