ロード・ダンセイニのこと。

In the mists before the Beginning, Fate and Chance cast lots to decide whose the Game should be; and he that won strode through the mists to MANA-YOOD-SUSHAI and said: "Now make gods for Me, for I have won the cast and the Game is to be Mine." Who it was that won the cast, and whether it was Fate or whether Chance that went through the mists before the Beginning to MANA-YOOD-SUSHAI--none knoweth.
--The Gods of Pegana

 ラヴクラフトとクトゥルー神話関連作品を集めている時に、「ラヴクラフトが影響を受けた作家の1人」という事で、興味を持ったのがきっかけで調べてみたらいろんな理由でハマった人。
 その理由はいくつかあるけど、特に影響が大きいものとしては、

 まぁ、今手に入れないと読む事自体出来ないというのは実際きついですが、それでもあちこち探し回ったりして、どうにか入手可能な本に関しては大体揃いました。
 で、どうしても見つからないって人も多いかもしれないので、簡単なブックガイドとあらすじを紹介。ただし入手の可能性を考慮(と、私が所有している関係)の上、1945年以降(簡単に言えば創土社「ペガーナの神々」以降)に限ってある(例外はあるが)。これ以前のは、元々が入手はかなり厳しい上に、余程のマニアでもなければ手を出さないような品だと思うので。
 また、シーム(サイムとも読むが、ここではシームで統一する)の挿絵の情報も含めておいた。

 所持している本も増えてきてしまった為、洋書については[洋書編]に移動させました。

プロフィール:
 ロード・ダンセイニ(Lord Dunsany):1878-1957
(Edward John Moreton Drax Plunkett, 18th Baron)
 本名は「エドワード・ジョン・モアトン・ドラックス・プランケット」、第18代ダンセイニ男爵。
 日本語での表記は現在では「ロード・ダンセイニ」又は「ダンセイニ卿」が一般的だが、大正時代などには「ダンセイニイ」(松村みね子)、「ダンセイニー」(江戸川乱歩)と書かれていた事もある(それぞれ間違っている訳ではないので念のため)。

特徴:
 下記は、あくまで私の感じた印象(私の主観)なので、正確な訳ではない可能性が高いと思ってください。

 その他に、ダンセイニの作品の特徴として、いくつかのエピソードがあります。
 主なものとしては、

翻訳作品について

「ペガーナの神々」The Gods of Pegana
創土社:「五十一話集」と一緒に収録
 (絶版:入手は難しい)
ハヤカワFT文庫:「時と神々」の中の創作神話と一緒に創作神話だけでまとめた本
ISBN4-15-020005-X(再販時のもの)
 (絶版:入手は難しい・・・が、創土社版よりはマシなはず)
 追記:2004/3に復刊!この機会に入手しましょう。もちろんハヤカワ文庫FTです。
 間違ってもYahooオークションで買わないように!!というのも、同一人物による復刊新品本の転売が行われているようですので……特に「初版です」と明記されていない物は復刊本の転売と思って良いです。(第二刷はもっと稀少ですし、復刊は第三刷です。つまり実質的に初版と第三刷しか出回ってません)この辺りをきちんと書いている人は信用して良いですが、はっきりと「○刷です」と書いてない人からは買わないように。
 本屋にない場合は注文すれば買えますし、オンライン書店(amazon.co.jpなどでも購入出来ますし、Yahooオークションで買うより安いはずです(オークションの出品は定価より少し高く値を付けて売られていますので)。

この世がはじまらないより前のふかいふかい霧のなかで、「宿命(フェイト)」と「運命(チャンス)」とが、賽を振って勝負を決めた。そうして勝った者は霧を超えてマアナ=ユウド=スウシャイのそばに行き、
「さぁ、われの為に神をつくれ。われは勝負に勝ち、勝者に与えられるものを得たのだから」
と言った。しかし勝ったのがどちらで、また、マアナに語りかけたのがどちらであるかを知る者は誰もいない。

 ・・・といった具合に、もやもやとした形で神々の世界と、神々の戯れは始まる。しかし同時に終末も暗示されている。それは神々でさえもがマアナ=ユウド=スウシャイに創られた「もの」でしかなく、そのマアナでさえもが「宿命」と「偶然」の勝負に従うだけの存在だということである。

 さらに、詩集のような短編を継ぐ形で「ペガーナの神々」は語られる。
 マアナがつくりだしたもののうち、スカウルは自分で太鼓(ドラム)を作り、打ち鳴らしはじめた。すると、それを聞いたマアナは神々を創るのに飽きて、眠りに落ちてしまった。その後に残された神々たちは、マアナが目覚めることがないように、声を使わず手で会話しながら、世界を創り、戯れをはじめることとなる。
 しかしその戯れもマアナが目覚めるまでの戯れにすぎない。一度マアナが目覚めたら、マアナはたちどころに新しい世界と新しい神々を創りはじめ、古い世界と古い神々のごとごとくを消し去ってしまうだろう。
 この「終末」は暗示されているだけでなく、作中でも割と頻繁に言及される。さらにこの世界についても、次のように無気味な言及がなされる。

ある者は言う。この世は谷間に響くスカウルの打ち鳴らす太鼓の音の谺(こだま)にすぎないのだ、と。またある者は言う。この世はスカウルの打ち鳴らす太鼓の音に誘われて、マアナが眠りの中でむすんだただの夢にすぎない、と。しかしどっちが本当でどっちが嘘だと誰が言えるだろうか?

