ダンセイニ読書案内

 かつて「バブルクンドの神々」にて(ダンセイニの)「読書案内」なるコンテンツが存在し、この内容はダンセイニ初心者にとって大いに参考になる物でした。
 しかし現在はこのコンテンツは存在せず、また、現在の状況もかなり変わっている為に情報自体が古くなっている事は否定出来ないので、このコンテンツのみあえて保存していませんでした。
 そういう訳で、内容を新たに、簡単な読書案内を書いてみました。書籍の選択基準は「初心者向け」「知名度の高い作品優先」という事になってます。
 なお記事自体は基本的にそのままですが、絶版や新刊が出た時には追加修正があると思いますので、このページの一番下の更新日時を参考にしてください。更新自体恐ろしい程のんびりした物になると思いますのであまり気にしないのも手かもしれません。

Level1

 この辺りの本は大手の本屋なら置いてある事も多いでしょう。店頭になくても注文すれば購入は可能なはず。
 という事で、初めのうちはこの辺りから手を出した方が入手性も悪くないと思います。値段も手頃だし。

 まずは有名な作品から。
 ダンセイニの長編及び短編だけで構成されている本で、入手が容易なのはこの辺りぐらいか。

「魔法使いの弟子」 ちくま文庫:ISBN4-480-02866-8
 長編小説。

「バベルの図書館 26:ヤン川の舟唄」 国書刊行会:ISBN4-336-03046-4
 短編集。重版はしていないものの、出版社在庫はまだあるようです。

「エルフランドの王女」 沖積舎:ISBN4-8060-3026-0
 長編小説。海外でも高く評価されている作品。

「世界の涯の物語」 中野善夫ら4名/訳:河出書房新社:ISBN4-309-46242-1
 「The Book of Wonder」「Tales of Wonder」2冊を全訳(既訳がある物も全て新訳)で収録。
「夢見る人の物語」 ISBN4-309-46247-2
 「The Sword of Welleran」「A Dreamer's Tales」2冊を全訳(既訳がある物も全て新訳)で収録。
「時と神々の物語」 ISBN4-4-309-46254-5
 「The Gods of Pegana」「Time and the Gods」「Tales of Three Hemispheres」、及び生前に単行本未収録だった短編を収録。(既訳がある物も全て新訳)
「最後の夢の物語」 ISBN4-309-46263-4
 「Fifty-One Tales」「The Man Who Ate the Phoenix」、及び生前に単行本未収録だった短編を収録。(既訳がある物も全て新訳)
 このシリーズは挿絵も全て収録しているし、出たばかりで入手しやすいので、入門には最適でしょう。

「二壜の調味料」 早川書房:ISBN978-4-15-001822-1
 アンソロジー・ピースの定番「二壜のソース」で知られる短編(この本では「二壜の調味料」)を含む単行本の全訳。

 次はアンソロジー・ピース。

「世界短編傑作集 3」 江戸川乱歩/編:創元推理文庫:ISBN4-488-10003-1
 有名な「二壜のソース」が収録されています。一応念のため書いておくと、推理小説好きなら知らないとモグリと言われる程の古典です。

「不死鳥の剣 剣と魔法の物語傑作選」 中村 融/編:河出書房新社:ISBN4-309-46226-X
 初期短編集の中の「サクノスを除いては破るあたわざる堅砦」を収録した、ヒロイック・ファンタジーのアンソロジー。

「北村薫の本格ミステリ・ライブラリー」 北村 薫/編:角川文庫:ISBN4-04-343204-6
 西條八十訳の「倫敦の話」「客」が収録されている、ミステリー(推理)小説のアンソロジー。
 ……あ、このダンセイニ作品は別に推理小説ではありませんので(苦笑)北村薫いわく「新本格(ミステリ)の匂いがあるでしょ」という事です。
 西條八十訳は他にもいくつかありますが、これについては邦訳目録を参考に。

 戯曲家としてのダンセイニ本はこれ以外に選択肢がない。

「ダンセイニ戯曲集」 松村みね子/訳:沖積舎:ISBN4-8060-2490-2

 ダンセイニの短編が掲載されている雑誌としては「幻想文学 62:魔都物語」が手に入りやすいと思う。濃いめの本屋を探すか、バックナンバーを注文しましょう。版元のアトリエOCTAで注文が出来ます。

