この世の果てで恋を唄う少女
YU−NO

エルフ  AVG  PC−9801


YU-NO:A girl who chants love at the bound of this world.

☆「スイッチオン、そして・・・」

 スイッチオン、「この世の果てで恋を唄う少女 YU−NO(以下「YU−NO」)」を起動。そしてオープニングデモ・・・

 この時点で既に、私は「YU−NO」の世界に引き込まれていた。
 オープニングの時点でハマれるゲームなんて、そうお目にかかれるもんじゃない。「イース2」「ポリスノーツ」などもオープニングでハマったが、「YU−NO」と違う点が一つある。それは『文字(音声)が一切出ない』ということ。プレイヤーの想像力だけで勝負しているとも言える。「それでハマらせるんだから内容も凄かろう」という声が聞こえてきそうだが、はっきり言う。

  「PC−98ユーザーは一回は『YU−NO』をやるべきだ!!(断言)」

 それだけの価値はある。いや、PCユーザーだけが得られる特権であるHシーンを抜きにしても、プレイする価値はある。そこまで言うほど、このゲームにハマらせたのは何なのか。これから、それについて語りたい。なお、ストーリーには触れない。

☆「YU−NO」における「時間」

 数多くあるAVGで、ここまで「時間」という概念をはっきり感じられるゲームはあるのだろうか?そう言いたくなるほど、このゲームでは「時間」の流れが実際に流れているような錯覚に陥らせてくれる。実際には目には見えないし、リアルタイムでもないのに、何故「時間」を感じるのだろうか?
 確かに、キャラたちのセリフにも「今日の夕方よ・・・」といったような「時間」を感じさせる物はある。しかしそれらはあくまでキャラのセリフであって、プレイヤーの感じる「時間」ではない。では、何から感じるのだろうか。それは「A.D.M.S.」システムによるものが大きいのではないか。このシステムによって、プレイヤーは今存在している時間軸、空間を確認できる。そしてこれはゲームを進めればわかるのだが、あるシナリオのある時間に起きた事柄が、別の時間軸でも同じように起こる事がある。それを何回も繰り返していくと、突如に「時間」の流れが感じられるようになるといった具合である。

☆A.D.M.S.

 今までのゲームは、「マルチエンディング」は出来ても「マルチシナリオ」は完全ではなかった・・・「弟切草」などを除けば。そして、今までのゲームでは表現できる事に限界があった。だからいくらよく出来たAVGであっても、結局は「似たような話を何回も始めから」という形になって、ゲンナリする事もあったのではないだろうか。
 しかし、そういった欠点は「YU−NO」にはない。それも「A.D.M.S.」システムのおかげで、ある程度は自由に物語を歩き回れるようになっているからだ。
 少々説明すると、「YU−NO」では「宝玉セーブ」という概念があり、セーブする事によって「後からその時間」に戻ったり進んだりできるのである。(うーん、ゲームを実際にやらないと説明しにくい・・・(汗))例えば、ある地点で主人公はAのアイテムを手にいれていない。でもAがなければ、話の分岐で必ず一方に行かなければならない。ここで「宝玉セーブ」してから話を進めて、その話が終わったらAを手に入れたあとは「セーブした時間」に戻れば・・・という具合に活用できる訳である。

 その結果、分岐は山のようにある。が、これについてもちゃんとフォローはされていて、それがまたニクい演出になっている。
 はっきりいって、A.D.M.S.については「百聞は一見にしかず」が一番合っていると思うのだが・・・(それじゃ、コレを書く意味がない?ごもっとも!)
 また、基本となる話がそれぞれの時間軸となっているのだが、例えばAのシナリオで重要なイベントが、Bのシナリオでも「ちらっ」と出てきて思わず「ニヤリ」とさせられるといった要素も結構入っている。

 とにかく、「YU−NO」の面白さの大半を占める部分はこの「A.D.M.S.」による物が大きい。そしてこれは、新しいAVGの形の予感ですらある。もちろん、素晴らしく完成度も高いシナリオもあってこそ活かされるシステムではあるのだが。その点でも、「YU−NO」は完成度がかなり高い。これほどの密度の濃いシナリオでありながら、ほとんどの視点から見ても破綻のないシナリオには脱帽である。

☆問題点

 もちろん、欠点がない訳ではない。が、実際にはハマっている間にはそんなのは些細な事でしかない(私なんか、クリアするまでずーとハマってたんだから)。それに欠点とはいっても全体から見れば少しの物でしかない。

 1.意外な所を「見る」しないと進めない所がある(初心者はつまりやすい)
 2.一部キャラは不幸な終わりをする話しかない(汗)
 3.人を選ぶシナリオが少々ある(これはあえて話さない。ネタバレなので)
 4.最終シナリオに入れるようになる為にはA.D.M.Sを100%近くクリアしないといけない

 もっとも、1は「慣れ」でしかない(ヒントもちゃんとある。一ヶ所を除いて)から問題ないと思う。2は・・・ネタバレなので詳しくは書かないが、お気に入りのキャラにはやっぱり、ハッピーな終わりを用意して欲しかった。(でも気にいっているんですよ、結構。)3は「自分で見ましょう」これ以上は言わない。
 もっとも、これらは「他の人なら気になるかな?」と思った点で、私自身は全然気にしなかったのだが。4は、完全に「人それぞれ」ですね。私の場合はそれぞれのシナリオを少しずつクリアしていったので、最終シナリオに入るタイミングがうまくとれた(話がうまくつながった)けど。

 でも、一つ言わせてもらうなら、最終シナリオは「全ての謎が解けるシナリオ」なのだから、主人公は「すべてを体験している」必要があるハズで、その意味では間違っていないと思うのだが。

☆YU−NO

 これほどの大作でありながらもプレイする気を少しも無くさないという点、このゲームは素晴らしい。とにかくPC−98ユーザーならば是非プレイして欲しい。18禁ではあるが、そんなものが「YU−NO」の価値ではないのでお間違えのなきよう。

 やっと100%クリアした。「この世の果てで恋を唄う少女 YU−NO」というタイトルの真の意味は、100%クリア目前でわかるようになっている。だから、まだやっていない人は絶対やってみよう!まだクリアできていない人はがんばってクリアしょう!!それだけの価値は十二分にある!!

 最後に、こんな素晴らしいゲームをデザインされた剣乃ゆきひろ氏と、素晴らしいシステムを実現させたエルフに感謝したい。このようなゲームがプレイできるのは幸せだ。

P.S. 結局、主人公のオヤジを殴れなかった(苦笑)

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PC版をプレイした当時、クリアしてすぐに書いたレポート。
現在はSS版も出ています。SS版についてはこちら。 SS版のレポート
ああ、Win版は出ないのかなぁ・・・?