 「この世」はマアナが睡りに落ちている間にだけ存在し、マアナが目覚めると共に消えてしまう。その様子をマアナの夢と表現したとしても、確かに間違いとは言えないだろう。それは同時に、神々も人々も、すべてが虚しい戯れにすぎないという事でもある。
 ただ終末に向かっていくだけの世界の中で、神々と人間とで行われる事の数々。その全てが虚しい戯れにすぎないという虚無感が支配する物語。

 内容的にも、量的にも、初心者に読みやすく、ダンセイニ入門には最適の内容なのだが絶版なのが残念。是非とも何かの形で復活して欲しいのだが・・・
 シームの挿絵はどちらにも収録されている。ただし昔の本の為、印刷が薄くなっている場合があるが・・・(元々薄いのだと思うが、当時から見ている訳ではないので断言はできない)

「ダンセイニ幻想小説集」
 創土社:ダンセイニの短編などを「時と神々(Time and the Gods)」「ウェレランの剣(The Sword of Welleran)」「驚異の書(The Book of Wonder)」「夢想家の物語(A Dreamer's Tales)」などからまとめた本。
 (絶版:入手は難しい)
 これに収録されている短編の多くは「妖精族のむすめ」(ちくま文庫)にも収録されている。
 一応シームの挿絵も収録されてはいるが、「妖精族のむすめ」の方が綺麗に出ているし、数も多いので挿絵の為に無理して購入する必要はないと思う(一応、こっちだけに収録されている挿絵もあるのだが)。

「妖精族のむすめ」The Kith of the Elf-Folk
ちくま文庫:「ウェレランの剣」「驚異の書」などに収められている短編をまとめた短篇集。
 (絶版:入手はそれなりに難しい)
 追記:2005/11に復刊!この機会に入手しましょう。
 「ペガーナの神々」と同様、初心者が入門するのには最適・・・なのに何故絶版になるかなー。
 おかげでお薦めしにくいったらありやしない。一応、貸し出し用(布教用)の分も探しているのだが。
 シームの挿絵がちゃんと作品に合わせて載っているし、しかも印刷がかなり綺麗なので、挿絵目的でもお薦め。表紙は「バブルクンドの崩壊」の挿絵の1つ。

■妖精族のむすめ:The Kith of the Elf-Folk
 過去には「ダンセイニ幻想小説集」などで「妖精のやからに近き者」として翻訳されていた短編。
 人間になりたがっている野性のもの−妖精族のむすめがいた。人間たちが教会で歌をうたい、神に祈りを捧げる様子を眺めているうちに、自分も同じように、神を拝み、歌の音を知り、その他のことごとを味わいたかった。
 しかし妖精どもには人間の持つ「魂」、あるいは「心」がない為、とうてい人間と同じように感じることは出来なかった。だから神との関わりもあるはずはなかった。
 そこで仲間の妖精たちが「心」をどうにか作りあげ、むすめに渡した。そうしてむすめは人間になった。
 そうして人間になったむすめは、自然の美しさと、怖さとを知り、その後教会に向かうのだったが・・・

■サクノスを除いては破るあたわぬ堅砦:The Fortress Unvanquishable, Save for Sacnoth
 アラスリオンという村があった。最近のこと、その村では邪悪な夢が村人たちを悩ませていた。
 村のまじない師が言うには、夢のことを調べてみると、その夢は邪悪な魔法使いカズナクが放ったものであり、まじない師には手の出しようもないこと、カズナクは巨大な砦を築き、その砦はサクノスをのぞいては破ることがかなわないという事であった。
 それを聞いた領主の長子レオスリックはまじない師にサクノスの事を教えてもらい、サクノスを手に入れてカズナクの築いた砦を破り、カズナクを討たんと旅立つのだった。
 英雄譚の1つであり、しかもかなり読みやすい。

■女王の涙を求めて:The Quest of the Queen's Tears
 「森」の女王は言った−「私に感動の涙を流させる話をしてくれた最初のお方に、私は愛を捧げましょう」
 しかし彼女は、どんなに悲劇的な恋物語であろうと、どんなに悲しい話であろうと、決して顔色ひとつ変えることがなかった。
 そこである者は、「歓びの獣」がこぼす涙を盃に受けてそれを呑んで酔い潰れ、その酒の力を借りて歌をうたい楽器を鳴らすと、聞く者に涙を浮かばせることが出来るという話を頼りに、その獣のいる妖精国に向かうのだった。
 「アーサー王と聖杯」のような探索物語の1つ。

■かれはいかにして予言の告げたごとく有り得べからざる都市に至ったか:How One Came,as Was Foretold,to the City of Never
 太古に「究極の都市に行くこととなる」と予言に告がれた子は、予言のとおりに「絶無」−「有り得べからざる都市(ネバー市:City of Never)」に辿り着くこととなった。その時にかれが見たものとは・・・
 結末もさることながら、「有り得べからざる都市」に辿り着くまでの様子が見事。

 他にも数多くの短編が収められているが、全部書くのは大変だし、きりがないのでこれだけにしておく。ここに挙げた短編以外も好きなのは多いのだけどね。
 とりあえず古本屋を探すしかないが、見つけたら是非とも手に取って欲しい。

