海の檻歌 英雄伝説V

日本ファルコム RPG Win


The Legend of Heroes V A Cagesong of the Ocean

☆水底の民

 「水底の民」。
 彼らは海辺に住み、「メロディー」を自在に操り、独自の繁栄を遂げる。
 しかし−彼らは何処へと姿を消した。
 今では、わずかにその名が遠い過去の夢物語として残るだけである。

 数少ないわずかに残された伝承−「メロディー」。
 完璧で、純粋で、力あるメロディー。
 −しかし、その全貌を知る者もなく、ただ幻と伝えられるのみである。

 偉大なる音楽家レオーネ・フレデリック・リヒター。
 彼が幻のメロディーを再現し、その曲に「水底のメロディー」と名付けたという噂は−
 しかし誰にも真相を確かめられる事なく忘れられていった。

☆ガガーブ

 大地にガガーブが刻まれる以前
 三つの世界が未だひとつであった時代の記憶は、
 既に人々にない。
 大地に残ったのは罪の傷痕
 人はいつから罪を背負ったのだろう?

 いわゆる「第2期英雄伝説シリーズ」、そして「ガガーブ三部作」完結編として登場した「海の檻歌 英雄伝説V」。
 今回の舞台は、時代的には「朱紅い雫(IV)」の後、「白き魔女(III)」の前という関係になっており、地理的にはヴェルトルーナは「大蛇の背骨」を挟んでティラスイールの南に位置する。
 となれば、「白き魔女」「朱紅い雫」との間接的なつながりを期待するなという方が無理な相談であるし、当然少なからず関係してくる・・・のだが、それは自分の目で確かめた方がずっと楽しめるだろう。
 それに、「海の檻歌」は確かに「ガガーブ三部作」の一つなのだが、その内容はどちらかというと「白き魔女」に近い。システム的にも、そして話の作りも。だから「白き魔女」をプレイした人なら割合「すっ」と馴染めるはず。実際雰囲気もかなり明るくなっているし。

 特に、「白き魔女」「朱紅い雫」をプレイしている人なら馴染みのある、1つの共通する単語−"ガガーブ"
 そう、「大地の裂け目」ガガーブ。「ガガーブ歴」に代表されるように、ガガーブと共に時間は流れていった。そしてついに、ガガーブ「そのもの」にまつわる話がやっと登場するシーンには、見ていてぞくぞくさせられる(このシーンは是非見て欲しい。本当に見事なシーンだから)。

☆音楽が身近な世界−ヴェルトルーナ

 ところで「海の檻歌」では、主人公のフォルトと幼なじみのウーナは、祖父のマクベインと犬のジャンという3人と1匹という組み合わせで、マクベイン一座としてヴェルトルーナ中を旅し、演奏して回る、いわば「巡業旅行」に出る事になる。
 その目的は音楽家レオーネが各地のあちこちに密かに封印した「共鳴石」−全部集めれば、「水底のメロディー」を再現出来るという−を集めて、「水底のメロディー」を奏でる事。それがマクベインの夢であったという。という訳で、当然ながら多くの場面で音楽が重要なキーとして扱われているのだが、これが実に楽しい。

 というのも、音楽が時には重要な攻撃方法だったり、あるいは戦闘の補助をしてくれたり、ある時には謎解きに使ったり−と非常に様々な面を持っているし、もちろんイベントでも音楽がメインになってくる。
 まあこれは「演奏家」という立場からも当然なのだが・・・しかし本当に楽しそうに演奏してくれるし、演奏を始めると右下に曲名と奏者名が出てくる演出が気持ちいい。さらに視覚的にも演出が見事で、ついつい引き込まれてしまった。
 今まで「音楽」「歌」が効果的に使われているRPGというと、それなりにはあるのだが、「海の檻歌」ほど密接な関係ではなかった(密接な関係のあるRPGもなくはないが、いかんせんマイナーすぎたというのが実情)。そういう意味でも、見所の多い内容である。

