数種の「ペガーナの神々」

 ここでは、ロード・ダンセイニの「ペガーナの神々」の種類について書いてみました。基本的には「ペガーナの神々」が全部収録されている物、というのを基準にしています(これは洋書だと、タイトルこそ「ペガーナの神々」でも実は一部しか収録してなかったりするのがあったりするのでそういうのはここには入れてません、という事ね)。
 このページでは、その性質上、画像ファイルを表示しない設定ではあまり楽しめないと思います。
 一部の本はサムネイルからは大きい画像ファイルを見られるようにしていますが、現在でも新刊が流通している本に関しては大きい画像ファイルは用意していません(これは「紹介」と「引用」に関して、扱いが微妙になってくる部分な為です)。あと日本語訳版の画像も似た事情で、サムネイルのみです。
 また、このページで使用している画像ファイルの無断転載・無断使用はお断りします。特にYahooオークションなどのオークションにこのページの画像を使用しないで下さい。
 実際、本当にその品を持っているのかどうかがかなり疑わしくなってしまいますので、やらない方が身のためだと思います。自分で写真を撮るなりして画像を作った方がずっと信用されますし(逆に言えば、ここで使用している画像を勝手にオークションに出している人の出品は信用出来ないとも言えますが)。
#それ以前に海外の古書をわざわざ買う人はほとんどいないと思うが

 なおタイトル表記では「Pegana」の真ん中の「a」は長音記号が付いてる物と付いてない物がありますが、ここでは長音記号は省いてますので念の為(ちょっとめんどくさいので)。
 また、おまけで「進行(すすみ)の神ルウンのこと」の文中にある「ヤリナレス、ヤリナレス−−これら(後略)」の記述の違いを記しておきました。他にも違いはあるんだろうけど、そこまで調べるのは骨ですし、本も傷んでしまうのでパス。


左が1905年版

The Gods of Pegana
Elkin Mathews/1905年
 これが正真正銘のイギリス版「初版」。表紙(装丁)は前に撮影した1911年版とほぼ一緒なので、両方並べた写真にしています。ちなみに左が初版。
 基本的な内容は一緒なんですが、違うのは出版社名の表記、活字の大きさが微妙に違う(その為レイアウトもやや違います)、そして一番の違いは「DEDICATED TO LADY DUNSANY.(レディ・ダンセイニに)」がこの初版では書かれていない事です(画像参照のこと)。あと最後の方に「The Riverside Press Limted, Edinburgh」と書かれていますが、これは気にしなくていいでしょう。
 「レディ・ダンセイニに」の文の有無については下の画像を参照。これも同様に左が初版ですが、見ての通り左のページには何も書かれていません。右にある1911年版では、ここに「DEDICATED TO LADY DUNSANY.」が書かれています。
これも左が1905年版

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, Yarinareth, Yarinareth, which(後略)


The Gods of Pegana
PEGANA PRESS/1911年
 これはイギリス版での再販の方。ただし基本的には1905年の初版にかなり近い内容のはず。
 ちなみに挿絵を描いたS.H.シーム(サイム)が私費を投じて再販したのがこの版で、「PEGANA PRESS」はダンセイニとの共同で設立したスタジオ。限定500部だそうです。
 余談ですが、洋書で、冒頭に「――レディ・ダンセイニに」の文章が出ているのはこれも含めたイギリス版だけのようです(翻訳本ではこの文章が含まれているので、イギリス版を原本にしていると思われます)。
 イギリス版では、このように表紙にイラストも描かれているのが基本のようです(創元推理文庫の「ラヴクラフト全集 6」に「時と神々」の表紙が掲載されていて、それにもイラストが描かれていますので)。(追記:後年に各種の初版を集めて判明したのですが、これは物や出版社によるようです。詳細は「ダンセイニ初版本の世界」にて)

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, Yarinareth, Yarinareth, which(後略)


The Gods of Pegana
Elkin Mathews/1919年
 いわゆる英国第三版。
 基本的には1905/1911年版からスカールの絵を取り除いた表紙。なので面白味もないので撮影はしない(苦笑)
 (厳密には扉近くのページに既刊案内も追加で載ってるのですが、それ以外は基本的に1911年版と同一です)

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, Yarinareth, Yarinareth, which(後略)