「魔法使いの弟子」The Charwoman's Shadow
ハヤカワ文庫FT:表紙イラストは萩尾望都。
 (現在は絶版だが、古本屋でよく見掛ける)
ちくま文庫:ISBN4-480-02866-8:ハヤカワ文庫版とは内容は「あとがきまで」まったく同一(表紙イラストは異なる)
 (現在でも新刊で購入が可能。店頭にない場合は注文すればよい)
 原題は直訳すると「掃除女の影」。これは内容と関係するので説明はしないでおく。
 妹の結婚の為に、多くの金を持参金にしようと考えた父は、騎士を目差していた青年ラモン・アロンソに魔法を、特に錬金術のことを学ばせようと魔法使いのもとにやるのだった。
 しかしその魔法使いは、術を教える代わりに、代償を要求する−青年の影を求めたのだった。しかし代わりの影として、新たに別の影を与えようと言うのだが・・・
 青年が魔法を学ぶことから始まり、黄金時代の終わりまでを書き綴った名作。
 ちなみに舞台と一部の登場人物は、「影の谷物語(年代記)」と通じている。
 シームの挿絵は、原本の時点でも使われていないので、当然ながら翻訳本でもシームの絵は載っていない。

「影の谷年代記」Don Rodriguez:Chronicles of Shadow Valley
月刊ペン社(妖精文庫):ちょっと読みにくい気がする(2段組・・・)。
 (絶版だが、古本屋でよく見掛ける)
ちくま文庫:こちらは「影の谷物語」と邦題を変更。
 (絶版。意外なことに妖精文庫版の方が入手しやすい)
 時は「スペイン黄金時代」−
 父の遺言に従い、ドン・ロドリゲスは戦(いくさ)を求めて旅に出ることになった。
 その道中での人々との出会い、戦い、不思議な体験、そして旅は「影の谷」へと導かれていくのだった。
 妖精文庫版では、シームの挿絵は載っていない。一応月報に1点だけ載っているが、これは例外としておく。ちなみにドン・ロドリゲスの姿が描かれた絵。
 ちくま文庫版は表紙にだけシームの挿絵が載っていて、これによってドン・ロドリゲス(主人公)の姿を見ることが出来ます。なお、原本でもこの挿絵だけが載っていたようです。画集には風景画が1枚載っているのですが、これは「公に出版された本には載っていない」ような事が書かれていました。
 上記のようにちくま文庫版は見つけにくいので、妖精文庫版を探したほうがいいです。こちらだと本当にゴロゴロしてますから。

「エルフランドの王女」King of The Elfland's Daughter
月刊ペン社(妖精文庫):表紙は「ヱルフランドの王女」と表記。シームの挿絵の一部がカバー折返しにある(本当に一部・・・)
 (絶版だが、古本屋でたまに見掛ける)
沖積舎:月刊ペン社の復刻(本の造りなどは違うが)。1回ISBNコードが変更されている(裏表紙の色の配置も違うそうです)。現在流通している本のISBNコードはISBN4-8060-3026-0とのことです。
 (現在でも新刊での購入は可能。店頭にない場合は注文すればよい)
 エルフランドの最後の魔法がおこなわれるに至るまでのくだりと、最後の魔法が為しえたものとは・・・とにかく最後まで幻想のイメージが支配する物語。
 沖積舎の本には、シームの挿絵は載っていないが、原本もシームの絵は口絵のみなので、あまり気にしない方がいい。どうしても絵を見たいなら画集を買うが吉。
 妖精文庫の方は月報にシームの挿絵があるのかもしれないが、月報だけの為に複数買う気はないので勘弁してください。ちなみにこっちは挿絵が別の人の物になっています。
 →結局月報付きを買いました・・・こっちにはシームの挿絵はあるけど、元になっている作品が違いました(「Book of Wonder」の「The Coronation of Mr Thomas Shap(仮訳:トーマス・シャプ様の戴冠式)」の挿絵でした)。

「牧神の祝福」The Blessing of Pan
月刊ペン社(妖精文庫):現時点で、この作品全体の翻訳はこの本のみ。
 (絶版だが、古本屋でたまに見掛ける)
 ウォルディングの司祭は、ある悩みを抱えていた。
 自分が受け持っている教区で、最近になって怪しげな気配が出てきたこと、それが明らかに古代からのものであること・・・そういった事々の事を主教たちに相談してはみるのだが、一向に解決策が出てこない。その間も、村では着実に、古代の儀式に惹かれていく者が出始めるのだった。
 それらを導くのは、奇妙な笛の音−牧神の葦笛の音であった・・・
 一説によれば、文明批判の作品だそうだが、そこまで考えなくてもいいと思う。内容的には「エルフランドの王女」と結末は似ているものの、そこに至るまでのくだりや、雰囲気はまるで正反対の内容。
 ついでに、明るい気分になりたい時には読まない方がいいと思う(汗)結構暗い話なんですよ。

「ダンセイニ戯曲集」
沖積舎:元は大正時代に松村みね子が出した本を新たに復活させた本。ただし仮名づかいなどは現在一般的なものに変更されている。
 (現在でも新刊での購入は可能。店頭にない場合は注文すればよい)
 「山の神々」「女王の敵」、戯曲家デビュー作「光の門」などを収録。
 これまた入手が容易なので、手に入るうちに入手しておくのがいいだろう。

「バベルの図書館 26:ヤン川の舟唄」Idle Days on the Yann
国書刊行会:ISBN4-336-03046-4
 (現在でも新刊での購入は可能。店頭にない場合は注文すればよい)
 「夢の国」を流れるヤン川。「私」は船に乗せてもらい、その川を下っていくのだった。その過程で見ることになるさまざまな街・・・ゆったりと流れ、しかし景色はめぐるめぐる物語。
 ボルヘスが編纂した壮大なアンソロジー・シリーズ。1冊1冊それぞれの作家の作品でまとめたもの。
 この巻は表題作の他、「カルカッソーネ」(「妖精族のむすめ」にも収録)や「不幸交換商会」(「災いを交換する店」とも)なども収録している。少し特殊なサイズなので、扱いがちょっと大変かも。今の本にしては珍しく函が付いているし。
 現在は出版休止中だが、まだ出版社の在庫があるようなので、注文すれば購入は可能なはず。
#余談だが、この21巻はマッケンの「輝く金字塔」である。
#こちらも注文すれば入手はまだ可能なはず。