Level2

 ここからいきなり「絶版」という現実が登場する。「特にダンセイニ初心者にお薦め」の2冊が絶版というのはかなり痛い。
 当然ながら注文は不可能なので、ISBNは記入しない。
 古本価格もそれなりに高い事が多いが、探せば安い本が見つかる事もあるので不用意に高い値段で買わないように(特に文庫に7000〜1万以上の値というのはちょっと……)。図書館をあたるという手もあるんだし。

「ペガーナの神々」 ハヤカワ文庫FT
 書籍としての「ペガーナの神々」は創土社のとハヤカワ文庫の2種があるが、ここでは特にハヤカワ文庫版を推す。
 理由は「時と神々」も収録しているのでこちらの方がまとまりもいいのと、挿絵と本文が原書と同じ構成になっている為(創土社版は挿絵と本文が違う事がある)。この作品は挿絵と本文の関連性が特に強いし。
 ダンセイニ作品では最も有名な作品であり、ファンタジーの歴史などで言及される事も多いにも関わらず、「絶版」という事で図書館や古本を探し回る以外に読む手段が限られているのが残念。古本での価格も高めだが、探せばそれなりの価格(例えば7000円などいう値段ではなく3000円ぐらいとか……一応これでも安い方。ただでさえ見つけにくいんだし)で見つかる可能性はあるし、最悪でも国会図書館には所蔵されている。

 追記:2004/3に復刊!この機会に入手しましょう。もちろんハヤカワ文庫FTです。
 間違ってもYahooオークションで買わないように!!というのも、同一人物による復刊新品本の転売が行われているようですので……特に「初版です」と明記されていない物は復刊本の転売と思って良いです。(第二刷はもっと稀少ですし、復刊は第三刷です。つまり実質的に初版と第三刷しか出回ってません)
 本屋にない場合は注文すれば買えますし、オンライン書店(amazon.co.jpなどでも購入出来ますし、Yahooオークションで買うより安いはずです(オークションの出品は定価より少し高く値を付けて売られていますので)。

 追記:2015年9月にハヤカワ文庫トールサイズで、新装版としてカバーデザインを変更した上で重版しました。これは五刷となります。

「妖精族のむすめ」 ちくま文庫
 短編集。これまた人気は高いが、古本価格はまだ1000円ぐらいのが多いようです(高くても2500円ぐらいまで)。たまにまとまった数を見かけるので、古本を気長に探すのがいいでしょう。

 追記:2004/5に「世界の涯の物語」が出ており、一部を除く大半の短編が目的なのであれば、こちらの方が入手しやすいです。「五十一話集」が目的なら「妖精族〜」か創土社版「ペガーナの神々」ぐらいしかないですが……

 追記:2005/11に復刊!この機会に入手しましょう。

「影の谷年代記」 月刊ペン社(妖精文庫)
「影の谷物語」 ちくま文庫
 この2冊は同じ本の翻訳(単に改題しているだけ)ですが、個人的には妖精文庫版の方が見つけやすいように思います。また図書館にある事が多いようです。知らないと勘違いしそうなんで一言。「妖精文庫」とは言ってもサイズは一般書籍サイズです。

Level3

 この辺りになると、ダンセイニ作品をある程度読み込んで慣れている人向けになってきます。
 また古本での価格はよくわかりませんが、そんなに高い値段ではない事が多いです。ただし……非常に見つけにくいです。

「魔法の国の旅人」ハヤカワ文庫FT
 短編集、というかジョーキンズの話をまとめた本。
 ダンセイニの代表作の1つだが、マイナーな方かもしれない。海外ではメジャーなアンソロジー・ピースらしいんだけど……

 追記:2003年10月31日に特別重版。この機会に入手しましょう。

「牧神の祝福」 月刊ペン社(妖精文庫)
 恐らくダンセイニ作品の中では人を選ぶ内容かもしれない。古本自体見かけないと思うので、図書館を探した方がいいかも。

Level4

 この辺りになるとほとんど趣味の世界だな……図書館をあたるべし。

 「バブルクンドの没落」 研究社
 昭和初期に出ていた、ダンセイニの短編の原文と翻訳、解説を内容とした本。正確には英語の勉強の為の本だが。
 ごく一部の図書館が所蔵しているので、興味があったら探してみては?(ただし存在自体が貴重な本なので扱いは丁寧に!)

