黄飛鴻之二 男兒富自強
時は清時代の末期、西洋の文化の波が訪れ始めた頃の中国・・・
西大后の悪政により国は様々に乱れ、東洋と西洋の文化が入り交じり、狂信的な国粋主義者なども入り乱れた、良くも悪くも混沌としていたその国で、常に民衆を助ける為に戦う者がいた。
名を黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)、実在の英雄である・・・
彼は武道にも秀でていて、その無数に放つ蹴りは、あまりの速さに「無影脚」と称されたほどである。
さて、リー・リン・チェイと聞けば古くからの香港映画ファンなら「少林寺」「阿羅漢(あらはん)」などを思い浮かべるでしょう。あの頃はまだ少年にもかかわらず素晴らしい体術を劇中で披露しましたが、それっきり映画には出てこなく、名前を忘れかけていた人もいるかと思います。
しかし長年たって、彼はひょっこりと映画界に戻ってきました。久々の大作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズを引っ提げて!!監督は「香港のスビルパーク」とも言われる「ツイ・ハーク」、内容は中国ではもう知らない人はいないほど有名な「黄飛鴻」物となると・・・。
今ではすっかり青年ですが、その体術はますます優れた物になっています。
で、シリーズ第2作にして、一番脂の乗っているこの「天地大乱」はどこを見ても見応えのあるアクションだらけ。
まず、「白蓮教」という狂信的な国粋主義者によって行われる無差別的な外国人の排除運動に対して、その教祖と戦いを繰り広げるし、その戦いは舞台も千変万化。香港映画特有のロープワークも手伝って、非常にスピーディなアクションになっています。
そして次は提督が反乱分子たちの名簿を押収しようとするのを阻止する為に、身長よりもずっと長い棒を使っての戦いを繰り広げたり・・・。
武器も舞台も実にバラエティーに富んでいるし、何回か見ているたびに新しい発見(「ここがこう動いている」など)があったりしてかなり楽しめる娯楽作品です。
今ではビデオレンタル以外で見る事は難しい(特にビデオは高い・・・1万超えてるし)のですが、ビデオレンタルならある(かも)しれないので、見つけたら借りても損はないでしょうね。
ついでに、主題歌はジャッキー・チェンです(笑)
で、シリーズ2作目という事は当然他にも「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」はあります。とりあえず・・・1作目の「天地黎明」と3作目の「獅王争覇」について。
「天地黎明」(黄飛鴻)
列強の影の見えてきた時代の中国。数年ぶりに帰国してきた留学生のいとこを迎えに行った黄飛鴻は、とある国の陰謀に巻き込まれかけるが・・・。
「天地争覇」(黄飛鴻之三 獅王争覇)
あと少しで獅子舞を使った祭りが始まる頃の町で、不穏な動きが出ていた。優勝をもくろむ一派が、他の参加者たちに圧力をかけたり暴力を振るっていたのだった。卑劣な手を使う事に怒った黄飛鴻は自分も祭りに参加するが、相手も当然様々な手を使ってくる・・・。
ちなみに「獅王争覇」の名前は「機動武道伝Gガンダム」の「グランドガンダム」の名前の元ネタでもあります(笑)
でも全部、ただのアクションではなく、当時の中国の事情、情勢などを知っているとより楽しめる作品です。特に当時の中国が変わっていく情勢に耐えられず外国に対する排除行動に出る者たちの悲しい運命や、新しい「力」に対する抵抗とかのあたりは幕末時代とかなり似ているので、その時代の好きな人にはかなり楽しめるでしょうね。
何はともあれ、最初に見るなら「天地大乱」が一番親しみやすい内容(そんなに固い話でもないし、話のバランスがうまくとれている)なのでいいのでは。
へ?「ワンス〜は5作あるじゃない」って?実は4作目からは、リー・リン・チェイが降板しているんでまだ見ていないんです。でもこちらも評判は割といいようですね。
現在はDVDが出ているので、それが入手しやすいです。ただ、字幕はビデオ/LD、DVD(2007年現在3種出ています)のそれぞれで字幕が多少違うので、複数のバージョンを見ておく事をお薦めします。片方の字幕では翻訳されてないセリフが片方では出てたり、その逆だったりする場面が多いので。