「魔法の国の旅人」The Travel Tales of Mr.Joseph Jorkens
ハヤカワ文庫FT:2003/10/31に特別重版なので、入手は容易になったはず。
ISBN4-15-020047-5(特別重版時のコードです)
 「ほらふき男爵」ことジョセフ・ジョーキンズの話でまとめた1冊。
 ダンセイニの陽の面を集めた作品とも言われるように、他の作品からは想像出来ないような「滑稽な」物語ばかりである。

「世界の涯の物語」
河出書房新社:「The Book of Wonder」「Tales of Wonder」の全訳
ISBN4-309-46242-1
 「The Book of Wonder」「Tales of Wonder」2冊を全訳、既訳がある物も全て新訳。
 さらに序文も収録(「Tales of Wonder」はアメリカ版、イギリス版両方の序文が収録)。
 挿絵も全て収録されているので、特にお薦めしやすいかと。

「夢見る人の物語」
河出書房新社:「The Sword of Welleran」「A Dreamer's Tales」の全訳
ISBN4-309-46247-2
 これも同様に2冊を全訳(既訳のある物は新訳)。
 例によって挿絵も全部収録。

「時と神々の物語」
河出書房新社:「The Gods of Pegana」「Time and the Gods」「Tales of Three Hemispheres」、及び生前に単行本未収録だった短編を収録
ISBN4-309-46254-5
 とうとう「ペガーナの神々」「時と神々」を合わせた、いわゆる「ペガーナ神話」が完訳。
 もちろん挿絵も収録。

「最後の夢の物語」
河出書房新社:「五十一話集」「不死鳥を食べた男」及び生前に単行本未収録だった短編を収録
ISBN4-309-46263-4
 これで河出文庫のダンセイニ短編集は完結。
 表紙はシームの絵ですが、中に挿絵はありません。もっとも、原書の時点で挿絵がないので念の為。

アンソロジー本関係

 ダンセイニの短編の1篇だけが収められている本も、結構あるようです。
 ここでは入手しやすい物に限定しています(主に最近の物を扱っています)。ただ、ちょっとマニアックな出版社の本もあるんで、そういった本を扱う本屋でないとないかも。一応注文して購入する事は容易なはずですが。
 ここに挙げた本なら、大抵は注文するか、古本をちょっと探せばすぐ見つかるかと。
 ちなみに有名な短編「二壜のソース」は本当にあちこちに収録されているので、私が実際に見た本に限定してます(私が見てない本を紹介するというのは変だと思うので)。

「書物の王国シリーズ 1:架空の町」(国書刊行会)
ISBN4-336-04001-X
 「倫敦の話」が収録されている。
 余談だが、この巻にはラヴクラフトの「サルナスをみまった災厄」なども収録。

「書物の王国シリーズ 2:夢」(国書刊行会)
ISBN4-336-04002-8
 「ヨハルネト=ラハイのこと」が収録されている。
 これは「ペガーナの神々」からの1篇。ただ、この1篇だけ見ても何のことかわからないんじゃないかとは思うのだが・・・(汗)

「乱歩の選んだベスト・ホラー」(ちくま文庫)
ISBN4-480-03549-4
 「災いを交換する店」が収録されている。
 他の作家の短編も味わい深いものばかりなので一読をお薦めする。
 それに「怪談入門」も一読の価値あり。
 この本は2000年に出たばかりなので、入手はかなり容易なはず。なかったら注文するように。

「敗者ばかりの日」(早川文庫)
 ハヤカワ・ミステリ。ナンバーはHM-149-1、緑の背(変更されてるかもしれないので断言できませんが)。
 これは「競馬ミステリ」で有名なディック・フランシスの短編を中心に構成された競馬ミステリ短篇集。だから「競馬ミステリ」がある辺りを探した方が見つかりやすいかも(背には「ディック・フランシス・他」とあるし)。
 ジョーキンズものである「ジョーキンズ、予言者に訊く」が収録されている。絶妙なオチが何とも言えない味を出している。現在も出版されているかは調べてないけど、1988年の発行だから割と探しやすいかもしれない。

「ちくま文学の森 4:変身ものがたり」(筑摩書房)
 「妖精族のむすめ」が収録されている。
 値段がちょっと高い(1500円)ので、古本で探すか、他の本を探す方がいいと思う。あるいは図書館で借りるとか。

「ちくま文学の森 8:わるいやつの物語」(筑摩書房)
 「二壜のソース」が収録されている。
 これも値段がちょっと高いので古本なり(後略)

「二壜のソース」が収録されている物で、入手しやすいと思われる本をいくつか。

「16品の殺人メニュー」新潮文庫
 アシモフ・編のグルメなミステリー・アンソロジー。
 「二本の調味料壜」という題で翻訳されている。
 ちなみに有名な短編も多く収録されています。

「世界短編傑作集 3」創元推理文庫
ISBN4-488-10003-1
 これは江戸川乱歩が編集した短編集。現在でも出版されているようなので、注文すれば手に入るはずです(実際、普通に売られている事が多いです)。
 収録は「二壜のソース」。

