いわゆる、「横田AVG」「横田作品」という呼ばれ方があります。これは正式な呼び名ではなく、キャラデザなどで横田守が関わっているゲームをそう呼ぶ事が多いのですが・・・
今までに出たゲームとしては、PCでは「ELYSION(エリュシオン)」など、コンシューマでは「慟哭 そして・・・」や「RIVIVE〜蘇生〜」(これはキャラデザは横田ではありません)と、多くがミステリー仕立てのAVGになっているのが特徴でしょう。
そしてDCで発表されたのがこの「火焔聖母」です。
今回もキャラデザは横田守、そして製作は横田の会社である「スタジオ・ライン」社。となれば、「慟哭」などを楽しんだ身としては手を出さないわけにはいきません・・・ということで、遊んでみました。
さて、気になるお話は、主人公がある街に向かうところから始まります。
ここで「お約束」でそのまますんなりと街に入れなくなってしまい、やむを得ず主人公は自力で山を越えて、街の中に入っていきました。そこでちょっとした事件が起こり、その結果として人体発火現象を目撃してしまいます。
・・・ということで、どうやら人体発火現象が物語の中心になりそうな展開。
その後も主人公は学校生活を過ごしていく中、様々な事件に出くわします。その中でだんだんと見えてくる、新旧の街の姿、争い。その中にあるものとは?
とまあ、ちょっとしたミステリー物みたいな展開ではあるけど、これが結構おもしろかったりします。
というのも、「火焔聖母」の話の進め方が、ちょっと変わった構成になっているのです。
「人の話はちゃんと聞きましょう」−−と、子供の頃に一度は言われた事があると思います(え?ないって?・・・今言ったんだから聞いておくように)。実は、この言葉が「火焔聖母」の攻略には必要不可欠なんですね。
というのは、「火焔聖母」の場合、普通のAVGとは違い、重要な言葉(イベント)を聞かない(起こさない)でも、そのまま次の章に進めてしまうのです。ところが、途中のいくつかの章は、その章に入る条件が「その章でのヒロインとある程度関係を持っている(親しい)こと」なのです。
もう少し詳しく書くと、条件を満たしていない状態ではその章そのものがすっ飛ばされる(!)のです。その代わり、ダイジェストで大まかなあらすじが日記の形として出てくるのですが、当然ながらこの状態では「何があったの?」といった情報がかなり伏せられてしまいます。
だから、ちゃんとしたエンディングを迎えたいならばちゃんと攻略していかないといけないようになっています。
もっとも、「火焔聖母」の場合、それがうまく出来ているかというと、ちょっと無理が感じられました。というのは、すっ飛ばされたシナリオの後日談は普通に出てくるんで、主人公たちはその事件を「知っている」のですね。でもプレイヤーには何のことだかわからない(もちろん順番に見てきてる場合は理解できる)・・・という展開になるんですね。この辺りのフォローの方法がちょっと苦しいかな?
でも、この手法はうまく出来ればシナリオの展開の方法が増える訳で、この点はこれからのゲームに期待した方がいいかも・・・とも思います。「火焔聖母」の場合、基本的に一本道だからちょっと苦しかった訳で、途中のパートの変化によって後半も変化していくようなシナリオなら、この手法もうまく使えるかもしれません。
まぁ、こういう内容なので、基本的には「行けるところは全部行って、人とは全部話す」よう行動していくのが一番簡単な攻略かもしれません。
ちなみに話す必要があるのはメインキャラたちぐらいで、その他の生徒たちとはあんまり話す必要はありません。
また、3D迷路ゲームのようなシステムの部分もありますが、ここは不満が多いですね。
例えば、ドアはいちいちボタンを押して開けるのではなく自動で開いて欲しい(教室のドアはボタンを押すのでいいから)。3D迷路シーンでの移動が多いから、いちいちドアの所でボタンを押すのがうざったいです。
また、歩いている時に、「生徒がいます。話しますか?」が出てくるのも結構うざったい・・・というか、出来れば設定で「生徒が出ない」ようにさせて欲しい(繰り返しプレイしてるとかなりうざったいのですよ)。生徒のセリフって基本的に1回聞けば充分なものか、全然ゲームに関係しない(雰囲気の為というのはわかるのだが・・・)ものばかりだから、いちいちキャンセルするのが面倒。
もっとも、途中での「○○との追いかけっこ」での使い方は結構うまいと思ったのですが・・・それまで3D迷路シーンでストレスが結構溜まっていたのが残念。
特に気になるのが、後半での3D迷路シーンは、トラップとその解除がほとんど隣同士で、ただの時間稼ぎみたいに感じるの事ですね。一部のトラップは解き方のヒントがなくて、結局コマンド総当たりで解いてしまったというのも時間稼ぎみたいに感じる理由ですが。この辺りはもう少し追加して欲しかったですね。
なんというか、話もそれなりにはまとまっているんだけど・・・実際問題として、繰り返しプレイするのがちょっと苦痛なのは改善して欲しかったなぁ。この辺、DC撤退の関係で発売を早めたのかな?という印象がしますし。
悪いゲームではないんだけど・・・惹きつける魅力がいまいち弱いというか。女性キャラとの親密度の重要さが、特定のイベントの為だけって印象が強いし(基本的な話の筋は変わらないからね)・・・その代わり、「特定のキャラが中心のシナリオ」と「シナリオを出現させる条件」の使い方が他のゲームとは違っているのはいい試みだったと思う。うまく突き詰められていないのが惜しいところではあるけど。
あとは、まぁ・・・シナリオのあちこちがつっこみどころ山盛りだってのはあえて目をつぶっておきましょう(苦笑)
それなりには良く出来ているんだけどね。「慟哭」などを経験してると物足りなく感じるのも確かだな。もっとも、「慟哭」レベルの難易度をそうそうやりたくもないですが(苦笑)
あと、主人公が片っ端から「謎」の「答え」をペラペラしゃべったりするんで、いわゆる「ミステリー」物とは言っても、「推理」ゲームを期待しない方がいいかと(「EVE」と同じですね)。