 そして、マクベイン一座の旅はいろいろな事件に出会ったり、巻き込まれたり、と実に飽きさせない展開になっているし、1章1章が結構なボリュームになっている。
 しかも、それぞれの章のタイトルがまた「うまい」付け方をしていて、それぞれのタイトルの意味が最後で明らかになる時には思わず唸らされてしまうほどである。しかも、ここでも音楽がテーマになっていたりするし。

☆戦闘も飽きさせない

 また、「海の檻歌」は実にかなり飽きにくいような作りになっている。その工夫の一つは戦闘シーンにも見られる。
 というのは、「白き魔女」ではほとんどの戦闘が放っておいても勝手に終わったのに対し、「海の檻歌」ではプレイヤーが常に気を配って、適切な指示をしてやらないと勝てないようなバランスになっている。このおかげで戦闘には多少時間がかかる時もあるが、決して無駄な戦闘と思いにくいのがいい。
 さらに敵とのエンカウントの法則は「白き魔女」のを拡張して、最初の戦いは避けられないが、2回目以降はアイテムを利用してエンカウントするかどうかを調整出来るようになっている。
 だからレベルアップしたい時にはエンカウント率を上げるアイテムを装備すればいいし、逆に先に進みたいならエンカウント率を下げるアイテムを装備すればよい。これはこれでいい仕組みだし、実際うまく活用すればゲーム展開が楽しくなってくる。
 ただ、時々プレイヤーの指示を有効/無効にするタイミングがシビアな時があり、このおかげで少々イライラするけどそれも許容範囲だと思うので問題ないでしょう(ラスボス戦では勘弁して欲しかったけど・・・)。

 それにいわゆる「ボス戦」に相当するシーンもいくつかあるけど、これも「敵の攻略法(弱点)を探す」楽しみがあっていいです。この楽しみは「グランディア」とも共通するものがあります。
 最初のうちこそ戦闘は少々キツイものの、次第に「出来る事」が増えてくるにつれて、戦闘そのものも楽しくなるのは見事です。

☆世界を巡る旅人

 と、「海の檻歌」は先にも述べたとおり「ガガーブ三部作」の完結編として作られています。
 その為「白き魔女」「朱紅い雫」との関係が強化されているのですが、基本的にはそれぞれの物語への干渉はありません(主題は完全に独立しているという事)。
 ですが、前作、特に「白き魔女」では語られる事のなかった物語への補足があるので、出来ればシリーズ全部を通して遊ぶのが一番でしょうね。

 という事で、もちろん「白き魔女」「朱紅い雫」をプレイした事のある人にはおそらく期待通りに、「あの人」とか「あの人」とかその他大勢いっぱい出てきます(名前だけでもネタバレなので書きません)。こういうシーンを見るのは感動ですね。しかもきちんと話に関わってくるし。

 とりあえず、「白き魔女」などをやっていた方がかなり楽しめるのは確かですが、「海の檻歌」からいきなり始めてもあまり問題はないでしょうね。ただし、前作までの「答え」らしきものがあちこちにあったりするので微妙なところですか。

☆巧みな演出

 また、「白き魔女」「朱紅い雫」がPC-98ソフトであるのに対し、「海の檻歌」ではWindowsソフトになった為かあらゆる面で、非常にグレードアップしています。
 音楽は判断出来ませんが(聞こえないんだもん)、少なくともビジュアル面でもかなりパワーアップしています。
 とにかくPC-98(というか、DOSですね)でやろうとしたら「出来ないことはないだろうけど、もの凄く厳しい」物から「こりゃPC-98じゃ無理だわ」って物まで様々。しかも一つ一つ丁寧に作られているので、見ているだけでもかなり楽しめます。

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 ここからは個人的な感想を。
 ちくしょー耳が聞こえないのがメチャ恨めしいっっっっ!!
 「水底のメロディー」「旅人たちの前奏曲」他、俺も聞きてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
 ・・・サントラCD出たら絶対買います。だから、出してね >ファルコム様&キングレコード様
 ・・・聞こえないけど(涙)

 追加:現在ではファルコムレベールで「海の檻歌」サントラが出ています。このCDはファルコムの通販や、一部の店で買う事が出来ます。2枚に分けて売られているので注意。