「ミニ・ミステリ傑作選」創元推理文庫
 エラリー・クイーンが編集した傑作選で、アーサー・C・クラークやO・ヘンリーといった意外(?)な顔ぶれもいくらか混じってます。あまり知られていない(と思う)作家の作品もかなり多いです。
 ダンセイニの短編は「演説」を収録。
 ただ、この本は新刊で探すのはちょっと難しいかも(少なくとも私が探した時は、全然見つからなかった)。注文した方がいいかも、です。古本でもあんまり見かけないようですし・・・(絶版かどうかは調べてないです)

「英国短篇小説の愉しみ 3・輝く草地」筑摩書房
ISBN4-480-83183-5
 西崎 憲・編による全3巻のシリーズのうちの1冊。ちなみに文庫ではなく一般書籍です。
 ダンセイニの短篇は「スフィンクスの館」を収録。
 この本は1999年の刊行なので、まだ入手可能なはずです。なかったら注文しましょう。

正確にはダンセイニ関連というよりはシーム関連なのだが、一応紹介。

「ブックス・ビューティフル」(全2)荒俣宏/著:ちくま文庫
ISBN4-480-03096-4(1)/ISBN4-480-03097-2(2)
 「挿絵と本」をテーマに、美しい挿絵や、挿絵の歴史などをまとめた本。
 作りが文庫にしてはかなり豪華で、挿絵を重要視している事がよくわかる。その代わり定価も高めだけど、これは本の美しさを考えるとまだ安い方だと思う。下手な画集よりもずっと綺麗だし。
 シームの挿絵は2巻目の方に収録。国内の本では一番シームの挿絵が美しく印刷されている(4枚だけですが)。
 残念ながら少し前に目録から消えたのですが、一部の書店の棚には在庫がまだ残っているかもしれません。
 余談ですが、1巻の方にはハヤカワ文庫FT「魔法の国の旅人」の表紙にも使われているイラストが収録されています。

「北村 薫の本格ミステリ・ライブラリー」北村 薫/編:角川書店
ISBN4-04-343204-6
 角川文庫。一風変わったミステリなど、他では読みにくい作品が多いのが特徴か。
 ダンセイニ作品は「倫敦(ロンドン)の話」、「客」(五十一話集より)を収録。ちなみに西條八十の訳です(国書刊行会から出ていた「西條八十全集 5」に収録されているのと同じ)。「倫敦〜」は「書物の王国 1:架空の町」にも収録されていますが、読みやすさは「書物〜」の方が、気軽に読めるという点ではこちらの方が優れているかと。レイアウト(1Pに入る情報量の大きさ)が違うとこんなにも印象が違うのか、というのがよくわかります。
 「客」は「妖精族のむすめ」に収録されている訳と比べてみるのも一興かと。

 余談ですが、この本には対となる「有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー」があります。ただ、読む順番としては「北村〜」から「有栖川〜」と読むのがいいでしょう。「有栖川〜」で「北村〜」に収録されている作品のネタバレをしている小説があるので・・・(その旨の注意書きもきちんと書かれています)
 どちらも2001年夏に出たばかりなので、かなり入手は容易だと思います。

「怪奇小説の世紀 第3巻 夜の怪」西崎 憲/編:国書刊行会
ISBN4-336-03463-X
 その名の通り怪奇小説の短編をまとめたアンソロジー。
 ダンセイニ作品は「秋のクリケット」を収録。これは老境に頼まれて書かれたもので、かなりすっきりした文体となっている。もっとも、「クリケット」を知らないとちょっと楽しめないかも。余談だが、ダンセイニ自身もクリケットをこなしている。
 国書刊行会ということと、ちょっと目立たない(というか暗い)装丁の為本屋では少々探しにくいかも。一応、まだ新刊で購入出来るはずですが。

「不死鳥の剣 剣と魔法の物語傑作選」中村 融/編:河出書房新社
ISBN4-309-46226-X
「サクノスを除いては破るあたわざる堅砦」が収録されている。これは新訳になっているので、「妖精族のむすめ」版と読み比べてみるとおもしろいかも。ちなみに読みやすくなっています。
 個人的には締めの文章は旧版の方が好み(雰囲気という意味でね)。
 この本は、他にR・E・ハワードの「コナン」第一作(この本の表題でもある「不死鳥の剣」)など、いわゆるヒロイック・ファンタジーの歴史に沿った感じの構成になっているアンソロジーとなっています。今では入手しにくい作品が大半なのでそういう意味でも読む価値はあるかと。

「怪奇礼讃」中野 善夫・吉村 満美子/編・:東京創元社
ISBN4-488-55502-0
 ホジスン、ブラックウッドといった有名人からマイナーな作家のも含めて様々な「怪談」を収録したアンソロジー。
 ダンセイニは「谷間の幽霊」を収録しています。

全集

 大正時代や、昭和初期に活躍された作家も、ダンセイニの作品を翻訳していた場合があります。
 そういう作家の全集の中にダンセイニの短編の翻訳が含まれている事もあります。
 図書館であれば置いてあるかもしれないので(普通の本屋ではちょっと探しにくいと思う)、まずは大きめの図書館などを探してみてください。現在でも入手が可能かは調べてません。

「西條八十全集5 訳詩」国書刊行会
 ダンセイニの短編が7篇。うち2篇以外は「五十一話集」から抜き出した物。
 お目当ては「望楼(The Watch-tower)」。これはどうも、他では翻訳されていないみたい。
 この本自体は、デ・ラ・メアやイエイツ、シング他の作家多数の短編がかなり多く収録されているので、興味があったら図書館で読んでみるといいでしょう。ただ、旧かななんで若い人にはちょっと辛いかもしれません(わたしもちょっと辛い・・・)。

