彼女とは、7年前に蟷螂(とうろう)海岸で出会った。
まだ学生だった私が海を眺めていると、彼女が「何をしているの?」と後ろから声を掛けてきたのがはじまりだった。
それからは二人は心を通わせ、いつしか深い関係になっていた。
でも・・・彼女は私の前から姿を消した。
「私は海で待っています」
その言葉と、彼女が完成させた一枚の海の絵を残して。
そして季節はめぐりめぐり、私は7年目の夏にサマースクールの添乗員としてこの海に戻ってきた。
深景(みかげ)さんとの想い出の残るこの海へ・・・
エルフは元々新作を出すペースが遅いソフトハウスとして知られています。
実際、PC-98時代の時は1年に1作という事もありました。ですが、それを補って余りある魅力を持ったゲームを出す事で知られている、言わば「老舗」とも呼んだほうがしっくり来る・・・そういうイメージを持っている人も少なくありません。
そして、エルフの「臭作」の次に出した久しぶりの新作「リフレインブルー」は、エルフ版ビジュアルノベルと言うべき内容でした。
「ビジュアルノベル」というシステムに関しては、18禁ゲームでも「痕」「To Heart」などのリーフ物や「ONE 〜輝く季節へ〜」といった「横綱」を始めとして秀作、佳作、愚作など玉石混交の状況になっています。それだけにユーザーの目も厳しくなるのですが、「リフレインブルー」はそれに応えるだけの力があったのでしょうか?
私なりの感想を書く前に、これだけははっきりかいておいた方がいいでしょう。
「リフレインブルー」は、最後までクリアして初めてちゃんとした感想が出せる作品だという事です。
というのも、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、全てのシナリオがそれぞれ、最後になって初めて見る事の出来るトゥルーシナリオで関連を持つようになっています。そして、全てのシナリオに共通する一本の「軸」・・・その存在もトゥルーシナリオで重要な位置づけになっています。
ですから、それまでのシナリオを見ただけで結論を出すのは、「木を見て森を見ず」なんです。
確かにこういう手法を好まない人もいるのはわかりますが、そこはそれ。「こういうシナリオの組み方もある」というだけの事ですし、好みの問題でもあるのでここでは特に問題にはしません。
そして、全部のシナリオをクリアした後の感想は・・・「いい物を見たなぁ」
例えるなら、大人の為の青春小説、というのが近いでしょうね。
シナリオも全部が「・・・その後、二人はいつまでも仲のいい恋人でいました」という終わり方ではありません。長い人生の中での一瞬のすれ違いで終わる話もあったりと、これだけのバリエーションをうまくまとめたなと思う事しきり。特に「こういうアプローチの方法もあったのだなー」と感心したシナリオもありました。
こういう訳で、「恋愛小説」というよりは「青春小説」に近いんです。そして、Hシーンもかなり必然性を持って描かれています。
確かに「To Heart」などに比べると「地味」というか、派手さに欠ける部分はありますが、個人的には「派手さ」がないからこそ、全部のシナリオ、特にトゥルーシナリオを見た後に心に「クル」物がより深く思えました。
恐らく多くの人にとっては「リフレインブルー」は「名作」にはならないでしょうが−−それでも、私はこのゲームに出会えてよかったと思います。
また、このゲームでは最初に攻略出来るキャラが限定されていて、特定のキャラのシナリオをクリアするにつれて他のシナリオにも入れるようになっているなど、始めのうちはとっつきにくいかもしれないけど慣れるとかなり簡単になってきます。
ところでシステムに関しては、主になっている部分は既に「痕」「To Heart」の時点でほぼ完成されている訳ですが、「リフレインブルー」では新しい試みも入れてあります。
その1つは「メッセージスキップ」。
え?今までのゲームにもあるよ、というのは早計です。実は「リフレインブルー」では、今までにもあった「前に読んだメッセージは飛ばす」などの他に、「ページ単位で表示する」というのが加わっているんです。実はこれ、結構欲しかった機能なんですよ。どこもまだやってないってのも意外ですが。
もう1つは、「朗読モード」。
実は「リフレインブルー」では、主人公・女の子たち・その他の男性キャラの声のそれぞれを選択してインストールする事が出来ます。そして、声を入れた環境で「朗読」してくれるんです。
つまり選択肢が出るまで自動的に話を進めながら朗読してくれるんですね。
私は耳が聞こえないので楽しめないけど、評判を聞いたところでは結構良く出来た感じになっているようですね。効果音とのバランスも良いとの事です。
何はともあれ、「リフレインブルー」での試みは「何だ、それぐらい誰でも考えるじゃないか」と言われそう(実際言っている人もいるけど)ですが、それこそ「コロンブスの卵」ですね。実際にアイデアを形にした者が偉いに決まってます。そして、「誰でも考えつくけど、誰もやらなかった」事を実際に形にした事は立派だと思います。
とりあえず、私は「買って良かった」と思ってます。個人的には99年に遊んだゲームではベスト1。
まぁ、最後の最後で選択を間違えたらバッドエンド直行なのは厳しいだろうけど、セーブ/ロードがいつでも出来るんだからそれぐらい問題ないでしょう。「ONE」よりは素直だし。
しかしクリアして「買ってよかった」と思ったの、「YU-NO」以来だわ・・・
追加:「新しい試み」と書いた要素は、実際には既に他のソフトハウスが実現しているとのことです。私が知らなかっただけでした。ただ、そっちの方の「朗読モード」はお世辞にもいい出来とは言い難い物だったそうですが(汗)