朱紅い雫
英雄伝説IV

ファルコム RPG Win


The Legend of Heroes IV A Tear of Vermilion

☆エル・フィルディン−3つの神の眠る大地

 神々の眠る大地。
 その昔、光のバルドゥスと闇のオクトゥムがあった。
 それらは相反しながらも、互いに不可分の存在でもあった。
 その傍らで、精霊を統べる神ドゥルガーも現れた。
 ドゥルガーは、大地に生命と人とを創り、守っていった。
 そうして、大地には人が繁栄していくことになった。

 しかし増えすぎた人の営みは、やがては秩序と、神々の存在をも歪ませていった。
 そうしてドゥルガーの調停もむなしくバルドゥスとオクトゥムが争うこととなる。
 その争いはバルドゥスがオクトゥムを封じる事で決着をみた。
 しかし互いに不可分の存在がために、バルドゥスの躯も砕け散ってしまうこととなる。
 バルドゥスは砕け散った躯をドゥルガーに託し、やがてはドゥルガーも永い眠りについた。

 それから幾星霜・・・

 かつての神々の眠る大地は、エル・フィルディンと呼ばれるようになっていた。
 今では、その大陸を舞台にして、2つの勢力が争い続けていた。
 光を信奉するバルドゥス教会。
 闇を崇拝するオクトゥムの使徒。
 人々は未だ、神々という運命に囚われたままであった。

 時にガガーブ歴937年。
 1人の少年が、幼い時に別れ別れになった妹を探す旅に出る事から始まる−
 この物語は、最後の神々と、人々の物語である。

☆やっと出たリメイク版

 「やっと」・・・本当にやっと出た、という感じですね。
 この「朱紅い雫」は、PSに移植されたのを除けば、いわゆる「英雄伝説」シリーズの中でも比較的マイナーな位置付けにありましたから(「英雄伝説2」もシリーズの中ではマイナーだけど・・・)。これはPC-98でも割と後期に出た事、それ以降リメイクがなかった事が主な理由でしょう。
 それにPC-98版の「朱紅い雫」(以下「旧版」と記す)は、シナリオ的には重みもあり、結構好きは好きだけれども、ゲームバランスが結構きつい為に1回クリアしたら再度プレイする気力がわかなかったのも事実です。そういうバランスがどうリメイクされるか、に興味があったんですが・・・

 結論から言えば、もう別物になってますね。シナリオはかなり変更が入っているし、システムは根っこから変わっているし。
 シナリオの変更に関しては言いたい事はあるのだけど、ネタバレに直結しているので「ネタバレ版」の方に書くこととします。そういう訳でこちらでは主に「遊んだ感想」を中心に書いていきましょう。

☆快適になったシステム

 旧版での最大の不満は、セーブが限定されていた事にあります。
 この関係で序盤から中盤にかけてが結構きつかったので、是非とも改善して欲しかったのですが、さすがに今度はセーブ自体が自由になりましたね。これだけでもかなり改善されたと思います。

 その他には、戦闘シーンの時のキャラアニメの出し方が変更になって、テンポよくなったのがいいですね。
 旧版だと範囲攻撃をして複数の敵と戦闘している場合、1キャラごとにいちいち表示して、「ああっもうわかったから早く次に行ってー!!」という感じだったので、今回の「アニメは1キャラのみで、他はダメージだけ表示」という表示にしたのは正解でしょう。おかげで敵に範囲攻撃された時にも、回復を忘れてしまうキャラが減りましたし(旧作ではアニメのおかげでちょっとわかりにくかった)。
 この2点の改良だけでも、充分にいい改善だと思いますね。

☆冒険者ギルドなど

 他に、冒険者ギルドも変わりましたね。
 旧作では「オープンシナリオ」という事で、自分の好きな仕事を選べるという利点があり、これはこれで好きでした。ただ、仕事(バイト)に明け暮れて本筋を忘れるという事もたまにあったり・・・(苦笑)
 また、どうしたって仕事の方が中心になる為に、本筋の方よりも仕事の方にウェイトが置かれている感があったのも事実です。これが良いか悪いかは人それぞれでしょうけど、少々気になる点ではありました。
 念のために書いておきますが、私は旧作の「冒険日誌」といった感じも好きですよ。それに中盤からは多少本筋にウェイトが移っていくので、テンポも次第にそこそこ良くなってくるし。

 それがリメイク版では、冒険者ギルド自体がイベントに組み込まれました。
 その関係で、「好きな仕事を選ぶ」という事が出来なくなった代わりに、「物語としてのテンポ」が良くなりました。
 これは良し悪し、と言うか・・・全面的に「良い」とは言えないけれども、必ずしも改悪と言い切れない微妙なところだと思います。最終的には好みの問題になるし・・・ただ、私は「これはこれで」いいと思うんですけどね。全部が賛成ではないけど。
 あとちょっとした事ですが、「情報屋」がなくなったのは少し淋しいかも。もっとも、旧版でもあんまり使わなかった(というか役に立つ情報が少ない)ような気もするのですが・・・せめて何かの形で活かして欲しかった気もします。

☆気になるバランス変更は?

