ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

監督:ジョージ・A・ロメロ


NIGHT OF THE LIVING DEAD

生ける屍の夜

 バーブラと兄のジョニーは伯父の墓参りに向かっていた。墓参りの途中に、ジョニーはバーブラに怪談をして怖がらせようとし、墓場に来た男を怪物に見立てて話をして脅かしていた。
 すると、男がバーブラたちの方に近づいてきたので、慌てたジョニーは逃げようとするが、バーブラは兄の言った事を男に謝罪しようと近づくと、男はいきなり襲いかかってきた。
 ジョニーはバーブラを助けようとして男ともみあい、墓石に頭を打ってしまう。バーブラは必死で逃げようとしたが、車が事故を起こしてしまい、近くにある一軒家に逃げ込む事になったが、男はなおもバーブラを探し回っていた。
 夕方になろうとしていた時に、黒人のベンも逃げ込んできて、素早く家の入り口などを塞ごうとする。ベンの話とラジオ放送の話をまとめると、こういう事情になっているらしい。つまり、死体がみんな生き返り、生きている人を襲うようになったというのだ。
 その間にも、死者たちはみんな一軒家を目指して集まってくる。家の中にいる生きた人の肉を得る為に。
 そして夜がやってきた。生ける屍の夜が・・・

白黒だけど、怖い!

 この映画は、今で言えば「ゾンビ物」の走りであり、今主流になっている「人を襲い、人肉を食べる」「頭を潰さないと倒せない」ゾンビの原型になっている作品です。
 ここで少し解説しますが、「ナイト〜」には旧版の白黒の物、そしてリメイク版のカラー版があります。後者は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記」というタイトルで出ているようです。さらに旧版にも3種あって、それぞれいくつか違いがあるのだそうです。今回私が見たのは、旧版の物で、現在LDとDVDで出ている物です。

 そして、この映画は怖いです。白黒で、その後に作られたホラー映画のように「血がいっぱい出てくる(スプラッタ)」とか、「直接人を殺すシーンを出す」とかそういう描写がほとんどまったくと言ってもいいぐらいに少ないのに、下手なホラー映画よりも怖いんです。さらに付け加えるなら、下手なサスペンスよりもかなり緊張します。
 その恐怖とはいわゆる「見た目の怖さ」ではなく、雰囲気や、劇中の大半を占める「緊張感」からくるものなのですが、これがもう怖くて怖くて。
 どういう事か説明しにくいんだけど・・・言ってみれば「じわじわ迫ってくる恐怖」といった物でしょうか。回りはみんな死者たちに囲まれている。死者たちはまだ家に入り込む気配はないけれど、それも時間の問題。果たして生き延びる方法はあるのか・・・?そういう絶望的な状況が少しずつ進行していく怖さなんです。
 さらに「白黒」のおかげで「夜」の陰影がより際立っているのも「怖い」の理由ではあります。

命と命の確執

 そして、「ナイト〜」を占めるもう一つの要素は、一軒家に逃げ延びた人たちの確執です。
 詳しく書くのは避けますが、簡単に言えば地下室に逃げた一家と、1階に逃げて1階を守っている人との確執です。片方は「地下室なら安全だ」と言い、片方は「ここ(1階)を守れば安全だ」とそれぞれの意見はよく対立します。しかも片方は「私は家族を守るんだ」という意志を頑固なまでに貫こうとして、他の人と協調を取りたがりません。早い話が「死ぬのならお前たちだけで死ね、俺は家族を守れればいい」って事ですね。
 もちろん、この展開は後々まで尾を引く事になります。そして終末は・・・

 この2つの要素が「ナイト〜」の緊張感と、恐怖をうまく作り出していると思います。

「ナイト〜」の特徴

 ってほどの事でもないんですが・・・
 この映画を見ると「誰が主人公?」と思ってしまうかもしれません。
 一般的には、主人公は「始めから出演している登場人物」って事になるんですよね。これからするとバーブラが主人公という事になります。
 しかし、実際には多くの場面で一番活躍している、というか出番が多いのは途中から出てくる黒人のベンなんですよね。しかもバーブラは場面のほとんどで動かないし、あまりしゃべらない。となると「バーブラが主人公」とする事に疑問を覚える人もいるかもしれません。私も「主人公はベン」だと思います。実際、バーブラに対しては「お前少しは動けよぉ!」って見ていてイライラするし。
 これ(どっちが主人公か)に対する答えを私は知らないですが、聞かない方がいいかもしれません(苦笑)

 もう一つは、知らない人には意外と思われるかもしれない事です。
 実は「ナイト〜」に出てくる怪物は「生ける屍(LIVING DEAD)」であって、いわゆる「ゾンビ」ではありません。劇中にも「ゾンビ」という単語は一切出てこなく、「生ける屍(LIVING DEAD)」「やつら」と表現されているだけです。「生き返った死者」を「ゾンビ」と表現するようになったのはその後に作られた「ゾンビ物」からだと思います(多分「ゾンビ」から定着したんだと思う)。
 さらに、この怪物は道具を使えます。「使える」とは言っても、ただ単に石を持って攻撃してくるとか、棒を持って攻撃してくるとか、そういった程度なんですけど。その後に作られたゾンビのイメージしか知らないと意外に思われるかもしれません。ついでに動きも後年に作られたゾンビ物に比べると、割と早い方です(とはいっても、走ったりする訳じゃありませんよ。あくまで他の作品に比べると、の話)。

メニューへ戻る


 いやぁ、本当に怖かったです。多分二度と見ないです(苦笑)