The Gods of Pegana
JOHN W.LUCE&COMPANY/1916年?
 恐らく1916年発行の本(出版は1916年)。アメリカで出版された物。
 これは「ダンセイニ全集」みたいな企画の本なので、ここから出版された「時と神々」などもこれと共通したデザイン・装丁(色)となっています。この「共通したデザイン」には、題名の横にある飾りも含まれています。
 資料では、全巻セットでの販売もあったようです。このシリーズのバラ売りは、結構古本で売られています(さすがに「ペガーナの神々」「時と神々」は見かけないときもありますが)。ただ、個人的にはよほどのコレクターでもない限りは手を出さない方がいいと思います。
 挿絵は全部入っていますが、若干鮮明さが甘い印象です。でも掲載サイズが若干大きいです。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, ..Yarinareth, ..Yarinareth, which(後略)


Beyond the Fields We Know
Ballantine/1972年
 リン・カーターが編集した「バランタイン・アダルト・ファンタジー」シリーズの中の1冊。
 日本国内でのファンタジー関係の本では、この本を「ペガーナの神々」として紹介している物もいくつかある(まぁ、間違いではないけど微妙なところか)。
 実際には「ペガーナの神々」のみの収録ではなく、「ペガーナの神々」を全部収録した上で、「時と神々」から関連性の強い作品を抜き出し、さらに他の詩なども併せて収録した本。
 一部の短編は、タイトルがこの本でのオリジナルに変更されている物もある(変更前と後の題名は奥付で確認出来ます)。
 もし、古本でダンセイニ作品を探すのならばこの「バランタイン・アダルト・ファンタジー」シリーズが価格と手間と内容のバランスがそこそこいいかもしれません(ただし美本はそれなりに少々高くなります……当然ですが)。ただ、単にテキストを読みたいだけだったら後述の「Time and the Gods(UK2000MILLENIUM版)」の方がもっとコストパフォーマンスはいいと思うが……まぁ、こちらは普通のペーパーバックなのでお手軽ですけど。
 挿絵は一切入ってません。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, Yarinareth, Yarinareth, which(後略)


Time and the Gods
UK.2000 MILLENIUM/2000年
 これも正確には「ペガーナの神々」単体での収録ではなく、ダンセイニの初期短編集の6冊を全部まとめてしまった本。という事で、コストパフォーマンスは最強だが、当然ながらかなり厚い。
 現在でも流通しているが、イギリスの本なのでamazon.ukのようにイギリスの本を扱っている所で購入(注文)するといいです。
 これも挿絵は一切入ってません。……まあ、どうしても英文で読みたいという向きには一番早い手段だと思います。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, Yarinareth, Yarinareth, which(後略)


Les Dieux de Pegana
TERRE DE BRUME/2002年
 フランス語版「ペガーナの神々」。フランスでは、(「ペガーナ」単体でまとまった翻訳としては)これがはじめての翻訳となります(他のダンセイニ作品は前にも翻訳されているが)。
 挿絵も全て収録されていたり、ダンセイニの紹介記事などが興味深かったり。
 当然ながらフランス語で書かれているので、フランス語が読めないと話になりませんが(苦笑)フランス語がある程度読めるなら挑戦してはどうでしょう(笑)
 若干わかりにくいけど、表紙は作中にも出ている挿絵「ムングとムングの獣」の絵。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth, Yarinareth, Yarinareth, ce qui(後略)


The Gods of Pegana
Wildside Press/2002年
 めでたく「The Gods of Pegana」単体での復活……と思ったら、実は結構不満の多い内容です。少なくとも、研究・引用目的でコレを買うのは全くお薦めしません
 まず、テキストの変更が少々(章の題の変更が2ヶ所、字体の変更が数カ所)あります。ということで底本としては適していません(これを鵜呑みにして信じてはいけないという事)。底本にするなら、せめて「Time and the Gods」(UK.2000 MILLENIUM)にしましょう。
 挿絵は全部入っていますが、あまり鮮明ではなく表面に網がかかったような感じ。さらに1枚の絵の場所が変更されています(本来なら「The River」になければならない絵が「Of Yoharneth-Lahai」に移されています)
 値段も「Time and the Gods」(UK.2000 MILLENIUM)などに比べて高いし、無理してこれを買わなくてもよいと思います。
 ちなみにペーパーバック版、ハードカバー版、デジタル版(PCで読める物)がありますが、デジタル版以外は、例えば日本のamazon.co.jpでは入手可能かどうかがコロコロ変わったりするようです。アメリカのamazon.comでもそれなりに時間がかかります。
 ちなみに写真はあえて撮影していません。つーかこんなに不満の出てくる本紹介したくないわい(涙)(ただし後年(2010年辺りから)出まくってるプリント・オン・デマンドものよりはまだ「マシ」なのだが……(汗)ううむ。)

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,Yarinareth,Yarinareth, which(後略)


