「もしかしたら−このテープは裏焼きかもしれない」
「どういう事だ?」
「音の波形が逆になっているかも、って事だよ。写真で言えばネガとポジを反転させたような状態だ。だから『裏焼き』と言ったんだよ」
「それは可能なのか?」
「可能だと思う。今では家で音声編集ソフトで編集も出来るし、音の波形を反転させて録音する事も簡単だろう。ただ、まだ実際にやった訳じゃないからはっきりとはしないが」
「とりあえず、やってみるしかないのか」



「やはり、裏焼きだったか」
「しかし・・・この音・・・なのか?声・・・なのか?なんとも嫌な−いや、むしろおぞましいと言うか・・・本当にこの世のものなのか?」
「そうだな・・・これ以上調べない方がよさそうだな。どうも嫌な予感がする」
 その時、わたしは見た−
 いつのまにか隣にこの世のものと思えぬ姿を持った手が浮かんでいた。その手は私の横をすり抜け、彼の頭に向かっていた。
 彼が振り向いた時、手が彼の頭をわしづかみにし、次の瞬間には−彼の生首が血しぶきをたてながら目の前に落ちていた。そして、隣にいた者も同じように頭を飛ばされ、そして手は私の頭を・・・
 その時、再生機がこのように告げた。
 「−この呪文、異界よりきたる物を呼ぶ呪なり。しかるに、その物、呪を聞きし者を喰らう・・・」