 「ダンセニイ戯曲全集」 警醒社書店
 松村みね子(片山廣子)が大正時代に翻訳した本の方で、これを現代かなに改めたのがLevel1で挙げた「ダンセイニ戯曲集」です。
 例えば、国会図書館にてマイクロフィルムを閲覧する事が出来ます。
 また大阪府立図書館にもあり、こちらは国会図書館とは違って実物を見ることができるとのことです。ただ、『問題は、カバーがなく、しかも「女王の敵」がまるごと切り取られているという……』との事です。

 その他、「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」など古いミステリー系の雑誌でいくつかの短編が翻訳されており、いくつかは現在も単行本未収録だったりします。邦訳目録を参考に古本・図書館を探すとかしてください。

 ここからは洋書について。
 なお、Wildside Press(Lightning Source)社からもいくつか新刊が出ていますが、こちらは原文から改変している部分があったりするので、「単にテキストが読めればいい」という人でなければあまりお薦めしたくないのが正直なところです。そういう訳でここではW社及びL社の本は敢えて無視しています。(それに、値段も高めだし……(汗))

Level1

 ここで挙げている本はamazonでも買えるので入手性が良いです。

「The King of Elfland's Daughter」(エルフランドの王女)
「The Charwoman's Shadow」(魔法使いの弟子)
 共にDel Rey Impact Book。

「Time and the Gods」
 ここで挙げているのはGreat Britain 2000(Millennium UK)の方。
 ダンセイニ作品でも特に重要な初期短編集の5冊がまとめて収録されているし、原文に忠実な内容です。挿絵はありませんが。

「Wonder Tales」
 これはDover社が出している短編集。「The Book of Wonder」と「Tales of Wonder」をまとめた物。
 例によって表紙以外に挿絵はないし、上記の「Time and the Gods」ほどコストパフォーマンスは高くないが、その代わりこの本では序文も収録している。もちろん題名の通りイギリス版を元にしてるので、序文はイギリス版です。

「The Hashish man and other stories」
 Manic D Press社から出ている短編集。「五十一話集」の掌編もいくつか収録されているし、全体として文章が短めの短編が多いので読みやすいと思います。やや古いけど、入手性はまだ良いようです。

「In the Land of Time and Other Fantasy Tales」
 PENGUIN CLASSICSから出ているもので、「ペガーナの神々」を始め、英雄譚やジョーキンズ、「二壜のソース」なども収録しています。
 何よりペンギン・ブックスから出たという事で、入手しやすい事が一番かも。

 また、書籍ではありませんが、Webにはテキストがいくつか出ていますので、検索すればいくつか見つかるはずです。

Level2

「Les Dieux de Pegana」(ペガーナの神々)
「Le Temps et les Dieux」(時と神々)
 Terre de Brume社が出している、フランス語版。
 なんでいきなりフランス語版?と思うでしょうが、実は「挿絵が全部収録されている」というのが大きいのです(掲載サイズは大きいし、画質もいい方です)。それに近年に発行されたので、入手性も良いです。問題は入手方法、かなあ……(私は直接フランスの書店に注文しましたが)。
 フランス本の入手は、例えばamazon.frFNACがあります(要クレジットカード・いくらかのフランス語の知識)。

 こちらはamazon.comで買った方がいい本なので(amazon.co.jpだとちょっと遅かったりする)Level2になってます。

「Tales of War」SATTRE Press(戦争小説集)
 いわゆる「戦争小説集」。翻訳は今のところ同人誌「PEGANA LOST」及び、同じ訳者のWebサイト「ダンセイニ翻訳の部屋」でしか読めません。

「The Pleasures of a Futuroscope」Hippocampus press
 ダンセイニの遺作でかつ、今まで未出版だった作品です。
 長編小説ですが、興味があれば読んでみては?
 2003年出版なので入手は容易だと思います。

Level3

 ダンセイニ作品が入っていて良い本、となるとやっぱ古本になるんだよね……

「Beyond the Fields We Know」
「At the Edge of the World」
「Over the Hills and Far Away」
 リン・カーターが編集した短編集で、「バランタイン・アダルト・ファンタジー」の中の本。
 古本としてはそんなに高くない方ですが、その割には良作がまとまっているのでそれなりにお薦め。

Level4

 これ以上となるともう完全に「趣味の世界」すなわち「さよーならー」でありその意味するところは「後は自力でやれ」という事ですな結局。
 第一、後は「原書」とか「初版本」とか「アメリカ版」だの「イギリス版」だのそういう世界になっていくしかないし。

「LORD DUNSANY:A Bibliography」The Scarecrow Press
 いわゆるダンセイニ本の書誌。ただし間違いもいくつかある(各国語訳の情報にほんの少し間違いがあるそうです)との事なので注意。それに最近の情報は入ってない(当たり前と言えば当たり前)。

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Last Update:09/07/2015 19:39

うしとら
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