In the Land of Time and Other Fantasy Tales
PENGUIN CLASSICS/2004年
 ペンギン・ブックスから出たダンセイニの代表的な作品をいくつかまとめたもの。
 もちろん「ペガーナの神々」も収録しています。他に「二壜のソース」なども。
 余談ですが、この本では「In the mists〜」の所に、「本来は題はないけど便宜上付けている」ということで、[PROLOGUE]の表記があります。これは構成上、そのままではPrefaceとつながっていない文だという事がわかりにくいのでこうしているものと思われます。本当はない事を示す為に[]が付けてあるので親切。
 また、「ペガーナの神々」に限定して言えば、底本にしているのは上に挙げたJOHN W.LUCE&COMPANYによる米国版、もしくはその頃の米国版のようです。ヤリナレスの表記が同じだけでなく、「Pegana」「MANA-YOOD-SUSHAI」の表記が古い物(一部の字の上に伸ばす音を示す線が書かれている)ですので。「ペガーナ」以外は米国版と英国版両方読んでないので不明。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,...Yarinareth,...Yarinareth, which(後略)


The Complete Pegana
Chaosium/1998年
 Chaosiumから「Call of Cthulhu Fiction」の中の1冊として出た物で、位置づけとしてはTRPGの「Call of Cthulhu」関係の資料として、「ラヴクラフト及びその関係者たちに影響を与えた作家」として収録しているようです。(この叢書には他にマッケンなどの本も出てます)
 収録は「ペガーナの神々」「時と神々」、そして「われわれの知る野原の彼方」(ヤン川三部作)を収録しています。S.T.ヨシ編。
 一時は古書価格が何故かアホみたいな値段になってたのですが、2006年に再版が行われてからは古書価格はかなり落ち着き、新品での入手も容易になっています。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,...Yarinareth,...Yarinareth, which(後略)


Pegana. Tiempos y Dioses.
La biblioteca del laberinto, S. L./2011年
 これはスペイン語版で、構成そのものは上記の「The Complete Pegana」と同様。それに加えてこちらは「ペガーナの神々」序文、「時と神々」の1905年及び1922年の序文、「ヤン川三部作」の「版元の覚え書き」と挿絵全ても収録。
 さらに仏語版「ペガーナの神々」「時と神々」に収録されている解説のスペイン語訳を収録……と、つまり「The Complete Pegana」と仏語版単行本を合わせたような内容になっています。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,Yarinareth,Yarinareth, lo que(後略)


American Eldritch Presents:The Gods of Pegana
American Eldritch/2015年
 題名通りアメリカで出版された物で、簡単に言うと全部の挿絵に着色した「ペガーナの神々」です。着色はAladdin Rutledge Collar氏によるとの旨記載あり。基本的に暗い感じの着色なので好みはわかれると思いますが、丁寧な作業ではあります。ちなみに他の本とは着色の様子も違います(つまりこの本独自に着色したもの)。
 序文がちょっと変な位置(「この本について」とISBNの記載に挟まれている)なので、最初にこの本を読んだ人はちょっと戸惑いそうな気がします(苦笑)
 また多くの米国版書籍と同様にPrefaceの題が「In the mist〜」に書かれている他、「ペガーナの神々」の章題がIntroductionになっています。またフォントが全部同じです(原書にある太字とかそういう変化は一切なし)。
 American Eldritchはクトゥルー神話本を主に出版していくようで、基本的にamazonでの流通が主なようです(公式サイトでも「ここから買って」がamazonへのリンクになっていますし……)。プリント・オン・デマンド物の一種だとは思うのですが、少なくとも「挿絵を独自に着色」といった特徴があるのでここに収録した次第。(プリント・オン・デマンド物は余程の特徴がない限り手は出したくないので……)

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,Yarinareth,Yarinareth, which(後略)


Los dioses de Pegana
Rialta Ediciones/2016年
 これはスペイン語版ですが、先述の物(上にある"Pegana. Tiempos y Dioses.")とは異なり「ペガーナの神々」のみとなっています。また挿絵はなし(表紙と裏表紙のみ、ただし裏表紙は表紙に使ってる絵の部分のみ掲載)。
 こちらはメキシコで印刷されたとの記載があるので、流通している国も異なると思われます。またスペイン語の訳もいくらか違いがあったり……

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,Yarinareth,Yarinareth, que(後略)


Gil Dèi di Pegana
Golem Libri/2017年
 これはイタリア語版で、フランス装のペーパーバックになっています。
 挿絵も全部収録。また底本が1911年との表記あり。なので扉(表題)の次のページに「A Lady Dunsany」も載っています。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,Yarinareth,Yarinareth, che(後略)


