夏が来て。 青年は旅のひと。 青年は歩きつづける。 今はまだ、風の中− |
「Kanon」のkeyブランド第2弾、ということで出る前からかなり期待されていた「AIR」。
私は実際の所、あまり期待してはいなかった(というか、また「萌え」+「泣き」だろう、と高をくくっていた)のですが・・・ALLクリア後はただひたすら、ため息しか出ませんでした。いや、正確に書けば、ため息しか出せませんでした。しかもまるで魂が抜けたかのような状態に・・・
#一部ではこの現象を「空気病」と言うとか何とか。
で、この「AIR」に関して書く前に、書いておかないといけない事柄が少々あります。
まず、「Kanon」「ONE」との比較は一切しません。
これについては後で詳しく述べますが、比較する事自体に意味がほとんどないので・・・
第2に、ネタバレを避ける為に、シナリオには一切触れません。という事で、あらすじも書きませんが、ご了承ください。
というか、本音は「興味があるなら黙ってさっさと買ってこい」なんで・・・いやマジで。
では、とりあえず書いてみますか・・・
「AIR」は、「物語」です。
それ以外にこの作品を形容する言葉が見つかりません。
さらに言えば、これまでのゲーム(一般、18禁)のどれとも異なる性質としての「物語」です。
これではわかりにくいと思うのですが・・・
例えば、先にもちらっと書いたけど「Kanon」「ONE」との比較自体意味がない、というのはこれが原因なのです。つまり、根本的に違うのですね。ベクトルも違いますし。
もう少し噛み砕いて書くと、いわゆる「萌え」とか、「泣き」とか、「感動」とか、そういった性質の物が「Kanon」や「ONE」などと「AIR」とでは全く異なるんです。しかも、「AIR」においては「萌え」の要素はかなり薄くなっています(少なくとも私には「萌え」は感じられませんでした)。これは現在の18禁ゲームの流れから見ると大変な事です。
さらに言えば、「AIR」には驚くべき点があります−いわゆる「恋愛物」ですらない!
そう、「AIR」はいわゆる「主流」の流れから見ると、かなり異端なんです。
さらに「AIR」独自の構成が「物語」である事を強めています。
これに関してはネタバレになるので詳しくは書きません。が、一応少しだけ。
「3人をクリアしてからが本当の始まり」
そう、3人は序章なんです。しかし、実は3人のシナリオも非常に重要な位置付けがされています。
「AIR」の根本に関わるシナリオはもちろん、一見無関係に見えて、しかし実は「AIR」を理解する為には決して外せない、なんてシナリオもありますし。
そして3人のシナリオの向こうを全て見終えた時、それは「AIR」そのものを理解する為に必要だったというのがわかるでしょう。
しかしこういう効果があるとはいえ、実際の所シナリオライターがどこまで計算して書いたのか?と思うと、次回作の出来が恐ろしく思えてきます。それほどに、この構造に気づいた時は感動しました。
とはいっても、ALLクリアして、その後しばらく「AIR」の世界の余韻に浸っている時にふと思い出して、その時になってはじめて気付いたんですけどね。
その為か、いわゆるHシーンも数は少ないですし、それが原因で「最初から18禁じゃなくて一般指定で出してもいいんじゃない?」と思う人もいるでしょうが、個人的にはこれには反対です。
というのは、確かにHシーンこそ少ないし、意味のない(物語に影響を与えない)Hシーンが大半ですけど、それでも2つだけは確実に必要です。
その2つは、片方は(某キャラの)「通過儀礼」。そしてもう片方は、まさに必然として「なければならない」−というか、このシーンがなかったら「AIR」は「終わらなくなってしまう」。実際にはHシーンなしでも出来るのでしょうが、それでは「小手先で誤魔化した」だけになってしまうような気がします。
私も前者は最初に見た時には「必要ないんじゃ?」と思ったのですが、実はこれがないとあるシナリオ(このシーンが出るシナリオと対になっている)との対比で深みが出なくなってしまうんです。
でもって、後者は実際に自分の目で見れば納得出来ると思います。というか自分で見ないと理解出来ない内容ですし。
しかし後者のような、物語として必然性を持ったHシーンって、「YU-NO」以来久しぶりのような気がします(注:ここで挙げているのは「YU-NO」の中の某キャラの事ね)。
・・・ただ、逆に言えば、それ以外のHシーンは私もいらないと思います。
しかし、今書いている最中も思うのですが、「AIR」は本当に「凄い」作品です。
先にも書いたように、いわゆる「萌え」要素はあまりないし、シナリオはむしろ甘えを許さない内容になっているし、とプレイヤーに「媚び」を売るような事を一切していないんですよね。
もちろんkeyのゲームには付き物の「妙なセリフ」、つまり「がおっ、がおっ」のような物はあるけど、それらはどっちかというと「キャラの個性づけ、特長づけ」よりは「心理描写」の為に使われているという印象で、その為にわざと「可愛くない」言葉にしているのかと思うほどです。
#実際、後半ではそうなるのだが >心理描写
それに、XXシナリオでは「あれ?バッドエンド?」、でも「あれ?エンディング(スタッフロール)が付いている?」と、他のゲームでは見られない展開があります。強いて言えば「ONE」が近いかな?
