元刑事で、現在はセールスマンをしている主人公のカイル・ハイド。
彼は今度の仕事の関係で、「ホテル・ダスク」に泊まる事になった。
渡された鍵の番号は215号室、部屋の名前は「WISH（希望）」――その部屋に泊まると願い事が叶うという噂があるという。
その夜からホテル・ダスクで様々な出来事が起こり、そしてカイルが最後に知るある事柄とは……
さて「ウィッシュルーム」は、システム的には前作に当たる「アナザーコード 2つの記憶」と基本的に同じシステム。つまり、タッチで移動（十字キーでも移動は出来る）、人と話したりする時はアイコンをタッチしてから、話したい事が出ていればどれかを選択……という感じですね。
なお物語としては「アナザーコード」とのつながりはありません。
「アナザーコード」は舞台がある小さな島、というか洋館での出来事でしたが、今度の「ウィッシュルーム」ではホテル・ダスクでの出来事が主になります。つまり、「ホテル・ダスク」が舞台。
そして今回は昔のAVGの、それもかつてリバーヒルソフトが出していたJ.B.ハロルドシリーズなどのような……つまり、人と会話して、あちこち調べて、が基本となります。（余談ながら、開発のCING社は元リバーヒルソフトのスタッフが中心、というのは割と知られた話）
ここが「アナザーコード」との一番の違いですね。前作では舞台が島の中の洋館を中心にしている為、洋館に仕掛けられたトリックを解いていく事が基本になっている為、人との会話は抑えめになっている印象がありました。それが今回は、仕掛けが抑えめに、逆に人との会話に比重が置かれています。
ここで重要なのは、今回の主人公は先に述べたJ.Bシリーズなどのように探偵や刑事ではなく、あくまで「元刑事のセールスマン」な事です。
……という事で、今回はミステリーとは言っても、主人公が刑事や探偵などではないので、それっぽい行動は厳禁になっています。つまり「無理矢理」が出来なくなっています……いややろうとすれば出来るけど、今回はゲームオーバーがあるから。
この辺はゲームっぽくなったと言えるかもしれません。前作ではゲームオーバーが基本的にない内容でしたから（ただ、前作の場合は、あのシステムに慣れるという意味では、無理にゲームオーバーを入れなくて正解だと思いますが……）。
また、前作でも話の所々や、要所要所で、今まで何が起きたのかをまとめる場面が出てきて、それによって話の整理が出来ましたが、この「まとめ」は当然今回も出てきます。
これは結構有り難い構成でしたね。というのも、プレイヤーも少々混乱してる頃合いにこの「まとめ」が出てくるので、プレイヤーは今までの話を少しずつ整理出来るようになっていますから。ちなみに「まとめ」は選択問題で、プレイヤーが話をちゃんと覚えていれば解けるようになっています。まぁ結局選択問題で、かつどう見ても間違いな答えと正解だけなのでそう悩む必要はありませんが……逆に言えば、ここでプレイヤーも話の整理が出来る訳です。
ところで、いくら刑事や探偵ではないと言っても、そこはミステリーですし、主人公はいろいろな事柄に関わる事になります。
そこで主になるのが他の人との会話。つまり「聞き込み」もしなければならないのですが、これが実に楽しく出来ています。
基本的には聞きたい事柄がある状態の時に、相手の所に行って話をする事になりますが、この最中にはもちろん失敗する（相手を怒らせるなど）とゲームオーバーになってしまいます。ですが、全体的に難易度はそう高くないし、ゲームオーバーの場面の手前からやり直しも出来るのでそう心配する必要はなく、むしろ「どういう反応をするだろうか」という楽しみもあると言えます。
さらに、登場人物たちは物語が進むにつれて明らかになる事柄があったりと様々な要素を持っていて、これも飽きない理由になっています。ただ、解き方（進め方）によっては主人公との関係が微妙に変化する人物もいるので注意が必要ですが。これは致命的ではないものの、その事によって知る（見る）事が出来なくなる話もあったりします（本筋に直接の関係はないが、見逃すのは惜しい話です）。
さてこの物語は、何か大きな事件を解決したりする話ではありません。
その代わりと言っては何ですが、クリアした時には「希望」を見る事が出来る。そういう物語です。
こういう「味」は、特にJ.Bハロルドシリーズや1920シリーズをプレイした事のある人にはお馴染みの味だと思われるかもしれません。実際、私もクリアした時、J.Bシリーズなどをクリアした時のような得も言われぬ感慨を受けました。
これは物語が（これまでの作品と同様に）「人と人」、あるいは「情」の関係で構成されている事が主な理由でしょう。その為大きな事件の解決はないのですが、それぞれの登場人物たちの未来に希望が見える様子には、素直にいい気分になれます。
ちなみに、上の方で書いてある「Hotel Dusk: Room 215」は北米版でのタイトル。
あっちではもっと直接的なタイトルになってる訳ですね。
ちなみに、国内版公式サイトにある「COLUMN:ホテル・ダスクで出会った男」はクリアした後に読むとニヤリとさせられるショート・ストーリーになってます。