ラストウィンドウ
真夜中の約束

任天堂/CING AVG NDS


☆取り壊しの決まったアパートの中で

 「ホテル・ダスク」での一夜からいくらか時が流れ……
 カイル・ハイドはロサンゼルスのアパート「ケイプウェスト」に居を構え、レッドクラウン商会のセールスマンとして働いていた。
 しかし1980年12月18日の午後、車内で少し長すぎた昼寝から覚めたカイルは2日ぶりにポケベルの電源を入れると、すぐさまポケベルから呼び出し音が鳴り響いた。
 その時カイルはまだ知らなかった。
 ボスであるエドの堪忍袋の緒が既に切れていてカイルをクビにしようとしていた事も、住み処であるアパートが取り壊しになる為に立ち退きを迫られていた事も。そしてその期限は今月末。
 クビと立ち退きという事態に次々に迫られ、これからどうしようかと考えながらカイルは自分の部屋のドアを開けると、一枚の封筒が落ちてきた。
 その封筒の中身はカイルへの直接の依頼で、内容は25年前の失せ物。
 この依頼が、カイルを25年前と13年前の2つの事件の真相に引き合わせる事になっていくのだが……

☆改善されていくシステム

 ……という感じで、「ウィッシュルーム 天使の記憶」の後の話ではあるのですが、基本的には前作から続いているネタはあまりありません。出る事は出るけど、それはあくまで「前作をやっている人向けのファンサービス」に留められています。もちろん、前作をやっていた方がより楽しめるのは言うまでもないのですが。
 今回は約1週間の間に、カイルに届けられた依頼を中心にアパートの中を動き回る事になります。その中で、住人たちとのやり取りをしたり、調べ物をしたり……という感じで、基本的には前作と同様の遊び方になります。

 システムも基本的には前作と同様ですが、いくつかは改善されていて、今回はより「遊びやすさ」を強化している内容になっています。
 例えば電話が鳴った時や、エレベーターに乗った時など、前作では状況的にもうこの行動をするだけでしょう、という場面が多かったのですが、その時でもいちいち操作出来る場所(電話なら「電話の前」)に行かないと操作出来なかったりしました。
 それが今回では「明らかに電話を取るだけ」などの状況では画面下にそのアイコン(電話の場合は電話のアイコン)が出るようになりました。つまり今回はこのアイコンをタッチするだけでその行動が出来るようになっている訳です。もちろん旧作通りに「わざわざ電話の近くに行って取る」事も出来ますが、この辺は単純にショートカット機能と思えばいいでしょう。旧作だと「ドアの近くに行ったのに電話が鳴った為にわざわざ戻る」というような場面がいくつかあったので、こういう改善は結構嬉しかったりします。
 また、カイルの移動も前作よりすぐ「早く移動」出来るようになったので、前作よりはノロノロという感じが減っています。

☆今回も謎解き

 このように、基本的にシステムが前作から継承したものですし、物語の進め方も基本は一緒(つまりカイルが物事を解決したりする事で、話が進む)です。
 という事で、謎解きも基本的には前作と似た感じになりますが、今回は一部に複数の解き方がある物もあります。こういう場合、片方は「ちょっと難しい」、片方は「易しい」という感じのが多いようです。また「え?そんな解き方があったの?」と思うものもあったり……
 また今回は「組み合わせ」もちょっと増えているのですが、これは自分で実際に遊んでみるとよくわかると思います(というかまんま答えになっちゃう物が多いから書けない)。
 ちなみに謎解きの難易度は前作同様、そんなに難しい方ではないので誰でも少し悩めば解けるのではないかと思います。また一部を除いては、謎解きの多くが物語にちゃんと絡む形で出ているのですが、これには感心しました。

☆オマケ要素は……

 さて今回はオマケ要素はというと、うーん……
 今作ではクリア後はゲームのオマケが追加される(クリアまでの行動によって追加されるゲームが変化。と言っても1つ遊べるか2つ遊べるか、だけですが)。後は小説「ラストウィンドウ」が全部読めるようになる、程度かな。
 ちなみに前作では「2周目」に嬉しい追加要素があったのですが、今回はそういうのがありません。
 一応、一部のイベントが1周では全部は見られない(A・B・Cの3人に関するイベントだが、どれかのイベントを起こすと他が全部消える為、全部見るには一度セーブしてイベントを見た後ロードするか、周を重ねる必要がある)とか、小説(ゲームを進行させていくと「ラストウィンドウ」という小説が書き込まれていく仕組みになっている)が進め方によって書かれる内容が変わる、という要素はあるのですが。
 今回はプレイしていく事で小説「ラストウィンドウ」が出来上がっていくという仕組みを取っているのと、物語の構成上(これはクリアすればわかりますが、要するに「追加出来る部分が少ない」)、前作みたいな「2周目」のオマケ要素を入れにくいのはわかるんだけど、ちょっと残念かな。

 そういう訳で、今作では、2周目以降のプレイはどっちかというと「他に解き方がないか試してみる」「どうしたらゲームオーバーになるか試してみる」とか、「前の周では見てないイベントを見てみる」という遊び方になると思います。
 一応、このイベントのうち1つは雰囲気がとてもいい話になっているのでそれを見つける楽しみはあるのですが……ちょっと難しいかなぁ。(このイベントを見るヒントは「安易に助けない」)

 とはいっても、「カイル・ハイド」の物語が楽しめたのは素直に嬉しいですし、「ウィッシュルーム」から遊んでいると嬉しい内容なのは確かです。
 それに今回もサブタイトルの意味がわかる場面がちゃんと出てくるのですが、これがまた雰囲気のうまい内容なのですね。
 そしてクライマックスでの、ある事件の真相が明らかにされる場面、これはもう何というか、前作以上に「上手い」内容になっています。前作は「希望」を見せる為のクライマックスでしたが、今回は「ある人物の人生」に重ねて語られるクライマックスなのです。

「ゲームの部屋」に戻る

 いや本当楽しかった。個人的には続編がまた出てくれると嬉しいけど……(アレとかがまだ続いてるしなぁ、前作からやってるとどうしても気になる)。
 あと今回はカイルの失敗した様子や「ごめんなさい」な場面が結構いい感じ(笑)


うしとら
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