もちろん、これも後で完全にわかるようになっているのですが・・・いわゆる「ハッピーエンド」に慣れすぎている人には痛い話が多くなっています。
これは「みんなが幸せ=ハッピーエンド」という「お約束」に対するアンチテーゼなのかもしれません。
それにしても、これを実行するのはかなり勇気のいる事です。失敗すれば総スカンをくらってしまうんですから。それは「作り手」にとっては一番避けたい事でしょう。ここで妥協してしまう人の方が多いかもしれません。
しかし、「AIR」は失敗を恐れるどころか、むしろそれを堂々と実行して、成功させてしまっている。
もちろん賛否両論はあるでしょうが、それでも、この「痛さ」を見事に表現してしまう勇気には素直に拍手を送りたいほどです。
今まで、「シナリオが良かった」というと、「イース2」「白き魔女」「YU-NO」「EVE(beのみ)」などを思い浮かべるのですが、「AIR」はそれらと比較出来るのか?というと・・・
結論から言えば、最初から勝負になってません。これは私の主観ですが。
なんというか、今まで遊んだゲームは大抵「ベスト○」といったランクづけがそれなりに出来る物だったんですが、「AIR」はもはや「格別」というか、「格が違う」というか・・・説明しにくいのですが、ランクを付ける事自体がもう「AIR」には合わないと感じるんですよ。
もちろん、「AIR」とて本当の意味での100点(満点)のゲームではありません。例えば、メッセージのバックログのボタンが小さくて押しにくい、というのが気になりました。しかしこれが「AIR」の点数を下げるか、というとそういう事は全然ないんです。
それに、シナリオも多少冗長かな?と感じるの点はあるのですが、それでもプレイ時間は短い方です(ALLクリアまでの時間、という意味では)。それに既読スキップもありますし。
しかし、これらの点も、ALLクリアしてしまうと、本当に些細なことと思えてしまう−それだけの内容が確実にあるんです。実際、私はクリアした後、これらの点をも許してしまったほどですし。
ただ、気になる事が1つ。
「AIR」は3人のシナリオから始まりますが、それぞれのキャラのシナリオに進む為の選択肢が少々わかりにくいのです。何回か遊べば何となくわかってくるし、「ONE」の選択肢よりはまだマシなのですが・・・次回作ではこの辺も改良して欲しいかな。
でも、これもクリアしてしまえば本当に些細なことと思ってしまうんですけどね。
さて、これから「AIR」をプレイしようとしている、あるいは3人のシナリオをまだプレイしている人へのアドバイス。
先述のように、3人のシナリオはまだ序章にすぎません。
だからこの時点ではまだAIRのほんの一部しか見てないという事ね。
この辺りでは、疲れたら休んだりしても構わないでしょうね。
ただ、この時点で投げだす事だけはしないでください。ものすごく勿体ないし。
また、この3人に関してはバッドエンドも重要な意味を持っているので、出来ればハッピー、バッド両方を見てください。
しかし、3人のシナリオをクリアした後は、3〜4時間x2の時間、出来れば半日ほど時間を空けて、その間は電話などをストップさせて何の邪魔も入らないようにしておいてから一気にプレイした方がいいです。
これはALLクリアした人からの心の忠告です。
どういう事か(理由)を書く事自体が完全にネタバレになるので書けません。ただ、「途中で中断しにくい」とだけは書いておきましょう(中断出来るけど心情的に中断出来ない)。この状態で仕事(勉強)などはしない方がいいと思いますし。
そして、ALLクリアした暁には、「AIR」であれこれ話したくなると思いますが、本当にネタバレには気を付けてください。特に「3人のシナリオの向こう」に関しては、そのネタバレが許されている場所以外では話さない方が賢明です。
実際推理小説のトリック(犯人)をバラすような物、と言えば結果もわかると思います。
あと、これは個人的な考えですが・・・
出来ればそこそこマシンパワーのあるマシンでやった方がいいようです。
目安としては、オープニングデモがなめらかに出ていれば合格というとことでしょうか。
これは私の経験談ですが、私の環境の場合、MMX-200ではオープニングデモが途中でコマ落ちなどで、演出がカットされてしまいました。ところがセレロン300のマシンで見てみると、すべての演出が再現されていて、「・・・ここでこういう演出があったのか!」と驚いた事があります。
多分、P2、またはセレロンの266以上のスペックのマシンであればオープニングはかなりなめらかに出てくれると思います。
また、実際のゲームのプレイ感覚にも関係しているので、これより古いマシンはもう少しパワーのあるマシンに変えた方がいいでしょう。
はー・・・いやマジで2000年度のベストゲームは文句なしに決定ですね。
それと、「AIR」で出ている手法は、「うしおととら」「白き魔女」「YU-NO」「DESIRE」などの手法をさらにうまく使っているような気がします。
その事に気付くと、また涙してしまうんですよね・・・本当、いい物を見せてくれてありがとう。
それと、お願いですから、サントラCD出してください。これだけの物、初回特典だけで終わって欲しくないです。
追加:「たわごと」にも関連記事があります。[1、2、3、4]