「鴎外全集 第十五巻」岩波書店
 題名からも察する事が出来るように、森鴎外の全集。
 この中には「忘れてきたシルクハット」が収録されていました。
 これは後に松村みね子が「置き忘れた帽子」という題で翻訳、現在でも「ダンセイニ戯曲集」で読む事が出来ます。
 余談ですが、この巻には「山椒大夫」も収録されていました。ああ、懐かしい〜

「婚禮と葬禮」創林社
 旧字を現在一般的に使われている漢字にすると、「婚礼と葬礼」となります。
 「O.asis of Death(原題はThe Oasis of Death)」が収録されていました。これも他では翻訳されていないみたい。
 ちなみに本の作者は川端康成・・・と言えば、名前に聞き覚えがある人もいるのでは?

「稲垣足穂全集 第一巻」筑摩書房
 稲垣足穂の全集。2000年の後期から出始めた全集だが、函など見た目からしてとてもいい感じの本。その代わり高い(4800円ぐらい)けど・・・(汗)図書館にはすぐには入っていないかもしれないので、そこには注意するように。
 この中には「五十一話集」から「薔薇」「詩人対地球」「兎と亀との本当の話」の翻訳が収録されています(ただし最後のは翻案のようです)。また、稲垣足穂版「五十一話集」とも言うべき「一千一秒物語」も収録されています。
 それから、第2巻には「黄漠奇聞」という作品が収録されており、この中には「バブルクンド」などダンセイニ作品からいろいろ名前を借りています(ダンセニー大尉も登場する)。興味があったら読んでみたいところです。
 稲垣足穂に関しては「一千一秒物語」「黄漠奇聞」などが新潮文庫に収録されていたりとこの本の他にもいろいろ出ているようですが、とりあえず入手しやすいということで上記の本を挙げています。ご了承ください。(河出文庫などにもあるようです)
 一応、新潮文庫「一千一秒物語」のISBNコードはISBN4-10-108601-Xでした。この中には「黄漠奇聞」も入っています。

「編年体大正文学全集 第7巻(大正7年)」ゆまに書房
 題名の通り、「大正時代」の国内文学をまとめた全集。主に大正時代でのそれぞれの作家の活動をまとめる、という感じのようです。その為、「文学」とはいっても小説、詩、戯曲など様々。
 ダンセイニの「山の神々」が松村みね子訳で収録されています(どうやら、「当時の松村みね子の活動」として収録しているようです)。
 ただ、「全集」の名に相応しく、とっても「厚い」、「重い」、値段も6000円ぐらいですので、気軽に読みたいという人にはお奨めしかねます。それに2段組なんで、「山の神々」のトコが妙に読みにくいので・・・
 ただし大正時代の文学に関心があるなら、読んでみるのもいいかも。
 これは2001年5月に出たので、大きい書店や図書館でなら見つかるかも。なくても注文で入手する事は可能なはずです。

雑誌

 基本的に、新しめの雑誌もしくは古本でも比較的探しやすい物に限定してます。

「幻想文学 24:ケルト幻想」
 「幻想文学」では2回目のケルト特集。
 ダンセイニの翻訳は「ラ・トラヴィアータの運命」「金のイヤリングの男」「気難しい目をした鳥」。
 また、ダンセイニに関するちょっとした記事の他に後半の「ケルト幻想作家名鑑」でもダンセイニの項目に詳しい説明がある他、一部の作品のあらすじも紹介されている。

「幻想文学 62:魔都物語」
 ダンセイニの翻訳は「マリントンムーアの都」を収録。
 また、一部の記事でダンセイニ関連の記述あり。

同人誌

 同人誌は、一般に市販されている本とは違い、在庫がまだ残っている保証はありません。
 また通販の手順も、一般の書籍と異なる部分があるのですが、その辺りは各自できちんと調べてください。一応、通販申し込みの前に在庫がまだ残っているかの問い合わせを(丁寧に)する事だけは絶対に忘れないように。また、通販の際は、「何を」「何冊」などの申込書をきちんと添付すること。たまにこれを全く書かないで、現金もしくは「本を送ってください」とだけ送りつけてくる人もいるそうですし(私も前にこういう内容の手紙を送られた事があります)。
 それから、コミケへは毎回必ずサークル参加出来ているとは限りません。カタログや、それぞれのWebサイトに告知ページがある場合はその確認をすること。

「PEGANA LOST Vol.7」(西方猫耳教会)
 ダンセイニ専門サイトの「バブルクンドの神々」(注:現在は閉鎖しています)を運営しておられる未谷おとさんの出している同人誌です。
 Vol.7が初のオフセット本となり、同時にVol.6以前のバックナンバーは品切れ扱いになっています。これはVol.7の内容がVol.6までの内容の再録を中心としている為です。
 ダンセイニ作品は「時と神々」から三篇、「戦争小説集」からいくつか(結構数があります)の翻訳を収録。
 また、ダンセイニ邦訳本目録をはじめとして、映画(時代劇)にダンセイニの翻案が出ていたという記事などマニアックな内容が多いです。

「PEGANA LOST Vol.8」(西方猫耳教会)
 Vol.8は戯曲特集。
 松村みね子訳の「もしもあの時」を中心に、時代劇の台本「昔を今に」、芥川龍之介の「尼と地蔵」と「神々の笑い」との対比論文及び作品の掲載といった感じで戯曲がメインではあるが、それ以外にも西条八十訳「時と戦った王の話」など貴重な作品が多い(いずれも入手、閲覧が厳しい)ので、結構嬉しい組み合わせではある。

