ザナドゥ。
「ドラゴンスレイヤーU」として登場するその作品は、当時のゲームの中でも最も完成されたゲームだった。
プレイヤーに課せられた目的はただ一つ、「キングドラゴン」を倒す事だけ。しかし、そこに至るまでの道のりは完全にプレイヤーの好きなように進める。さらに25種ある剣・鎧・盾・魔法・アイテム。それらの組み合わせも完全に自由である。
しかし、よくあるRPGのように高い物が強いとは限らない。それぞれに「経験値」があるので、使いこなしたショートソードの方が買ったばかりのロングソードより強い事もままある。さらにキャラのレベルが低いと強い武器も持つ事自体出来なく、無意味な買い物は身を滅ぼす結果になる。食料の概念もあるので余計金を無駄には使えないし、敵の数も限界があるので「いかにいつ何を買うか」をきちんと考えなければいけない。
これだけでも厳しいのに、鍵に至っては「レベルに応じた値段」になっているので、ますます無意味にレベルアップする事は禁物だし、かといってレベルが低いと次のマップには進めない(アイテムを使えば可能だが、死を覚悟した方がいい場合も・・・)。
つまり、プレイヤーは常に次にする行動を考えておかなければいけない。場合によってはリセットも辞さない(まるでWIZだ)。しかも、いわゆる「ハマリ」もきっちりあるし(アイテムを使えば抜けられるけどね)、今のプレイヤーの大半はクリアできないんじゃないか?と思うほどである。
とくに「カルマ」の概念は今のプレイヤーにはかなりキツいハズ。いつものRPGの感覚でプレイしていては絶対に行き詰まると思う。
これだけの自由度と計算されたシステム・バランスを持ったゲームは、現在にもほとんどないと思う。特にRPGではなおさらだ。ハマリはあるけど、それはプレイヤーの不注意が原因なのがほとんどなのでかまわないだろう(第一、「アイテムを使えば」というのはつまり「アイテムを使い過ぎると」ハマる訳だから・・・)。
で、ここで少し技術的な事を書いてみる。と言っても某誌の受け売り(汗) 当時のパソコンはテープと2Dのディスクがほとんど。しかもメモリは640Kもない物がほとんどだった。カラーも8色がいいところ(多くて16色)。こんな貧弱な環境でも、「ザナドゥ」は下手なアクションよりもキビキビと動く。下手なゲームよりもデータ量は遥かに多いのに、である。その秘密はどこにあるのだろうか?
答えは、意外と簡単である。
まず、プレイヤーキャラは常に画面中央に存在する。そうする事で、プレイヤーキャラの重ね合わせ処理がかなり単純になる(地面は考えなくてもいいので、背景との重ね合わせだけで済む)。さらにマップの構成を全て同じ大きさのブロックとし、さらに背景にはわずか4色程度の同じ色だけで構成する。これによってデータ量はそんなに多くなくなるし、トーンも統一された物になる。ついでにキャラに使う色も限定し、パレットを全て同じ物にする。これでパレットをいじらなくてもよくなる。
こういった細かい事の積み重ねによって、貧弱な環境でもキビキビと動くゲームになったというのは賞賛に値すると思う。現在のゲームはマシンパワーに頼った物も少なくないが、マシンパワーのないマシンでも充分に遊べるようにする・・・そういう考えも、時には必要なのではないだろうか。
ちなみに、オリジナルはもう絶版だが、PC−98で「リバイバルザナドゥ」としてリメイクされている。こちらも要求する環境はほとんどなく、PC−9801VMでも充分に遊べる。
9月にはWinでも「ザナドゥ」が出ますね。基本的に98の「リバイバルザナドゥ」の移植みたいです。