 さて、肝心のゲームバランスですが・・・これは完全に変更されて、簡単に言えば「ヌルく」なってますね。お金はすぐに貯まるようになったし、敵の強さもそこそこに調整されましたし。これは序盤に関してはこれでも良かったけど、中盤辺りのバランスがかなり易しい点で少し物足りなかったかな?
 後半は結構厳しい(それでも旧版よりは易しいですが・・・というか旧版がきついんだが)んで、それなりに緊張感はありましたが。
 それと、戦闘シーンのシステムは「海の檻歌」の戦闘システムをさらに改良しているので、テンポがますます良くなっています。適度にプレイヤーの介入の余地があるけど、AUTOでも結構戦ってくれる、という感じ。
 ただ、これが「ヌルい」という思いに拍車をかけているのも事実ですが・・・

 また、これに関連しますが、武器屋の武器の品揃えが旧版のように「どこでも売っている武器は大抵一緒」ではなく、多くのRPGのように「(周辺の地域の)敵の強さに合わせた武器」という感じに変更されているのはちょっと残念でした。
 しかしよく考えてみれば、いきなり強い武器を持たせる事が出来るようにすると、ますます「ヌルい」バランスの度合いが強まってしまうとも思うので難しいところです。特に今回は、お金の貯まるスピードが上がっているからなぁ。
 この辺りのバランスの取り方というと、「ザナドゥ」などのように武器などにも経験値を付けるぐらいしか思い付きません。この点に関してはこの先もっとうまいアイデアが出てきて欲しいところです(これはファルコム以外のソフトハウスにも頑張って欲しいところ)。

☆今度は歩きやすいです

 旧作で不満の多かった「使い回しのマップ」は、リメイク版では徹底的に修正が入って地域色が出るようになりました。この変更はとても嬉しいです。旧作だとどうしても飽きがきてしまうマップ構成でしたから・・・
 それに旧作で、一部の街などでどうしても高低差がわかりにくかった所が、今回はわかりやすくなってますね。こういう細かいけど、遊びやすさを優先した変更は歓迎です。
 ともかく、今回はかなり歩きやすくなってますね。旧作にもあった「ワープ」に似た手段は今回も終盤近くにならないと使えないけど、それがあまり気にならない程度になりましたし。

 ただ、歩きやすいと感じる理由は「シナリオの変更」にもあるのですけどね。
 つまり・・・旧作ではオープンシナリオの関係で、どうしても街の中とか街から街への移動を繰り返す必要がありました。それがリメイク版ではイベントの都合に合わせた程度に減っているんで、「歩き通し」という印象が減っているんですね。

 全体としては、旧作と比較した場合、「遊びやすさ」とテンポの改良を中心に作りなおした「新作」、という表現が一番近いでしょう。
 この事は、「旧作を遊んでない人にも遊びやすい」という事であるし、旧作を遊んでいる人にも別の視点で物語を見せてくれる−という感じでしょうね。そういう意味では、私もリメイク版も好きです。
 ただ、シナリオの変更が気にならない訳でもないですが、これは前にも書いたように「ネタバレ版」の方で書く事にします。
 とりあえず、ここではリメイクが成功しているか失敗しているか、と言えば「全体としてはうまく行っている」とだけ書いておくに留めておきます。

☆個性が強くなったサブキャラたち

 個人的に一番嬉しい変更は、サブキャラたちの出番が増えた事ですね。
 旧版だと、自由度が高い代わりに、サブキャラたちの出番がどうしても少なかったりするし、パーティを固定してしまうとその傾向がさらに強くなってしまいましたから。反面、「このキャラはこういう感じなんだろうなぁ」と想像する事も出来たのですけどね。
 それが今度は頻繁にパーティに入ったり出たりするようになったし、サブキャラごとにイベントが1、2は起こるようになっているので「このキャラいたっけ・・・?」という事が減っています。
 ・・・というか、私自身「マーティ」の存在を覚えていなかったしねぇ(苦笑)ちなみにリメイク版だとミューズ(お嬢様)とよくペアになるキャラ。旧作だと、あんまり取り柄がないって印象でしたから、どうしても忘れてしまうんですよ。
 そういう不幸なキャラもリメイク版では目立てるようになった反面、今度は少々(?)イメージが変わったり(ダグラス、あんなに明るいキャラだっけ?)してしまったキャラもいますが・・・アルチェムなんか設定自体変わってしまったみたいだし(元々がどういう設定なのかは忘れましたが)。
 賛否両論はあるでしょうけど、少なくとも旧作ではマイナーだったキャラにもスポットが当たるようになったのは認めていいんじゃないかと。

 何だかんだと言いながらも、脇を流れるシナリオと本筋との関係もいくらか強調されるようになった点は結構好き。特にクライマックス辺りでの演出はね。旧版だと、この演出に当たる物はエンディングの最後辺りでしか出てなかったから。

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 文中でも書いたけど、最終的には好みの問題で判断が割れる変更点が多いです。
 それと、全体としての印象は「ガガーブ3部作の1作になった」という感じ。旧作はどちらかというと「ガガーブ3部作?何それ?」という感じで、結構独立している印象でしたね。どちらが良いかは私には何とも言えませんが(どっちの立て方も好きなので)。
 不満点は、主にシナリオの変更に関連する要素の方が多いので、ネタバレ版の方をどうぞ。
 ・・・というか、システム的には「改善」の方が多いと思うからこうなるんだけどね。