「PEGANA LOST Vol.8.8」  Vol. 9の為の準備号といった感じの号(だから.8なのです)。
 「ヤーニスの民」「マアナ=ユウド=スウシャイの夢」を収録。前者は「時と神々」より、後者はリン・カーターが自分の編纂した短編集に寄せた前書きの翻訳です。

「THE WHITE RIDER Vol.1-3 復刻版」(白の乗り手)
 「白の乗り手」でもおわかりのように「指輪物語」がメインのサークルです。この本はそこが昔出していた同人誌をまとめて1冊にして復刻したもの。
 短編「誓いの言葉」「間一髪の回避」が収録されています。

資料

 ロード・ダンセイニに関する記事で、参考になるものをいくつか。

「恐怖の黄金時代 −英国怪奇小説の巨匠たち」南條竹則/著 集英社新書
 ラヴクラフトが、著名な「文学における超自然の恐怖」で取り上げている数々の怪奇小説の巨匠を中心として構成しており、その中でも「ラヴクラフトが師事・敬愛した作家」として取り上げられている(ちなみに章のタイトルも「師匠と弟子」)。他には当然の如くアーサー・マッケン、アルジャノン・ブラックウッド、M・R・ジェイムズなども取り上げられている。
 貴重な「バブルクンドの没落」(昭和4年に翻訳、研究社より英語学習本として出たもの)の挿絵と「The Gods of Pegana」より挿絵「Pegana」(これはハヤカワ文庫FT版「ペガーナの神々」には何故か収録されていない)も印刷されており、これだけでも見てみる価値はあるかと。
 それ以外では、「山の一夜」の一部が松村みね子訳ではなく、船橋雄訳のが一部載っている。部分だけではあるが、松村みね子の訳と読み比べてみるとおもしろいかも。

 なお、ダンセイニ以外の作家に関しても濃い内容になっているし、M・R・ジェイムズに至っては「枠の中の顔」が収録されているので怪奇小説の入門としても楽しめると思う。

「ファンタジーの冒険」小谷真里/著 ちくま新書
 こちらはダンセイニに関する記述は少しだけだが、ファンタジーに与えた影響についてもきちんと書かれている。

「幻想文学大事典」国書刊行会
 「大事典」というだけあって、非常にボリュームがある上、値段もこれまたグレイトなのでそう簡単にはお薦めしません(汗)ただしその分読み応えもありますが・・・
 ダンセイニの項目も非常に詳しく書かれている。
 なお、この「大事典」は主に映画、ホラー、怪奇小説方面の項目が多いので、写真も結構多く載っています。

「アイルランド文学史」尾島庄太郎・鈴木 弘/共著 北星堂書店
 その名の通りアイルランド文学の本。
 ダンセイニは、「演劇(戯曲)」と「小説(幻想文学)」の2つの場面において、それぞれ詳しく取り上げられている。ただし名前に関しては、「ペガナの神々」、「なかの海」は「中央海」などと、直訳(直読み)調で書かれているので気になる人は気になるかも。内容としては決して悪い本ではないので念のため。

「定本ラヴクラフト全集 7-I:評論編」国書刊行会
 ラヴクラフトの書いた論文などをまとめた巻で、この中には著名な「文学に於ける超自然の恐怖」と、「ダンセイニとその業績」の2つの記事がダンセイニについても取り上げています。
 特に後者などはもうほとんど絶賛しまくりな部分も見受けられたりして、ラヴクラフトが本当に敬愛してるんだと思える内容。実際には紹介文のはずなんだけど(笑)
 なお、これは「幻想文学 2号」にて「ラヴクラフト、ダンセイニを語る」として紹介されていたものと同一であるようです(私は「幻想文学 2号」は持っていないので比較できないですが、Webで検索したら同一の原文テキスト、訳者も同じでしたので題名以外はまったく同一であると思われます)。

 余談だけど、同じシリーズの「7-II:詩篇」では「エドワード・ジョン・モアトン・ドラックス・ブランケット・第十八代ダンセイニ男爵に捧ぐ」も載ってます。

「ファンタジーノベルズガイド」いするぎ りょうこ/著 新紀元社
 題名が示すように、ファンタジー作品のブックガイド。ただ、この本ではいわゆる「ハイ・ファンタジー」などといった区別はせず、むしろテーマ別に分けている。個人的にはこういった分類の方が好き。
 「ペガーナの神々」についてまとまった紹介がなされている。
 この出版社は、主にTRPG方面向けにファンタジー関係のいい資料本を出しているのだが、この本だけなぜか新品ではあまり見かけない。

「魔道具事典」山北 篤・監修 新紀元社
 題名の示すように、様々な作品から道具(・・・には限らないが)を紹介している本。
 「ペガーナの神々」から「曠野の眼」「<宿命>と<偶然>の賽」などが紹介されている(ただし底本は創土社版なので、「時と神々」関連の道具は出てきません)。
 この本は2001年冬出たばかりなので簡単に買えるはず。ただし結構厚いし、値段もちょっと高いのでその辺には注意。
 余談ですが、当然の如く「クトゥルー神話」「指輪物語」関連も出てます。そればかりか、実在の「ペテンに使われた物」なども結構出ているのでおもしろいです。