ВРЕМЯ И БОГИ
ВЕЧЕ(サイトのURLでの英語表記は「veche」)/2015年
 これはロシア語版で、タイトルは「時と神々」。ちょっとしたハードカバーです。
 収録は「ペガーナの神々」「時と神々」「五十一話集」「不死鳥を食べた男」、挿絵も「ペガーナ」「時と神々」の全部に加え、扉に「時と神々」のダスクジャケット掲載の絵や「不死鳥を食べた男」表紙の一部(表紙に出ている男の絵部分)も掲載。また冒頭にはサイムが描いた「The Landscape Map of the Land of Dreams」が掲載(注:この絵自体は「ペガーナの神々の挿絵を描いてた頃と近い時期に描いてたものと思われる」なだけで、現時点ではダンセイニとも直接関係あるかどうかは不明)ですが、文字が全部ロシア語訳されています。
 また巻末には索引があるのですが、挿絵索引は「ペガーナの神々」「時と神々」の挿絵別に引けるようになっています(掲載してる場所が原書通りではないので、どの挿絵がどの短編の物かわかるようになっている)

 「ヤリナレス」の表記:

Йаринарет,Йаринарет,Йаринарет,что(後略)


Cuentos de un soñador, y otras fantasias
Valdemar/2019年
 ここに上げている物では3冊目になるスペイン語版。これはハードカバーで、「ペガーナの神々」「時と神々」「夢見る人の物語」「驚異の書」「驚異の物語」の5冊をまとめて収録したもの。題名は「夢見る人の物語」のスペイン語訳表記です。また挿絵はなし(サイムの絵は表紙にある着色した物のみ)。
 この本はスペイン本国で印刷されたようです(マドリードの名がある)。
 以前に出たものと比べるとこれも翻訳が結構違います。

 「ヤリナレス」の表記:

Yarinareth,Yarinareth,Yarinareth, que(後略)



「ペガーナの神々」
ハヤカワ文庫FT/1979年
 「ペガーナの神々」の全部に加え、「時と神々」から数篇を抜き出して構成した本。
 挿絵も「ペガーナの神々」に関しては全部が入っています。(厳密には「PEGANA」の挿絵が入っていない。これは原書だと扉の隣に掲載されている挿絵で、後述の「時と神々の物語」ではP.95に載っている物です)

 2004/3に復刊しました。

2015年9月に、ハヤカワ文庫からトールサイズ(2009年以降に縦に5ミリ大きくし、活字サイズも若干大きくした内容に統一された物)として重版する際に、カバーデザインを改めて新装版として出ています。こちらの書影は下の通り。

 「ヤリナレス」の表記:

ヤリナレス、ヤリナレス――これら(後略)


「ペガーナの神々」
創土社/1975年
 「ペガーナの神々」の全部に加え、「五十一話集」も収録している。(なお「時と神々」の方は「ダンセイニ幻想小説集」に収録なので念の為)
 ちなみに画像の左が函。本自体は右のように緑の装丁である。
 本当は帯付きのも所有しているが、こちらは保護の為のパラフィン紙が全面に掛けられているので撮影していない。

 「ヤリナレス」の表記:

ヤリナレス、ヤリナレス――これら(後略)


「時と神々の物語」
河出文庫/2005年
 「ペガーナの神々」「時と神々」の全訳に加え、「三半球物語」全訳と生前には単行本へ未収録だった短編・戯曲他を収録した洋書から短編のみを抜き出して収録している。勿論挿絵は全て収録。
 現時点では、ペガーナ神話を読みたいなら間違いなくこれが一番だと思います(ヤン川三部作も含むし)。

 「ヤリナレス」の表記:

ヤリナレース……ヤリナレース……ヤリナレース。〈彼方〉を意味する(後略)


 ちなみに「本当の意味での初版」、すなわち1905年イギリス版は持ってません。というか簡単に買える品じゃないんで……(汗)いろんな意味で(保存とかも、ね)。
 (追記:結局1905年版買ってしまった……)
 もし「原文を古本で買って読んでみたい」という奇特な(失礼)方がいるのでしたら、バランタイン・アダルト・ファンタジー版をお奨めします。新刊なら文句なしにMILLENIUM版がお奨め。(2011年現在は状況が変わり、「The Complete Pegana」は復刊していますし、「In the Land of Time〜」も入手性がいいのでそちらの方がいいかもしれません。)
 挿絵目当てなら、S.H.シーム(サイム)の画集を買った方がいいと思います。そちらの方がまだ入手しやすいはずだし……(どっちにしろ古本だけどね)

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うしとら
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(07/02/2019 19:25)