「空想文学千一夜」荒俣 宏/著 工作舎
 荒俣 宏が様々な媒体(雑誌、文庫本など)に書いた記事をテーマ別にまとめた本(エッセイ集に近い)。
 かなりボリュームもある上、ダンセイニ関係だけでもかなりの分量が入っているので詳細は自分で読んでください(もっとも、荒俣 宏の「悪いクセ」として、作品のあらすじをほとんど書いてしまっている物も多いのでその分量も増えている、と言えなくもないのだが・・・)。
 また、あとがきでは荒俣 宏が念願のダンセイニ城訪問を果たし、そのときの様子を記しているのだが、これが感動物。ああ、ダンセイニ城に行きたい!
 なお、私は新刊で入手出来たのですが、工作舎の本は本屋ではあまり置かれないようですし、特にこの本はかなり厚いので出来れば注文した方が確実かと思います。また初版が1995年なので、品切れになっている可能性もあります(私は確認してません)。

「『指輪物語』完全読本」リン・カーター/著 荒俣 宏/訳 角川書店
 この本は昔翻訳されていた「トールキンの世界」の改訂復刻版。
 題名の示すように、基本的には「指輪物語」の研究本なんですが、最後の章「ファンタジーを創った人々」に、「貴族作家」としてウィリアム・モリスらと並んで紹介されています。
 そう長くはないですが、それでもうまい引用も多く、紹介としては適切な内容になっています。
 角川書店版はハードカバー版と文庫版があるので、好みで選べるのが嬉しいですね。
 余談ですが、第2章の冒頭で「The Book of Wonder」序文が全文掲載されています。

「新編 別世界通信」荒俣 宏/著 イーストプレス
ISBN4-87257-295-5
 元々は妖精文庫およびちくま文庫で出ていた「別世界通信」をさらにかなりの量を書き加えるなどして、かなり構成も変化させた本。その為、旧刊を持っていても楽しめるようになっています。
 特にダンセイニに関する記述がかなり増えていたり(貴重なシーム以外の人による挿絵も載っている)、表紙がシームの絵に彩色したものだったりするなど楽しくなってます。

「ファンタジー・ブックガイド」石堂 藍/著 国書刊行会
ISBN4-336-04564-X
 表題の通り、ファンタジー作品のブックガイド。実はこの手の「ブックガイド」で、ファンタジー方面の物はあまりなかったのです。そういう訳でファンタジーを勉強するならこれもお薦め。
 ダンセイニは、当然ながら「ペガーナの神々」を軸に紹介、その隣で「エルフランドの王女」を紹介しています。「ほら話」のカテゴリではジョーキンズ話(「魔法の国の旅人」)も紹介。

「妖精のアイルランド 「取り替え子」の文学史」下楠昌哉/著 平凡社
ISBN4-582-85286-6
 「取り替え子」をテーマに、アイルランドやそれに関する小説や当時の風説などを取り上げている本。例えばブラム・ストーカーの「ドラキュラ」、ラフカディオ・ハーンなど様々な作家とその作品を扱っています。
 ダンセイニは、イエイツの章の途中で取り上げられています。
 ちなみに平凡社新書なので注意。

おまけ

 本当におまけ。
 「パタリロ!」の人の単行本で、「ラシャーヌ!」というのがあり、この3巻の巻末に読み切りの収録として「焼き肉はいかが?」というのがあり、これが「二壜のソース」の翻案になっていたりします。原作がある旨の表記はありませんが、この作者は他にもいろいろな作家の作品の翻案を出しているし、それぞれ結構おもしろいんで探してみては?
 ちなみにこの短編自体は「ラシャーヌ!」とは何の関係もないです。
 「ラシャーヌ!」は今文庫でも出るけど、こっちには収録されていません。その代わり、同じ文庫で「妖怪缶詰」の2巻に入っています。

 その2。「SFマガジン 1999年2月号」に掲載されている「星界の断章−創世」は、「ペガーナの神々」を意識した「はじまり」があります。オチでやはり「ペガーナの神々」に触れられているし。
 バックナンバー自体は入手可能かどうかは知らないけど、図書館が「SFマガジン」を購入しているのであれば、バックナンバーも置いてある可能性があるので、それを当たってみるのもいいかもしれません。
 追加:ハヤカワ書房の単行本で、「星界の戦旗読本」(だったと思う)に他の短編と共に「星界の断章−創世」も収録されていました。2001年7月に出たばかりなので、手に入りやすいと思います。
 追記:現在ではハヤカワ文庫「星界の断章 I」に収録されています。これは「星界」の短編集。

 稲垣足穂関係では、筑摩書房から出ている「稲垣足穂全集 11」に、ダンセイニ作品から名前を引用した短編などがいくつか入ってます(特に「世界のはて」は二次創作の見本みたいな感じ)。値段がちょっと高いですが、装丁などもカッコいい本なので金に余裕があったら買ってみては?

 「復刊.com」で「ペガーナの神々」「妖精族のむすめ」がそれぞれ投票されています(私も投票しました)。これで復活してくれるといいのですが・・・(特に「ペガーナの神々」)
 追記:現時点では、2005年初頭に「ペガーナの神々」が復刊しています。その他、初期短編集は「世界の涯の物語」などで全訳がされていますので、現在はこちらの方がお薦めです。
 追記:2005/11に「妖精族のむすめ」も復刊しました。

 最近では、「PEGANA LOST」で「戦争小説集」などを翻訳された稲垣 博さんが、自ら翻訳したいくつかの短編をWeb上で発表されています。
 「ロード・ダンセイニ翻訳の部屋」http://dunsany.main.jp/
 現在は「夢想家の物語」「戦争小説集」からいくつかが出ています。

目次に戻る


Last Update:04/15/2007 09:50

うしとら
usitoraあっとqj9.so-net.ne.jp